表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/93

決意する少女

 自分の今後を大人の話し合いで決められそうになことに納得のいかないミーナは、立ち上がって談話室から飛び出していこうとした。すぐに止めようとしたが、私より先に王太子殿下がミーナの腕を捕まえていた。

「ミーナちゃん、ちょっと落ち着いて。君の気持ちもわからないではないけど、みんな君のことを心配してるんだよ」

「でも!」

「うん、話が急すぎたよね。ごめんね」

 王太子殿下がそっとミーナの頭をなでる。

「…正直、両親の事を聞かされても、私の知らないどこか遠い人の話としか思えないんです」

「うん、それはそうだよね」

「私は今までどおり魔界で暮らしたいです」


「それはできない」

 私はミーナに静かに告げる。

「魔王本人から聞いた話だ。普通の人間が足を踏み入れることすら困難な魔界でミーナが暮らすことが出来たのは、魔王が命が尽きかけていた幼いミーナに自らの血を与えたからだそうだ。だが最近はその効力が薄れてきて、ひそかに新たに血を与えても改善しないとのことだった。我々が最初に魔王城を訪れるより前、身体の調子が悪くなることがあったのではないか?」

「…確かにありました。心配させたくなくて隠してたつもりだったけど、魔王様も気づいていたんですね」

私はうつむくミーナの正面にひざまずいて目線を合わせる。

「私とて君が望むなら魔王の元へ行かせてやりたかった。だが君が苦しむことを魔王も望むまい。魔界で暮らすことは出来なくなっても、会うことはできると魔王は言った。我々のためにも魔王のためにも、そして何より君自身のためにもどうか人間界に留まってほしい」

「…わかり…ました」

ミーナが涙をこぼしたのでそっと抱きしめると、私にしがみついて声も出さずに泣いた。



 結局ミーナの処遇は保留となり、後日改めて話し合うことにしていったん我が家へ連れ帰ることになった。

 泣き疲れてしまったミーナを聖女が癒しの力で眠らせ、勇者が抱きかかえる。

 国王陛下は眠るミーナを見てつぶやく。

「私は怖いものなどほとんどないが、女の涙だけはいまだに対処する方法がわからぬな。だが、今後はこの娘の気持ちを尊重して話を進めることとしよう」



 帰宅してミーナを客室に寝かせる。聖女と勇者は帰宅した。

 使用人達を集めて判明したミーナの身元を告げる。ただし対応は今までと何も変わらないようにすること、そして警備の強化を頼んだ。せめてこの家では自然に過ごして欲しいからだ。

 そろそろ日が暮れかける頃、ミーナがようやく起きたようで私の書斎を訪ねてきた。

「今日は迷惑をかけてしまってごめんなさい」

 頭を下げるミーナ。

「いや、我々も君の意志を尊重すると言ったのに話を急ぎすぎた。魔界で暮らせないことも先に話しておくべきだった。こちらこそ本当にすまなかった」

 ソファーに座るようミーナに促す。

「1つ聞きたいのだが、魔王城で魔王から手渡された小箱は何だったんだ?」

「私専用の通信の魔道具でした」

「では魔王と連絡を取って、近いうちにミーナの今後について国王陛下も交えて話がしたいと伝えてもらえないだろうか?おそらくその通信用の魔道具があれば可能なのではないかと思う」

「わかりました。連絡してみます」


 ここで話を切り替える。

「それからミーナに話しておきたいことがある」

「なんでしょう?」

「国王陛下は今後のことはミーナの意志に任せると言った。だが国王陛下の姪という立場は、王家とつながりを持ちたい者にとっては非常に魅力的な存在となる。それはわかるか?」

「はい」

 うなずくミーナ。

「まだ表沙汰にはなっていないが、今後はそのあたりの対策も考えていかねばならないと思う。そのことを頭の片隅に置いていてほしい」

「わかりました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<完結> 魔王さんちの勇者メイド
魔王と記憶をなくした勇者の少女の物語

勇者は獲物を逃さない【連載版】
完結しました

「名前のない物語」シリーズ
人名地名が出てこないあっさり風味の短編集
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ