踏み出す少女
王宮からの帰りの馬車の中。
「今日は突然の話ですまなかったな」
「い、いえ」
目線を合わせてくれないミーナ。
「先に君に想いを告げた方がいいかとも考えたが、やはり正々堂々といこうと思った」
「正々堂々?」
「先に君に言ってしまえば、囲い込んでいると思われそうだったしな。君の伯父である国王陛下と親代わりであった魔王殿の前で宣言したかった。君が欲しいと」
驚きでミーナの目が見開かれる。
「これから君に認めてもらえるよう努力はするが、君の意思を尊重し、決して君が嫌がるようなことはしないと誓おう。やりたいことや行きたいところも危険さえなければ制約はしない。何か望みはあるか?」
無言で首を横に振るミーナ。
「そうだな。まずは落ち着いてからゆっくりと考えればいい」
しばらく沈黙が続いたが、ふと思い出したことがあった。
「王宮での教育だが、おそらくミーナ1人ではないと思うから、あまり緊張しなくてもよさそうだな」
「え?」
小首をかしげるミーナ。
「あの馬鹿…王太子殿下の結婚相手はまだ公表こそされていないが、実はずっと前から決まっている。相思相愛で国王陛下も認めていて、近いうちに正式発表になるだろう。その女性も本格的な教育に入るはずだから、一緒に学ばせようと考えているのだろうな」
「そうなんですか」
少しだけミーナの表情が緩んだ。
帰宅してミーナが着替えている間に使用人達を集め、仮婚約のことを話す。
対応は今までどおりとするが、ミーナ専用の部屋を用意するよう頼んだ。これからはもう客人ではなくなるのだから、いつまでも客室というわけにもいくまい。
「おまかせください!我々がミーナ様のために可愛らしい部屋をご用意させていただきます」
特に女性陣は気合が入っているようだった。
夕食時に改めてミーナと話す。
「これから不慣れなことも学ばなければならないことも多いだろうが、不安なことや納得のいかないことなどあったら遠慮せずに私や執事、メイド頭などに話してほしい。今日から君はこの家の一員なのだから」
「はい」
真っ直ぐ私を見て答えるミーナ。
「それから我が家では今までどおり君のことをミーナと呼ぶが、それでいいだろうか?」
「はい、その方が嬉しいです」
そう言ってミーナは微笑んだ。
【お知らせ】
今後の展開を見直したいので次回更新は年明けの予定です。
大変申し訳ありませんが再開まで今しばらくお待ちください。




