本を読む少女
『魔王は近いうちに魔王城へ戻る』
大神殿の神託により、勇者パーティは再始動することとなった。
私は前回の遠征報告の提出が終わってすぐに次の遠征準備のため走りまわっていたが、聖女は頻繁にミーナを街へと連れ出し、いろんな店をまわったようだった。
「ミーナは何を着せても似合うからホント楽しいわぁ~」
勇者は時々ふらっとお菓子や珍しい果物などを持ってやってきては、ミーナや使用人達と話をしていく。
「お前はいったい我が家へ何をしに来ているのだ?」
我が物顔で居座っている勇者に私が尋ねると、
「ミーナが気になるってのもあるんだけどさ、この家はなんとなく居心地がいいんだよなぁ。まぁ、俺のことは気にしないでおいてよ」
あっけらかんと答えた。
出かけない日や夜間のミーナは、たいてい本を読んでいる。
魔王城にも本はあったようだが、物語というものはあまり読んだことがなかったらしく、ジャンルを問わず読みふけっているようだ。
そういえばメイド頭に恋愛小説を貸したことについて聞いたところ、
「女の子ならばああいうものが好きかと思いまして。私個人の持っている物でお勧めを随時お貸ししております」
と答えた。思いがけずメイド頭の趣味を知ることとなった。
そしてメイド頭は笑顔で話を続ける。
「それにしても、旦那様がこれほど特定の女性に興味を持たれるのは初めてでございますね」
「いや、保護した責任があるからな」
「それにしては、いつもミーナ様の方を見てらっしゃいますけど。ご自分でお気づきではないのですか?」
意味ありげな発言に少しムッとする。
「相手は子供だぞ?」
「今はまだ幼さを残していますが、もう少ししたら間違いなくお綺麗になりますよ。中身もずいぶんとしっかりなさった方のようですから、誰かに取られる前にしっかりと捕まえておかれた方がよろしいかと」
思わず顔をしかめる。
「君は恋愛小説を読みすぎではないのか?」
「ふふふ、そうかもしれませんねぇ。さて、私は仕事に戻りますわね」
そう言い残して去っていくメイド頭。
そんなに私はミーナのことを見ていただろうか?と考えてみる。
ああ、そうか。見ていたかもしれない。
普段は感情をあまり表に出さないミーナだが、本を読んでいる時はおもしろいくらいに表情が変わるのだ。あれが本来のミーナであるのかもしれない。
いつも表情豊かだったらもっと可愛らしいのに、もったいないことだ。




