確認
「魔王殿、確認したいことがあります。魔素以外に加護の付与による利点と欠点というのはあるのでしょうか?」
魔王様に問いかける賢者様。
「利点としては、軽いものであれば聖女の代役になれるかもしれぬ。ただ、それなりに教わる必要はあるだろうがな」
聖女様に習うことになるのかな?
「欠点としては、身体の中を変えることになるので一時的な不調が起こる。その対応のため、加護を付与した後も様子見のため海王の近くにいた方がよいので、しばらくは向こうの屋敷に滞在することになるな」
「しばらく、とは?」
「早くて1週間、かかっても1ヶ月くらいだろうとのことだ。ああ、それから海王の屋敷へ行けるのはミーナのみだ」
「それは、なぜなのでしょうか?」
賢者様の声に少し苛立ちが混じっている気がする。私と一緒に行くつもりでいたのだろうか?
「海王の屋敷で働く者は人間でも魔族でもない、海の民と呼ばれる者たちだ」
「海の民?」
私は魔界にいた頃に海の民の存在を聞いたことがあったけど、賢者様は初耳だったらしい。
「人間とはほとんど接点を持たぬゆえ、あまり知られてはおらぬだろうが海の中で暮らす者達だ。外見は人間とほぼ同じだが言語が特殊でな。言語の加護を持つミーナなら問題ないが、賢者殿では会話もできぬ。彼らの言語を知らぬ者からすると、口笛のようにしか聞こえないらしい」
「ですが、彼らと話せなくても、ミーナに付き添うくらいはできるのでは?」
食い下がる賢者様に、魔王様が少し困ったような表情になる。
「そなたの気持ちはわからぬでもない。だが、海王は屋敷で働く者達をあまり刺激したくないと考えている。海の民は過去の歴史から人間を恐れている。ミーナのような子供であれば大丈夫だろう、ということらしい」
海の民の歴史までは知らないけれど、きっと何か怖い目にあったのだろう。
「そして海王の屋敷は常に移動するので、こちらから転移の魔法で飛ばすことができず、海王とともに移動するしか方法はない。また、通信の魔道具も使えぬ。向こうから手紙くらいは飛ばせるだろうがな」
しばらく賢者様と離れ離れになる、ということなのだろう。
「そのあたりも含め、よく考えてから決めるがよい。その気になったら連絡を寄越せばいつでも海王に取り次ごう」
この日の話し合いはここで終わった。
魔王城から賢者様のお屋敷に戻ってきて、2人で改めて話し合う。
「ミーナはどうしたい?」
「私は加護を受けたいです」
だって、そうすれば賢者様がもっとたくさん魔道具工房へ行けるようになって、研究も進むはず。
「…そうか。ただ、私としては気になる点もある。ゆえに結論を出すのは国王陛下と聖女に相談してからでもよいだろうか?」
「はい、それでかまいません」
国王陛下は私の血縁者だし、癒しの加護という点では聖女様も関わってくるのだろう。
数日後。
王宮へ出かけていた賢者様が帰ってきた。
「事情は説明してきた。陛下は一時的にでも身体に変調をきたすと聞いて反対していたが、最終的にはミーナの判断に任せるとのことだった。聖女は癒しの加護について学ぶ必要があれば、いつでも協力すると言っていた」
「ありがとうございます」
賢者様に頭を下げる。
「ミーナ、本当にいいんだな?」
「はい!」
賢者様はなぜか小さくため息をついていた。
「では魔王殿に連絡してくれるか」
魔王様と連絡を取り、海王様に話を通してもらって今後の予定も決まった。
1ヶ月近く不在となるわけだが、さすがにお屋敷の使用人さん達に「人間界ではないところへ行く」などと言うわけにもいかない。なので「勇者パーティに保護される前にお世話になった方を訪ねる」という言い訳を賢者様が考えてくださった。
旅に出るふりをして賢者様と2人きりで馬車で出発し、王都からある程度離れたところで魔王様に連絡して転移の魔法で魔王城へ。
魔王城では海王様がすでに待っていらっしゃった。
以前、夜の浜辺でお会いした時は実体ではなかったので、直接お会いするのはこれが初めてだ。
「ミーナのこと、よろしくお願いいたします」
賢者様から海王様へ頭を下げる。
「わかった。俺に任せておけ。魔王から説明があったと思うが、我が屋敷へは転移の魔法も通信の魔道具も使えない。だが、魔王城へ手紙を送ることくらいは出来る」
「私、賢者様にお手紙を書きますね!」
「ああ、楽しみにしている。そして早く無事に帰ってくることを祈っている」
そう言って頭をなでてくれた。
そして私と海王様の姿は魔王城から消えた。
次回は4/17(土)に投稿予定です。




