思い出す少女
※ 残酷な表現があります
しばらく何かを考えているようだったミーナが口を開く。
「あの、熱を出している時にうっすらと思い出したんですけど、もしかしたら夢と現実がごちゃまぜになっているかもしれないんです。それでもいいですか?」
「ああ、もちろんかまわない」
向かいに座る王太子殿下がうなずく。
私の横に座るミーナがぽつりぽつりと話し出す。
「その場所には私の他にも子供が何人かいました。暗くて寒い部屋に閉じ込められていて、いつもみんな泣いていました。時々、誰かが連れ出されます。傷だらけになって帰ってくるけど、二度と戻ってこない子もいました」
「私も何度か連れ出されて、顔が見えない頭巾をかぶった大人達に押さえつけられて、背中を何度もナイフで切られました。見えないからわからないけど、まるでナイフで絵や字を書いているようでした。『血と泣き叫ぶ声を捧げる儀式だ』と聞きました」
「あの髑髏の紋章は儀式の部屋に大きなものが飾られていました。でも、あれと同じものを魔王城で見たことは一度もありません」
「だんだんと子供が減っていき、私が最後の1人になりました。『まもなく他へ移るからだ』って言っていました。『これがお前の最後の儀式だから』と、いつもよりたくさん痛い思いをしていたら魔王様が突然やってきて、私を押さえつけていた大人達を一瞬で壁に叩きつけました」
「魔王様は『古い傷は消せなくてすまない』と言って、切られたところを治してくれました。『一緒に来るか?』と魔王様に聞かれたので、うなずいたら私を抱き上げてくれました」
「村を離れる直前に魔王様が何か唱えると、一瞬で村の建物すべてが崩れました。『どうして?』って聞いたら『勝手に魔王の名を使った仕返しだ』って言っていました」
「…私が村に関して覚えていることはこれくらいです」
無表情のままミーナが話し終える。我々は何も言わずにずっと聞いていた。
私はミーナの肩を抱き寄せる。小さく震えているのがわかる。
殿下はしばらく呆然としていたが、我に返ったようだった。立ち上がってミーナの前にひざまずき、そっと手を握る。
「つらいことを話させてごめんね。でも、これで真実に近付けそうだ。本当にありがとう。このお礼はいつか必ずするからね」
殿下が帰った後、ミーナはほとんど口を開かず、夕食もほとんど残した。
夜も更けて、メイド頭からミーナが自室に戻っても眠れずにいるようだとの報告があり、ミーナのいる客室に行くと、泣きながら無言で抱きつかれた。
先日暴れた時のような泣き喚きではなく、ずっとすすり泣いていた。ミーナが泣き疲れて眠りに落ちるまで何も言わずに抱きしめていた。
この小さなぬくもりを守りたい。そう思った。




