案内
賢者様が運んできた木箱を並べる。
「こちらの箱が海王様へ贈るもの、そしてこちらは魔王様へお贈りするお酒でございます。感謝の印ということで、どうぞお受け取りください」
魔王様がうなずく。
国王陛下からは海王様へ贈るお酒を預かったが、賢者様は魔王様へ渡す分を用意してくださった。私の意見を取り入れてくれて、魔王様が好きな赤ワインが多めになっているらしい。
「うむ、確かに。海王は少々遠方へ行っておってな、今日は来れないとのことじゃったので、後日渡しておこう。ああ、そなたらによろしく伝えておいてくれと申しておったぞ」
「こちらこそ本当に感謝しております、とお伝えいただければと思います」
そう言った賢者様とともに私は頭を下げた。
「さて、今日は約束どおり夕食を共にするのであろう?まだ時間があるゆえ、ミーナは賢者殿に城の中を案内してやるとよい」
そう、今回は贈り物を届けるだけでなく、魔王様と夕食をとることになっているのだ。
「はい!魔王様。では賢者様、まいりましょうか」
「ああ、よろしく頼む」
実は賢者様に魔王城の中を見てもらうことは、私から魔王様にお願いしていたことなのである。入ってはいけない部屋や見せてはいけないものは、あらかじめ説明を受けている。
「人間界の王宮も広いですけど、このお城もとっても広くて全部はまわりきれないので、今日は私が働いていたところをお見せしますね。ちょっと地味で申し訳ないのですが」
「いや、城の舞台裏はなかなか見られないから貴重だろうし、私としても興味がある」
賢者様が同意してくれたので少し安心する。
まずは厨房へ向かう。ここではいろんな魔族が働いている。
この時間帯は夕食の支度で忙しいので、邪魔にならないように通ろうとしたのだが、みんなに声をかけられる。
「おう、ミーナ!久しぶりだな」
「元気そうじゃねぇか」
「あら、ちょっと背が高くなったかしらねぇ?」
「今夜は魔王様と夕食なんだろ?みんな張り切ってるから期待しとけよ!」
本当はみんなとゆっくり話したいけれど、お仕事の邪魔になってしまうし、あまり時間もないので大きな声で叫ぶ。
「皆さん、ありがとうございます!私、元気にやってます。今日はお世話になっている方に魔王城を見ていただきたいので、ちょっとだけお邪魔しますね」
あちこちから返事の声が聞こえてきた。
「賢者様、お待たせしました。厨房をご案内しますね」
「ミーナはみんなにかわいがられていたんだな」
厨房を見回した賢者様がつぶやく。
「そうですね、小さい頃から皆さんに面倒を見てもらってましたから」
そんな話をしながら厨房の奥の方へ進む。
「こちらが食材の食品貯蔵庫ですね。右側の扉の方は冷やして、左側は凍らせて保存しています」
「凍らせて保存?」
「はい、どちらも氷の魔石を使っていて長期保存が可能となっています。あちらで炒め物をしているコンロは火の魔石を使っていて、火加減を簡単に調節できるようになっています。そしてこちらは水と火の魔石で必要な温度の水をいつでも出せます」
厨房にある他の魔道具も一通り説明し、みんなに挨拶してから廊下に出る。
「廊下の照明も魔石を使っています。誰かが通りかかると自動で点灯し、誰もいなくなってしばらくすると消えます」
「ほう、それは便利だな」
賢者様と歩きながら目に付いた魔道具を次々と紹介していく。
便利な魔道具のある魔界での生活に慣れていた私は、人間界では同じことをするにも時間と手間をかけなければならないことにとまどうことが多かった。
魔石は魔界にしか存在せず、魔素を自然吸収できないので人間界では寿命が短いらしい。
だから魔道具は人間界へは持ってはいけないけれど、便利なものがあることを少しでも賢者様に知ってもらえたらと思う。
次回は2/18(木)に投稿予定です。




