遊び
翌日の朝も侯爵様ご一家と朝食を取る。にぎやかなひと時だ。
昨日は遠慮がちだったご長男の坊ちゃまも、今朝は元気よく挨拶してくれた。
昨夜の夕食時に聞いた話によると、次男は騎士団に在籍しているそうで、現在は地方勤務でなかなか帰って来られないらしい。
朝食後、部屋で少し休んでいると侯爵様の奥様がやってきた。
「今日は私がうちの領地を案内するわね」
奥様と侍女さん、私とメイドさんの4人で馬車で外出する。ご長男の奥様は2人目を妊娠中だそうで、今は少し体調が安定しないそうで、お屋敷でゆっくり過ごすらしい。
古くから街道の分岐点として栄え、各地のさまざまな物が集まり売買されているとのことで、商業エリアではいくつかお店も寄ってみた。今まで見たことのない食材や香辛料も結構あった。
奥様が予約して昼食は予約していたカフェで軽めの昼食を取り、デザートには名物のりんごのケーキをいただいた。名物というだけあってとてもおいしかった。焼きたてが出てきたけれど、冷めてもおいしいらしい。
「このケーキ、作り方を知りたいかも」
ポロッとつぶやいたら、
「うちの厨房でもこれが得意な人がいるから聞いてみるわね」
奥様が笑顔でそう言ってくれた。
午後はお屋敷へ戻り、5歳の坊ちゃまと遊んだ。
今まで子供と接する機会がなかったので最初はとまどったけれど、向こうから玩具や絵本を持ってきては一緒に遊ぶことをせがまれる。
「ミーナ、この絵本読んで!」
隣に座り、絵本を読み聞かせる。
絵本の後は一緒におやつを食べて、お庭の散歩もした。
手をつないでお庭を歩く。何をいっているのかよくわからないことも時々あるけれど、いろんなことを話してくれる。大人ばかりのお屋敷で、少し年が近い私がいるのが楽しいのかもしれない。
その日の夕食もにぎやかで、坊ちゃまが今日の出来事を元気に話していた。
「今日はミーナと一緒に寝る!」
そう駄々をこねられた時はどうしていいかわからずにちょっと困ってしまったが、ご長男とその奥様がなんとか上手く説得してくれた。
「ミーナ、また遊んでね」
すでに少し眠たそうな坊ちゃまはメイドさんに抱かれて部屋へと戻っていった。
「ずいぶん懐かれたわねぇ。同年代の男の子のお友達は何人かいるのだけれど、女の子とは接する機会がなかったから楽しかったのかもね」
侯爵様の奥様が笑顔で言う。
「正直、最初はどう接していいかわからなかったんですけど、なんだか仲良くなれたみたいです」
夜、寝る前に少しだけ通信の魔道具で魔王様と話す。
「ミーナは賢者殿がいなくても平気かの?」
「大丈夫ですけど、なんだかちょっと寂しい気もします」
侯爵様のお屋敷はにぎやかで楽しいけれど、今みたいに1人になるとなんだかちょっと寂しい気もしている。
「そうか。まぁ、何か困ったことがあったらいつでも知らせるように。それでは引き続き旅を楽しんでおくれ。おやすみ、ミーナ」
「はい、おやすみなさい」
次回は1/27(水)に投稿予定です。




