遊覧
「あれ、ここは…?」
目が覚めると宿の自分の部屋だった。
「ミーナ、大丈夫か?どこか痛いとか、気持ち悪さとかはないか?」
私が起きたことに気づいた賢者様がベッドに近寄ってくる。
「はい、なんだか身体がふわふわしていて、まだ眠気もありますけど、具合が悪いとかはないです。すみません、なんだか急に眠くなってしまって…どれくらい眠ってました?」
目をこすりながら上半身を起こす。
「あれからまだ1時間も経っていないな。おそらくあの海王の祝福とやらの影響なのだろう。まだ眠いようならこのまま寝てもいいが、その前に自分で着替えられるか?」
「はい、なんとか」
「そうか…何かあれば隣の部屋にいるから、いつでも呼ぶように」
「はい」
賢者様が部屋を出て行った後は眠さで何も考えられず、取り急ぎ就寝着に着替えてすぐにベッドに横になり、あっという間に眠りに落ちた。
翌朝はいつもと同じ時刻に目が覚めた。
もう眠さはないし、身体も普段より調子がいいくらいで、気持ちまですっきりしている気がする。
顔を洗って身支度を整えた頃、ノックの音がした。
「おはようございます!」
ドアを開けると賢者様がそこに立っていた。
「おはよう、ミーナ。その、大丈夫か?」
「はい!しっかり眠ったらもうすっかり元気です。ご心配をおかけしました」
ペコリを頭を下げてから賢者様を見上げると頭をなでられた。
「そうか、それはよかった。では朝食にしようか」
宿の食堂で朝食を取る。
他にも何組かお客さんがいるけれど、席が離れているので会話までは聞こえてこない。
「ミーナ、聞いてもいいか?」
「何でしょう?」
食後のお茶を飲んでいると賢者様に小声で問いかけられた。
「昨夜の海王というのはもしかして」
「ご想像の通り、魔王様の伴侶の方です。私もお会いするのは昨日が初めてでしたが、特徴はうかがっていましたので」
私も小声で答える。
「そうなのか」
「でもお二方が会っている場所は誰も知らないんですよね。昨夜はあまりに眠くて何も出来ませんでしたけど、今夜にでも魔王様にうかがってみようと思います」
「わかった。もしできれば私も同席させてほしいのだが」
何か聞きたいことがあるのだろう。
「たぶん大丈夫だと思いますよ」
宿を出て馬車で港のはずれの方に向かう。
「今日は船に乗って少し海に出てみようと思うが、大丈夫か?」
「え、本当ですか?!」
海に出られるなんて思ってもみなかった。
「父の知人が所有する船を頼んである。あまり遠くまでは行けないがな」
「それでも嬉しいです!」
船ではにこやかな日に焼けた男性が待っていた。
「ようこそ!どうぞ気をつけてお乗りください」
私達が乗り込むと船はすぐに動き出した。
「船ってこんなに揺れるんですね」
なんだかちょっと心配になってきた。
「今日は天気もよくて波も穏やかだから大丈夫だとは思うが、もし気持ち悪くなったりしたらすぐに言うように」
隣に座る賢者様が肩を抱き寄せてくれた。
船は港を出て進んでいく。海の色は場所によって違っていたりして、見ていて飽きない。
昨日遊んだ砂浜や泊まった宿が遠くに見える。海からだとこんな感じに見えるんだなぁ。
やがて海に突き出た崖と変わった形の岩が並ぶあたりに差し掛かる。
「岩をいろんなものに見立てて名前がついていたりするんですよ」
船を操る男性がそれぞれ説明してくれる。全然そうは見えないものもあるけれど、きっと昔の人にはそう見えたのだろう。
「ではそろそろ港へ戻りますね」
幸い、揺れで気持ち悪くなったりすることなく無事に港まで戻ってくることが出来た。
「船を降りたのに、なんだかまだ揺れているような気がします」
そう言ったら賢者様が私の肩を抱いて歩いてくれた。
次回は2/4(木)に投稿予定です。




