解析
王宮での授業がない日は、賢者様のお屋敷で資料の仕分けをすることになった。
賢者様の執務室にはいつの間にか私専用の机と椅子が運び込まれていて、そこが作業場所ということらしい。
資料の山を研究に使えそうなものと使えないもの、そして判断がつかないものに分けていくのだが、実は使えないものの方がとてもおもしろいことに気がついた。
どうやら過去の賢者様はメモ魔だったようで、その内容は多岐にわたる。魔道具工房の親方さんの似顔絵は特徴をよく捉えていて思わず笑ってしまった。
「ミーナ、何かおもしろいものでもあったか?」
笑った私に気付いた賢者様に無言で似顔絵を見せたら、賢者様も笑っていた。
そしてこれはまだ賢者様には話していないけれど、魔王様への恋心を綴ったものも少なくなかった。
これらを読んでいると、過去の賢者様が魔界に留まったのは研究のためだけではなかったのかもしれない。
ある時はほんの1行、ある時は長文で。さまざまな表現で魔王様への想いを綴っている。過去の賢者様は詩人でもあったのかもしれない。
そういえば、魔王城では過去の賢者様の話を魔道具工房以外で聞くことはあまりなかったように思う。
機会があったら魔王様にさりげなく聞いてみようかな。
私が資料解析を始めてから数日、そろそろ夕方になろうとする頃。
「ミーナ、明日は休みにして少し出かけようか」
賢者様は過去の賢者様の研究結果の冊子を手にしながら、何か難しい顔をして考え込んでいることが多かった。もしかしたら気分転換したいのかもしれない。
「はい。でも、どちらへ?」
「それは明日のお楽しみだな」
翌日は晴天。
メイドさんが用意してくれた水色のワンピースを着て、同じ色の帽子を持たされて馬車に乗り込む。
王宮の正門の前を通りすぎ、さらに進んでいく。
「あ、もしかして植物園の方へ向かってますか?」
流れる景色で気がついたので賢者様に聞いてみる。
「そうだが、目的地は植物園ではないな」
やがて馬車が停まる。
「ここは動物園…ですか?」
大きな門を見てつぶやく。
「そうだ。植物園と美術館は以前連れてきたが、動物園はまだだっただろう?実は先日の見合いの一件で、最近はミーナと一緒に出かけていないことに気付かされた。これからはもっと一緒に出かけよう」
言われてみれば賢者様のご実家である侯爵家の領地への旅には出かけたけど、王都内ってあまり行ってなかったかも。
「わかりました」
「実は執事やメイド頭からも怒られた」
ちょっとだけ情けない表情になる賢者様。
「え、そうなんですか?」
「ミーナは特に何も欲しがらないから、出かけることもあまりなかったのだが、それは何があるかすら知らないからだと言われた。それはもっともだと思ったので、帰りは少し商業街をぶらついて買い物もしてみようか」
「はい!楽しみです」
次回は4/9(金)に投稿予定です。




