顔合わせ
賢者様はさっそく国王陛下に書簡を送り、さっそく面談の約束まで取り付けていた。
そして面談があった日の夜。
「今日、ミーナの見合いの件で王宮で陛下とお会いしてきたんだが、ミーナさえよければ一度くらい会ってみるとよいとおっしゃっていた」
意外とあっさり許可が下りたらしい。
「先方の伯爵家に関してもすでに調べておられていて、特に問題はないだろうとのことだった。ただし、もしも互いに思い合う仲になったとしても18歳までは仮婚約とせよ、とのことだ。どうやらこの条件は相手が誰であれ変わらないらしい」
陛下は陛下なりに何かお考えなのだろう。
「そのあたりも含めて私から先方に返事を出しておくが、本当にいいんだな?」
「はい。まずはお会いして話してみないことにはどんな方かもわかりませんし、せっかく申し込んでいただいたのに、特に理由もなく会わずにお断りするのもなんだか申し訳ないですから」
賢者様が小さくため息をつく。
「まぁ何事も経験だな。ただ、何か困ったことや判断に迷うことがあったら、1人で抱え込まずに私や勇者などまわりの者に相談すること。もし男性に話しづらいことだったら、うちの女性使用人たちや聖女でもいい」
「わかりました」
深くうなずいた。
数日後、騎士様から申し出を受けてくれたことについての感謝の言葉と、賢者様のお屋敷を訪問したいとのお手紙が届き、連絡いただいた日時でよいとの返信を賢者様が出してくれた。
そして騎士様がお休みの日、事前に連絡があった時刻に賢者様のお屋敷を訪ねてきてくださった。挨拶の後、淡いピンクのバラがメインの花束を受け取る。
「私なりにミーナさんの印象から選んでみました」
よくわからないけど、私ってこんな印象なのかな?
応接室で向かい合って座る。部屋の隅には私専属のメイドさんが控えている。今日は賢者様は外出して不在だけれど、もてなしの指示はしてくださっていた。
「仕事で1度お会いしただけなのに、こうして会う機会を設けてくださって本当にありがとうございます」
騎士様が頭を下げる。
「こちらこそありがとうございます。ただ、私は辺境の地で育った平民です。マナー違反や適切でない言動がありましたら、どうか遠慮せずに注意していただければと思います。指摘されないと誤りということすらわかりませんから」
うなずく騎士様。
「わかりました。それから次は一緒に食事に出かけたいと思うのですが、食べられないものや苦手なものはありますか?」
「いいえ、特にありません」
「それはよかった。おすすめの店なので、楽しみにしていてくださいね」
次に会う日を決め、少し雑談をして騎士様は帰っていった。
夕方、賢者様が外出から戻ってきた。
「ミーナ、彼はどうだった?」
「えっと、今日はご挨拶だけだったようで、あまり長い時間はおられませんでした。次はお食事に連れて行ってくださるそうです」
「そうか」
賢者様の視線がサロンの片隅に飾られた花に移る。
「今朝はその花はなかったな。彼が持ってきたものだろうか?」
「はい、私の印象から選んだとおっしゃっていましたが」
なにやら難しそうな表情になる賢者様。
「どうかしましたか?」
「いや、私はミーナに花を贈ったことがなかったことに気付いて愕然としているだけだ。先を越されてしまうとは不覚だ」
花を贈られるような機会なんて、そうそうないと思うんだけど。
「でも、ほら、花どころか私の衣食住はすべて賢者様が下さったものじゃありませんか」
「それとこれとは別だ。今度は私がミーナに花を贈るから待っていてほしい」
次回は3/12(金)に投稿予定です。




