港町
砂浜から港町へ移動し、昼食は屋台で軽く食べる。考えてみたら、こういう気楽な食事は久しぶりかもしれない。
食べ終えてから港町のお店をあちこちまわる。外国から入ってきた商品がたくさんあって、見ているだけで楽しい。何に使うのかさっぱりわからないものもあるので、賢者様に聞いてみると即座に答えてくれる。
侯爵家の方々と王都の賢者様のお屋敷で働く皆さんへのおみやげを賢者様と一緒に選んだ後、アクセサリーなども扱う雑貨店に入る。
きれいな模様が彫られたブローチを手にしていると、背後にいた賢者様から声をかけられた。
「それは貝に彫刻を施したものだな。気に入ったのか?」
「はい、綺麗だなって思って見てました」
「そうか。店主、こちらを包んでくれ」
手にしていたブローチが賢者様からお店の人に手渡される。
「え、あの?」
「これは私からプレゼントさせてほしい。他に欲しいものがあれば」
「いえ、これで十分です!」
これ以上いただくのは申し訳なので、あわてて賢者様の言葉をさえきった。
「あと、人に渡したいおみやげは自分で支払いたいです」
「それはかまわないが、誰に?」
「聖女様と勇者様…国王陛下と王太子殿下・・・それから魔王様なんですが、私なんかからのおみやげなんて皆様のご迷惑になっちゃいそうだから、やめておいた方がいいでしょうか?」
お店の人に聞かれないよう小声で話す。
「いや、そんなことはないだろう。きっとみんなに喜んでもらえると思う。私は向かいの書店に行っているから、ゆっくり選ぶといい」
あらかじめもらっていた多すぎるくらいのお小遣いでおみやげを選んだ。誰かに贈るものを選ぶのはとっても悩んでしまうけれど、楽しいものであることも知った。
雑貨店での買い物を終えて、賢者様がいる向かいの書店へ移動する。賢者様はすでに何冊か本を抱えていた。
「ミーナも欲しい本があれば選ぶといい。ここは外国から輸入されたものも多いので、王都で手に入りづらいものもいろいろある」
「はい」
再び賢者様から離れて本を物色する。できれば料理やお菓子作りの本が欲しいかな。
しばらく書店内をうろつき、3冊ほど選んで賢者様のところへ戻る。
「ミーナ、本当にその本でいいのか?」
賢者様が少し眉をひそめて聞いてくる。何かまずいことをしてしまっただろうか?
「えっと、料理とお菓子作りの本なんですが、どれも材料が手に入りやすいものだったので使えそうだと思ったんですけど、やっぱり3冊は多かったですか?」
「いや、そうではなくてだな…その本はすべて輸入物で言語が違うのに読めるのか?と聞いているのだが」
「あ、そうなんですか。普通に読めていたので全然気にしてませんでした」
本当に意識していなかったので気付いていなかった。言われてみれば確かに違う。
「そうか・・・いや、ちゃんと読めるのならば購入しよう。もしかして魔王殿が君に何かしたのかもしれないな。機会があれば聞いてみてほしい」
「わかりました」
港町の散策の後、最初に行った砂浜方面へ戻る。
砂浜からも見えていた立派な建物が本日の宿だそうで、馬車の御者さんが部屋に荷物を運んでおいてくれていた。賢者様は隣の部屋だそうだ。
夕食は宿の食堂で海の幸を堪能する。
「どれも初めて食べる料理ばかりですが、とってもおいしいです!」
「そうか、お気に召したようで何よりだ」
賢者様が微笑む。そばにいた給仕の男性も笑顔だった。
次回は1/31(日)に投稿予定です。




