要請
「ミーナ。少し話があるのだが、よいだろうか?」
王宮の授業がない日の朝食後、賢者様に呼ばれた。
「はい、大丈夫です」
そのまま賢者様の執務室へ連れて行かれ、ソファーに座ってしばらく待っていると、賢者様がノートや書類らしきものを抱えてやってきた。
テーブルの上に2つの書類の山ができる。
「以前、魔道具工房の親方殿からいただいてきた過去の賢者殿の資料なのだが、まぁ簡単に言うと人工魔石の研究だった」
「人工魔石、ですか?」
魔王城にいた頃、よく魔道具工房に入り浸っていたので魔石について教わったことがある。
魔石は魔界でしか採掘されない。魔界では空気のようにどこにでも存在する魔力を吸収したり、魔力を持つ者が流し込むことで半永久的に使える。
人間界でも使えないわけではないけれど、魔力を放出し終えると魔石はただの石になる。だから魔道具は人間界では使えないのだ、と。
「おそらく過去の賢者殿はミーナと同じことを考えていたのだと思う」
「私、ですか?」
うなずく賢者様。
「魔王城を訪問した際にさまざまな魔道具を紹介してくれたのは、私に魔道具のことを知ってほしかったのだろう?」
そう。そのために魔王様にお願いして許可も得た。便利な物がたくさんあることを知ってほしかった。これが人間界にもあったらいいいのにと思うものがいくつもあったから。
「はい、そうなんです」
「過去の賢者殿も、魔界にある便利な魔道具を人間界でも使えるようにならないか?と、考えたのがきっかけだったようだ」
過去の賢者様も私も、人間界と魔界の両方を知っている。だから同じようなことを考えたのだろう。
「私もミーナを通じて魔界の魔道具の一端を知った。そして人工魔石の手がかりとなりうる資料も手に入れた。それが人々の役に立つものであるならば挑戦してみたい。今はそう考えている」
賢者様は自分のためではなく人々のために動き始めているのだ。
「まずはミーナの言語の加護を使って資料の解析をお願いしたい。そして実際に魔道具を知るミーナの助言が欲しい。場合によっては魔界の親方殿からも情報収集したいと考えている」
賢者様が姿勢を正して真っ直ぐに私を見る。
「そしてミーナ。君にはこの研究において私の正式なパートナーとなってほしい。どうだろうか?」
考えるまでもない。
「私でよければ全力で協力させていただきます!」
次回は4/5(月)に投稿予定です。




