建国祭
月が変わり、もうすぐ行われる建国祭と王太子殿下の婚約者発表の準備が本格的に始まった。
そのため王宮での授業も一時中断し、聖女様や私も準備にあたることになった。
そもそも私は聖女様の世話係という役どころで王宮に出入りしているのだが、婚約発表までは本当に世話係を務めることになった。魔界では魔王様の世話係もしていたから、正直こちらの方が慣れている。
聖女様の様子を常に観察し、ある程度先読みして行動する。
「聖女様、こちらにおかけになってお飲み物などはいかがですか?」
少しでも空き時間ができれば、椅子に座って休んでもらう。
「ミーナがいるだけで心強いのだけれど、私が何か言う前に準備できてたりするからホント助かるわ」
聖女様がそう言ってくれて、なんだか嬉しい。
そして建国祭当日。
今日も聖女様の世話係として動き、表舞台に出ることはない。聖女様を送り出すまでが私の仕事。
呼ばれて光あふれるステージへと歩んでいく聖女様の力強い後ろ姿を見送った。
「ああ、素敵だなぁ」
婚約発表時の歓声を舞台裏で聞いていたが、充実感を感じた。
正式に婚約者として発表されると、王宮には王太子の婚約者の部屋が用意され、専属の侍女がつくことになる。聖女様と一緒の授業は引き続き行われるけれど、もう馬車で一緒に通うことはない。
少しだけ寂しさを感じながら、勇者様とともに馬車で賢者様のお屋敷へと戻った。
建国祭は3日間だが、王宮での外交はその後も1週間近く続く。聖女様も外交に加わるが、侍女や女官の方々がいるのでもう私の出番はない。
そして王太子の婚約者となった聖女様にはさまざまな手続きも待っている。そのため授業も建国祭後の2週間はお休みとなり、私は賢者様のお屋敷で過ごしている。
建国祭の準備段階からずっと王宮に通い詰めだったので、久しぶりにゆったりとした時間を過ごしていたのだが、本を読んでいるとノックの音がした。
「ミーナ様、旦那様がお呼びでございます」
メイドさんについて行くと、玄関には賢者様と見覚えのない女性が立っていた。
「ミーナ、こちらにおいで」
賢者様に手招きされて階段を降りて行く。
「ミーナ、紹介しよう。私の母だ。建国祭の式典のため領地から王都へ来ている。ミーナの素性は手紙で伝えてあるが、もちろん口外しないようにお願いしてある」
そうか、賢者様にも家族がいるんだ。そんな当たり前のことに初めて気づく。
「あ、あの、初めまし…」
言い終える前に賢者様のお母様に抱きしめられた。
「初めましてじゃないのよ。私、生まれて間もないウィルヘルミナを抱っこしているわ」
「…え?」
「私、貴女のお父様と幼馴染だったのよ。姉と弟みたいな関係でね。うちの息子から貴女のことをを聞いて本当にびっくりしたの」
そう言って女性が少しだけ離れ、私の顔を見つめる。
「貴女のお母様は王家の出というのもあってお友達が少なくて、結婚なさってから親しくさせていただいていたの。お顔と瞳の色はお母様によく似ているけれど、黒髪はお父様譲りね。わたしもミーナとと呼んでいいかしら?」
その微笑みに釣られて私も微笑む。
「はい、もちろんです」
「ミーナちゃん、よろしくね!」
次回は1/15(金)に投稿予定です。




