夕食会
翌日からさっそく授業が始まった。
聖女様の乗る馬車が賢者様のお屋敷に寄ってくれて、私が乗り込んで王宮へ向かう。
賢者様はお仕事があるので同行せず、しばしのお別れとなる。
最初の授業は今の人間界の世界情勢について。聖女様はすでにご存知なのだろうが、何も知らない私に付き合ってくれている。
年配の男性講師が私にもわかるように丁寧に説明してくれる。
人間界には大小たくさんの国がある。仲のいい国もあれば、仲の悪い国もある。そして仲が悪いながらも妥協点を見つけて協定などを結び、今は国同士の戦は起きていない。
「今は何も起きてはいません。ですが、些細なきっかけでバランスが崩れることもないとは言い切れません。そのためにも外交はとても大切なものとなり、諸外国の習慣などにも気を使う必要があります」
その外交を担うのが王家の役目でもあるのだろう。
授業の合間の休憩にお茶や軽食が出る。
実がこれ自体がすでにマナーの勉強になっていたりする。聖女様はいろいろ指摘されているようだけれど、私は今のところ特に注意を受けてはいない。
「ウィルヘルミナ様はほぼ完璧ですね」
女性の講師にそう言われた。
たまに魔王様のお茶のお供をしていて、いろいろ教わっていたのがよかったみたい。
まだまだ学ばなければならないことはたくさんだろうけど、自分の知識が増えるのはなんだか嬉しく思える。
今日の授業を終えて賢者様のお屋敷に戻る。
「お帰り、ミーナ」
賢者様が待っていて抱きしめてくれる。これは家族として暮らすルールの1つ。だけど、まだなんだか慣れない。
「そうだ、ミーナ。明後日は勇者パーティのメンバーが集まってこの家で夕食会をするから、ミーナも参加してほしい」
「あの、本当に私が加わってもいいんですか?」
少し不安なので聞いてみる。
「もちろん。当然あの2人も望んでいるしな。王太子殿下の婚約が発表されれば、聖女は今までのように自由には動けなくなる。だからその前に…ということだな。もしよければミーナも料理を作るか?遠征時に作った料理を再現してやれば喜ぶんじゃないかと思うんだが」
えっ、お料理を作っていいの?!
「ぜひお願いします!」
「材料とかも必要だろうから、後で厨房で相談してくるといい」
「はいっ!」
いても立っていられず、厨房へ向かって走り出す。
「おいこら、廊下を走るな!」
厨房で働く方々にいろいろ相談していくくちに皆さんとも親しくなり、レシピの情報交換や料理のコツを学ぶことができて楽しかった。
そして夕食会の日。
「ん~っ!これが食べたかったのよねぇ」
「うん、ミーナの料理はやっぱりうまいな!」
久しぶりに作った料理は勇者様と聖女様に喜んでもらえた。
明日は全員登城の予定はないので、ゆったりと過ごしている。
楽しい夕食のひと時の後。
「ミーナ、俺らはこれからちょっと飲むけど付き合うか~?」
上機嫌の勇者様が問いかけてくる。
「あの、私、お酒って飲んだことないんですけど」
この国で飲酒や喫煙の年齢制限は定められていないが、一般的に目安は15歳といわれている。
「ちょっとなめてみるくらいでもいいわよぉ~」
笑顔の聖女様も誘う。
「それじゃ、少しだけ」
サロンに移動して小さなグラスに入った果実酒を渡される。
「「「 乾杯! 」」」
それぞれ手にした酒を口にする。
「あ、これ甘いんですね」
なめるように飲んでみる。
「それ、美味しいでしょ?」
「はい」
私は果実酒を中心にしばらくみんなに付き合っていたが、いつもの就寝時刻になったらメイドさんが呼びに来たので部屋に下がった。
お酒って甘いのはいいけど、苦味のあるのはちょっといらないかな。
次回は1/11(月)に投稿予定です。




