ダンスの練習
今日はダンスの授業。
足運びだけならいつも授業を行う部屋で少しずつ学んでいたが、今日からは少し広い部屋で行うらしい。
そのためメイド服から王宮で作っていただいたワンピースに着替える。練習用のドレスは現在製作中だそうだが、まずは動きになれるためにワンピースで行うらしい。
聖女様とともにまずはステップのおさらいをしていると、突然扉が開いた。
入ってきたのは、なんと国王陛下と王太子殿下のお二方。
「2人ともがんばってる~?」
「少し時間が空いたので様子を見に来た」
お二方が歩み寄ってくる。
「ダンスの練習にはパートナーが必要だろう?今日は少々時間があるので付き合ってやろうと思うてな」
「は?」
陛下の言葉に私はしばしあっけに取られていたけれど、どうやらダンスの講師はすでに知っていたようで、にこやかに応対する。
そして聖女様の相手は王太子殿下が、私の相手は恐れ多くも国王陛下が務めてくださることになった。
まずは曲なしで講師の手拍子だけで動く。
聖女様と王太子殿下は背丈のバランスも取れていて、傍で見ていても素敵だなぁ~と思うのだが、背が高くてガッチリとした国王陛下と小柄な私とでは本当に大人と子供といった感じだ。
「なかなか筋がいいようだな」
「あ、ありがとうございます」
褒められてちょっと照れる。
「そなたの母のダンス練習にもこうやって付き合ったものだ」
国王陛下はふとつぶやく。
「そうなんですか?」
「ああ。普段はおとなしいんだが、自分が納得いくまでとことんやらないと気が済まない奴でな、居残り練習にもさんざん付き合わされた」
苦笑しながらそう答えてくださった。
しばらくはステップを踏んでいたが、ふと思い立って聞いてみる。
「もし私が居残りを希望したら、お付き合いしてくださいますか?」
「ああ、喜んで…と言いたいところだが、今日は残念ながらこの後の予定が詰まっていて時間がない。次は必ず付き合おう」
帰宅して賢者様に挨拶をすると、いつものように抱きしめられる。
「ただいま戻りました!」
「おかえり、ミーナ」
頭をなでられる。
「今日はどうだった?」
「ダンスの練習をしました。今日は国王陛下が練習相手になってくださったんですよ」
「は?」
今日の出来事をそのまま答えたら、賢者様が変な顔をした。
「国王陛下と王太子殿下がちょうど時間が空いたからって様子を見に来て、練習に付き合ってくださったんです。とても上手だって褒めていただいたんですよ」
「いやいや、あの馬鹿はともかく、陛下がそんなに暇なわけがないだろう。おそらくミーナのためにわざわざ時間を作ったのだろうな」
あ、そうだったんだ。今度お礼を言った方がいいのかな?
夜、眠る前に通信の魔道具で魔王様に呼びかけてみる。今は魔道具を鏡に近づけていないので音声だけだ。
「おや、どうした?ミーナ」
「なんとなくお話したくて。今、大丈夫でしょうか?」
「ちょうど暇だったのでかまわないぞ」
こちらでの暮らしについてあれこれ話した後、このところずっと抱えていた疑問を聞いてみる。
「魔王様、1つ伺ってもいいですか?」
「ああ、何だ?」
「家族って何なのでしょうか?こちらに来てからずっと考えているんですけど、よくわからないんです」
しばらくの沈黙。
「それは私にもようわからぬ。決まった形はないゆえにな。だが、私は夫と我が子だけでなく、魔王城にいる者すべてが家族と思うておる。ミーナ、もちろんそなたのことも私の家族と思うておるぞ」
ふと賢者様のお屋敷に来た時に聞いた言葉を思い出す。
「賢者様と同じようなことをおっしゃるのですね」
通信具から魔王様の笑い声が聞こえてきた。
「ほぉ、そうであったか。ミーナは自分自身の家族の形を探してみるとよかろう。そしてわかったのなら、ぜひ私にも教えておくれ」
「はい、魔王様。今宵はありがとうございました。それではおやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ。我が愛し子ミーナよ」
通信の魔道具の光が消えた。
次回は1/13(水)に投稿予定です。




