自分を知る少女
2度目の遠征から帰還した翌日。
我々勇者パーティとミーナは国王陛下への報告のため王宮に来ていた。
魔王の回答に陛下は納得したようで、次の遠征は行われないこととなった。陛下もこうなることはわかっていたのかもしれない。
謁見の間から控え室に戻ると、王太子殿下がやってきた。
「ミーナちゃん、僕が君の身元調査を担当したんだ。これから君の親族のところまで案内するね。勇者パーティのみんなもついてきていいよ」
殿下について王宮の奥の方へと進み、やがて王族のプライベートエリアに入ると、歴代王族の肖像画が並ぶ廊下にさしかかった。
そして王太子殿下は1枚の絵の前で立ち止まった。
「これが君のお母様だよ。ほら、よく似てるでしょ?ミーナちゃんに初めて会った時、誰かに似てると思ったのは、よくよく考えたらこの絵だったんだよねぇ」
髪の色こそ明るい栗色だが、紫の瞳でよく似た顔立ち若い女性の絵があった。
「本当によく似てるのね」
聖女がつぶやく。
「これが…お母様?」
ミーナはじっと絵を見つめている。
「それは私の妹でもある」
廊下の奥の方からやってくる人影から声がした。
「国王陛下?!」
「ほとんど知られていないことだが、紫の瞳は王族の女性にしか現れない。だからそなたが王家の血を引くことはわかっていたが、身元の確認に手間取った。こちらでようやく見つけた出生時の記録と賢者からの報告にあった痣が一致した。そなたの本当の名はウィルヘルミナ。我が妹の忘れ形見だ」
呆然とするミーナの前に国王陛下が膝をついて目線を合わせる。
「そなたと両親の乗った馬車が邪教の集団に襲われ、妹とその夫は命を落とし、そなたは行方不明になった。まさかこうして生きて会えるとは思いもしなかったぞ」
そう言って陛下はミーナの頭をなでた。
全員で王族のプライベートエリアの談話室に移る。
「妹とその夫は仲のよい夫婦だった。そなたの誕生をそれはそれは喜び、心から慈しんで育てておったぞ」
国王陛下はミーナの両親の馴れ初めや人柄などいろいろと語った。ミーナは何も聞き返すことなく、ただじっと黙って聞いていた。
一区切りついたところで国王陛下が話を切り出した。
「さて、今後をどうするかだが、妹の嫁ぎ先は跡を継ぐものがなくなったことにより消滅しておる。家名を復活させることは可能だが、ウィルヘルミナ嬢1人でというわけにもいかぬだろう。まずは王家で引き取りたいと考えておる」
私は小さく手を上げた。
「陛下、発言よろしいでしょうか?」
「うむ」
「まだ人間界に不慣れな彼女に、いきなり王宮暮らしというのは荷が重いのではないかと。一時は我が家で暮らしておりましたし、親代わりであった魔王とのこともありますので、彼女のことは私が引き受けたいと考えております」
陛下が少し考える。
「…確かにいきなり王宮というのはどうかとは考えていた。では、まずはそなたの元で暮らし、王宮に通わせるということでどうかの?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ミーナが立ち上がって声を上げる。
「私のことなのに、私の意思は無視なんですか?!」
「そなたはまだ庇護されるべき年齢だ。私はそなたの血縁者でもあるので、そなたを守るために」
「でも!」
ミーナは陛下の言葉をさえぎる。
「人間界に血の繋がっている人達がいることはわかりました。でも、魔王様は血の繋がりなんてなくても私を慈しんで育ててくれました。そして魔界の人達も、どこへ行っても生きていけるようにといろんなことを教えてくれました。私、別に贅沢な暮らしも守られるだけの暮らしもいりません。普通に働いて、普通に暮らしたいだけなんです。だから、どうか魔界に帰らせてください!」




