賢者side:手紙(1)
「よう!賢者殿。なんだか元気がねぇな?」
「ああ、おはようございます、親方殿」
私はミーナが戻るのを待つため、許可を得て魔王城に滞在している。
そして毎日のように魔道具工房に通い詰めている。
ミーナが海王の屋敷に行ってから数日。あれから何の音沙汰もない。
「ミーナのことが心配なのはわかるけどよ、実験で怪我でもしようものならそれこそミーナが心配するからしっかり集中してくれよ?」
「わかっております」
私はうなずいた。
その日の実験を終え、親方殿と夕食を終えてから雑談していると、魔王殿の侍女から声をかけられた。
「賢者様にこちらが届いております」
そう言って手渡されたのは、見覚えのある淡いピンク色の封筒。
ミーナと一緒に王都の商業街に出かけた時に購入したものだ。
「ありがとうございます!」
私が封筒を受け取ると、親方殿が立ち上がった。
「さて、雑談はこのくらいにしておくか。では賢者殿、また明日な」
「おやすみなさい、親方殿」
手をひらひらさせて去っていく親方殿。おそらく私に気を使ってくれたのだろう。
魔王城内であてがわれている客室に戻り、急いで封を切る。
封筒と同じ色の便箋には、かわいらしいながらも丁寧な文字が並んでいた。
『賢者様へ
お元気ですか?研究の方は進んでいますか?
考えてみれば、いつも一緒にいたから手紙を書く機会もなかったので、なんだか不思議な感じがしますね。
さて、私のことについてご報告しますね。
海王様のお屋敷に到着して3日間は体内の魔素が抜けるのを待つため特に何もせず、お屋敷の中を案内してもらったり、海王様とお茶したり、図書室の本を借りて読んだりしていました。
3日目の夜に加護を授けていただきましたが、そこから2日ほど眠りっぱなしだったそうです。目が覚めてからも、しばらくは頭痛とめまいで起き上がれませんでしたが、海王様がおっしゃるには成功したとのことでした。
今はもう起き上がれるようになりましたが、まだ体調が不安定な時もあるので、念のため車椅子で屋敷の中を移動しています。こうして机に向かってお手紙を書く許可も下りましたが、まだ長時間はダメだそうで、今日はここまでにしておこうと思います。魔王様にもお手紙を書くつもりでしたが、もう時間切れなので、どうか賢者様からよろしくお伝えください。
またお手紙を書きますね。
ミーナより』
体調はまだ不安定なようだが、とにかく無事でよかった。
考えてみればミーナの言うとおり、こうして手紙をやりとりすることなど今までなかった。
こちらから送れないのは残念なところではあるが、次の便りが届くのが待ちどおしかった。
魔王殿にも手紙を見せると、
「ミーナらしい手紙だな。まずは無事で何よりだ」
と微笑んでいた。
次回は4/19(月)に投稿予定です。




