参加
騎士団の建物を出て屋外の訓練場に出る。
「ミーナさん、こちらへどうぞ」
こちらに集まるたくさんの視線を気にしつつも、案内役の騎士様に連れられて片隅のベンチに腰掛ける。
「これから剣技の勝ち抜き戦が行われます。定期的に行っているもので、1対1で対戦相手はくじ引きで決め、勝ち残った者でまたくじ引きをしていく感じですね。準決勝まで出られれば賞金も出ますし、結果は評価にも影響します」
「そうなんですか」
どうやら王宮内での移動中に時々見かけていたのは勝ち抜き戦だったようだ。
「ここにいるのは私も含めて入団して日が浅い者たちばかりで、正式配属前の騎士見習いといったところなのです。評価によっては配属先も変わってくると言われています」
そうか、みんな大変なんだなぁ~と思う。
しばらく様子を見ていると、くじ引きで対戦相手と順序が決まったようだったが、一番端にいた騎士様の1人が手を挙げた。
「すみません!私の対戦相手がいないのですが?」
勇者様が彼の方を見た。
「ああ、そうか。今日は怪我で1人抜けてたんだったな」
隣に座っている手に包帯を巻いた案内役の騎士様のことだろう。勇者様がベンチに座る私達を見た。
「おい、ミーナ。ちょっと来いよ」
なぜだかわからないけど呼ばれたので勇者様のそばへ行ってみる。
「ミーナ、飛び入り参加ってことでこいつと対戦してみな」
「は?」
私はもちろん、騎士の皆さんも驚いている。
「女性に剣を向けるなどできません!」
対戦相手となる騎士様が勇者様に抗議する。
「この国にはいないようだが、外国では女性騎士もそれなりにいるぞ。そしてまだ日は浅いが、ミーナには俺が直接剣を教えていて、無理はないと判断した。ミーナ、防具をつけてすぐ戻ってこい」
さっきまで座っていたベンチを見ると、案内役の騎士様がすでに防具を持ってきてくれていた。どうやら単なる思いつきで決めたことではなさそうだ。
案内役の騎士様が防具の装着を手伝ってくれた。
「ありがとうございました」
案内役の騎士様に頭を下げる。
「どうかお気をつけて」
勇者様のところへ走って戻る。
すでにいくつかの試合が行われていて、私は第1回戦の一番最後であるらしい。
「よし、ミーナの番だ。何事も経験だから行ってこい」
勇者様に背中を押され、対戦相手の前へ進み出る。
「「よろしくお願いします」」
これまで見ていた対戦の様子を真似て挨拶する。
相手は私より少し年上と思われる騎士様で、身長は私より高く、細身ではあるけれど鍛えている感じはわかる。
考えてみたら誰かと争うなんてこれが初めてだ。もちろん人前で剣を振るうことも初めて。
他の騎士の方々にも見られているのでとても緊張するけれど、これが皆さんにとっては当たり前のことなのだろう。
せめて無様なところだけは見せないようにしないと。
「始め!」
審判役の合図で試合が始まったが、どちらもすぐには動かない。きっと向こうもやりにくいんだろうなと思いつつ、こちらから攻め込むことにした。負けてもともとなのだから。
「くっ!」
そこから一気に打ち合いになったけれど、普段から勇者様の速さになれていたせいか、何とか対処できている。もっとも私の稽古の時の勇者様は、だいぶ力を抜いていることくらい知っているけれど。
隙を見極め、すばやく剣を振りぬいて相手の木剣を弾き飛ばした。
「勝負ありっ!」
審判役が赤い小旗を上げて私の勝利を告げる。一瞬の沈黙の後、歓声が上がった。
「ありがとうございました。女性相手ではやりづらかったですよね。大変申し訳ありませんでした」
対戦相手に頭を下げる。
「いや、こちらこそいい経験をさせてもらった。あの速さは素晴らしかった。さすがは勇者様仕込みだな」
握手をしてベンチに戻った。
次回は3/6(土)に投稿予定です。




