少女side:対面
勇者パーティが謁見の間にいた頃。
訪れた男が控え室をノックし、返事が聞こえてから入室する。
「ミーナちゃん、久しぶり~!」
あわてて立ち上がり、お辞儀をするミーナ。
「ご無沙汰しております、王太子殿下」
「いやいや、君と僕との仲なんだから、そんな改まった挨拶なんていらないよ。でね、今日はちょっとお願いがあるんだ」
頭を上げたミーナがきょとんとした表情になる。そんな親しい仲になった記憶はないのだが。
「君に会いたいって人がいるからついてきてほしいんだ」
「でも、ここから離れるのなら勇者パーティの皆さんにお知らせしないとですよね?」
困惑するミーナ。
「メモを置いていくから大丈夫だよ。それに申し訳ないけど僕も逆らえない人だから、君が拒んでも強制的に連れて行くことになっちゃうんだよね」
「…わかりました」
発言から察したミーナが答える。
「君が頭のいい子で助かるよ」
王太子殿下はミーナの頭をなでてから控え室を出た。
ミーナが連れて行かれたのは立派な執務室らしき部屋だった。
だが、そこには誰もいない。
「もうすぐ戻ってくるから、そこのソファーに座って待っててよ」
言われるままソファーに腰掛けるミーナ。
やがてノックもなく豪華な装束を纏った男性が入ってきた。ミーナが立ち上がって挨拶しようとするが、手で制された。
男はミーナの向かい側にドカッと座り、王太子殿下はテーブル横の椅子に座る。
「面倒な挨拶は省くが、私がこの国の国王だ。そなたのことは聞いておる。今日会いたいと思った理由は2つ。まず1つはそなたの瞳だ。紫の瞳というのは極めてまれと言われておってな。謁見の間では距離があり
すぎてよくわからぬので、このような形で会うこととした。すまぬがよく見せてもらってもよいか?」
「はぁ」
立ち上がった陛下はミーナの顔をのぞき込む。やがて納得したのか席に戻る陛下。
「本当に澄んだ紫なのだな。昔にも見たことがあるが、やはり美しい色だ」
「あ、ありがとうございます」
瞳の色を褒められることなどなかったのでとまどうミーナ。
「もう1つ、そなたに会いたい思った理由は、そなたが魔王に育てられた人間の娘と聞いたからだ。そなたから見て魔王とはどんな存在か?」
ほんのわずかの沈黙の後、ミーナが真っ直ぐ国王陛下を見据える。
「心から敬愛するお方です」
「迷いのない真っ直ぐな眼だな。だが、そなたは人間だ。本来なら魔界に住むべきではないだろう。人間界に留まるのなら、私がよいように取り計らうが?」
「いいえ、私は魔王様のところへ戻りたいのです」
目をそらさないミーナ。
「国王たる私が命じたとしてもか?」
「貴方はこの国の国王かもしれませんが、私の王ではありませんから」
陛下はとっさに傍らの剣を抜き、ミーナの首筋をめがけるも寸止めする。
「無礼な!この場で首を刎ねられたいかっ?!」
「どうぞご自由に。この首くらいいくらでも差し上げますが、私の心は変えることは出来ませんから」
目をそらさないミーナを見て剣を収める陛下。
「まったく、本当に肝の据わった娘だな。驚かせてすまなかった」
再び座る陛下。
「そなたにも説明しておこうか。先ほど謁見の間で勇者パーティに魔王討伐を命じておるが、もし魔王が我々人間にとって真に悪の存在であれば討てと命じた。真実の追究はここにいる息子にも別途命じておる。そなたも彼らとともに真実を見つけるがよい。そしてその後を決めよ」
国王陛下が目で合図すると王太子殿下が立ち上がった。
「おつかれさま、ミーナちゃん。これで話はおしまい。さぁ、みんなのところへ戻ろっか」
執務室を出る際、ミーナは無言で国王陛下にペコリと頭を下げた。
「ミーナちゃん?!」
扉が閉まったとたん、ミーナはその場にへなへなと座りこんでしまった。
「うちの親父殿が迷惑かけてごめんねぇ」
足に力が入らず立ち上がれないミーナは、王太子殿下に抱きかかえられて控え室へと戻った。




