工房
魔王城の長い廊下を歩いて別棟に渡る。
そして賢者様に一番見せたかった魔道具の工房に到着する。
「親方さん!皆さん!お久しぶりです」
「おう、ミーナじゃねぇか!」
「久しぶりだな。元気だったか?」
みんなが手を止めてやってくる。この工房で働いているのは全員ドワーフである。
「はい!元気にやってます」
「賢者様、こちらは魔王城の魔道具工房の親方さんです。私が小さい頃からお世話になってるんです」
賢者様が親方さんに頭を下げる。
「親方さん、こちらは人間界でお世話になっている賢者様です。人間界の術具の研究や開発もされているんですよ。魔王様にも許可をいただいているので、魔道具の開発や修理を見せてもらってもいいでしょうか?」
「おう、かまわねぇよ。他ならぬミーナの頼みだしな」
親方さんは手を差し出して賢者様と握手した。
「人間界の賢者に会うのは久しぶりだな。だいぶ前のことなんでアンタの何代前かわからねぇが、人間のくせに魔王城に居候していた賢者がいたんだよ」
「そうなのですか?」
賢者様が驚いている。
「おう、あとでそいつが残した資料も出してやるよ」
親方さんは笑顔で答えた。
親方さんは工房内を一通り案内し、ちょうど修理していた照明器具の内部構造を説明してくれた。私には専門的なことはわからないけれど、賢者様があれこれ質問して親方さんが答えている。
そして一区切りついたところでお茶を出してもらった。
「おもしろい味のお茶ですね」
賢者様が不思議そうな顔をしながら飲んでいる。
「薬草茶の一種だな。ここは細かい作業が多いので、緊張をほぐすのと目の疲れに効くヤツだ。ちょっと甘みがあるせいか、ミーナは小さい頃からこれが好きだったよなぁ」
「はい!久しぶりに飲みましたけど、やっぱりおいしいです」
懐かしい味に思わず笑顔になってしまう。
「そういやミーナは昔から暇さえあればここに入り浸ってたなぁ」
親方さんが笑顔で言う。
「そうですね。ここはおもしろいものがいっぱいあったし、いつも誰かがかまってくれたし、お茶とお菓子を出してもらえましたしね」
「おいおい、最後のが本音だな?」
親方さんだけでなく弟子の皆さんも笑い出す。仕事の合間にここで一休みするのは、私にとって本当に楽しいことだったのだ。
「そういえば仕事の合間にミーナのおもちゃを作ったっけなぁ。動く人形とかガラス玉をころがす迷路の箱とか」
そういえばいろいろ作ってもらったっけ。
「あのガラス玉の迷路、毎日変わるから難しかったんですよね」
「わはは!そうだったな。毎日ムキになってやってたよなぁ。魔王様に御子ができたことだし、久しぶりにそっちもやってみるかな。若手のいい勉強にもなるかもしれん」
休憩が終了すると、賢者様と親方さんは専門的なことを話し始め、私は話についていけなくなった。でも2人とも楽しそうだからいいか。
やがて魔王様からの使いが夕食の支度が整ったことを伝えにくると、親方さんは紐で綴じた紙の束を賢者様に手渡した。
「これがさっき言ってた昔の人間の賢者の残した資料だ。正直ここじゃ役に立たねぇ内容だが、人間界なら使えるかもしれん。原本は魔王城の保管庫にあって、こいつは写しだから好きに使ってくれてかまわねぇ。何かわからねぇことがあったらいつでも聞いてくれ」
「ありがとうございます。今日は大変勉強になりました」
賢者様が深々と頭が下げた。
「いいってことよ。またミーナと遊びに来てくれよな!」
次回は2/20(土)に投稿予定です。




