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謝罪

 翌日、私は授業のため王宮へ行っていたけれど、賢者様は午後から伯爵家へ出向いて見合いは正式に破談となった。


 帰宅してから賢者様から話を聞かされた。

「伯爵殿から『息子が不快な思いをさせてしまい、大変申し訳なかったと伝えて欲しい』とのことだった。後日改めてミーナに謝罪の品を送るとも言っておられた」

「え?謝罪の品なんて別にいいのに」

 見下すような態度は気になったけど、そういう人だったんだと思えばたいしたことはない。もう関わることもないだろうし。

「王太子殿下からの情報によると、どうやら伯爵殿は午前中に国王陛下に呼び出されたらしい。そこで何を話したかまでは知らないが、おそらくミーナの出自も聞かされたのだろう。口止めされているのか何も言わなかったが、私と話している時もかなり緊張しておられるようだったしな」

 ただの平民の娘だと思っていたのに、実は国王陛下の姪だったと聞いたらそれは驚くだろう。


「あと、これはまだ正式には発表されていないんだが、あいつは王都から一番遠い駐屯地に配属されることが決まった」

 勇者様が口を挟む。

「最も厳しく猛者揃いといわれているところでさ、それをまとめ上げてる隊長も平民からのたたき上げだ。少なくとも3年は戻って来られないだろうから、そこで性根を叩き直されることになるだろうね」

 王都の華やかな貴族文化ともしばらくはお別れということなのだろう。



 数日後、伯爵家からお詫びの品とお手紙が届いた。

 私の瞳と同じ紫色の宝石を使った髪飾りとブローチ。シンプルながらかわいらしいデザインで、添えられた手紙によると選んだのは騎士様ご自身のとこと。

「伯爵領では良質な宝石が産出し、その加工技術やデザインにも定評がある。これはなかなかよい品だな」

 賢者様がそう言っていた。

 騎士様からのお詫びの手紙には、最初はただ本当に私をかわいいと思ってくださったこと、だけどいつしか私を利用できないかという考えに変わってしまったことが綴られていた。そして陰ながら私の今後の幸福を願っているという言葉で締めくくられていた。

 もう私達が関わることはないだろうけれど、騎士様の今後のご活躍と幸せをひそかに祈った。



 お詫びの品が届いた翌日の朝。

「あ、これはちょっとマズいかも」

 喉が痛くて声が出しづらい。朝の身支度のためやってきたメイドさんにもすぐに気づかれ、メイド頭さんも駆けつける。

「ミーナ様、さては約束を破りましたね?」

 枕元にあった本に気づいたメイド頭さんの追及に、すぐに白旗をあげる。

「ご、ごめんなさい」

「本をお読みになるのはよいのですが、そのために夜更かししてはいけないと申し上げましたよね?」

 そう。借りた本が面白すぎてつい夜更かしをしてしまっていたのだ。

「これからは寝る前に本をお預かりしましょうか?」

「ごめんなさい!これからは気をつけますから」


 ため息をつくメイド頭さん。

「まぁ、その本をお貸しした私にも責任がございますからね。今回は許すといたしましょう。さて、登城する勇者様にミーナ様が本日の授業をお休みすることを伝えていただかないとですね」

「あ、あの、ちょっと喉が痛いだけで元気ですから」

「いけません!」

 メイド頭さんの大きな声に驚く。

「王宮には国王陛下をはじめとして王族の方々がおられ、またたくさんの方々が働いております。その方々にミーナ様の風邪が感染したら大変なことになってしまいます、きちんと治るまではお休みしていただきますからね」

 確かにそのとおりだ。迷惑をかけてはいけない。

「はい、わかりました」

 私はベッドに戻らされた。

次回は3/24(水)に投稿予定です。

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<完結> 魔王さんちの勇者メイド
魔王と記憶をなくした勇者の少女の物語

勇者は獲物を逃さない【連載版】
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