謝られる少女
数日後、すっかり熱も下がって元気になったミーナを書斎に呼び出す。
「王宮の控え室で会った男のことを覚えているか?」
「はい、なんとなくですが」
小さくうなずくミーナ。
「そいつが君に謝りたいと言っていて、近いうちにこの家に来ることになった」
きょとんとしているミーナ。
「あの、私が勝手に倒れてしまっただけなので、謝っていただくことはないと思うのですが」
「実は奴には君の身元調査を依頼していた。もしかしたら人間界に身内がいるかもしれないと思ったからだ。そして奴はその調査に関して君自身からも直接話を聞きたいと言っている。だが、君にとっては怖い記憶を掘り起こすことになるかもしれない。もし嫌ならば断ってくれてもいい」
しばらく考えるミーナ。そしてまっすぐこちらを見つめる。
「私でしたら大丈夫です。ただ、お役に立てるかどうかはわかりませんが」
「わかった。そのように伝えておこう」
翌日、奴はさっそくやってきた。
「ミーナちゃん、久しぶり~」
あいかわらず軽い感じの男にとまどうミーナ。
「こいつは不本意ながら私の幼馴染で、信じられないだろうがこの国の王太子だ」
「は?」
あっけにとられるミーナの前で王太子殿下がひざまずく。
「ミーナ嬢。此度のこと、本当に申し訳なかった。気が急いてしまい、何も説明しないままそなたにあの紋章を見せてしまった。私を許してくれるだろうか?」
「あの、どうかお立ちください!えっと、謝罪を受け入れます…でいいんですよね?」
ミーナがすがるような眼で私を見るのでうなずく。
「ミーナ嬢の寛大さに心より感謝する」
ミーナの手を取り、手の甲に口付けを落とした。
「それじゃ疲れるから王太子モードはここまで。普段どおりに戻るね~」
そう言いながら立ち上がる王太子殿下。まったく、最後まで王太子らしくしてくれればよいものを。
応接室のソファーへ移動する。
「改めてミーナちゃん、本当にごめんね~。僕に出来ることだったら何でもするから、いくらでも言ってよ。何か欲しいものとかある?」
「いえ、とんでもないです!私が勝手に倒れてしまったのですし」
首をぶんぶん横に振るミーナ。
「あ、それからお詫びとお見舞いを兼ねて王宮の菓子職人が作ったお菓子を持ってきたから、あとで食べてね」
「ありがとうございます。私は本当にそれだけで十分ですから」
「そう?でも、何か困ったこととかあったらいつでも言ってね。多少は力になれると思うから」
お茶を少し飲んでから殿下が話を切り出す。
「それでさ、つらいことを思い出させるようで本当に申し訳ないんだけど、ミーナちゃんが魔王に保護されたという拾われたという北の辺境の村について、何でもいいから覚えていることがあったら話して欲しいんだよね。頼まれて君の身元を調べ始めたけど、どうやら君だけの問題ではすまないようなんだ」
小首をかしげるミーナ。
「10年以上前に各地で子供が行方不明になる事件がいくつか起きていたことがわかった。その中には貴族の子供も含まれている。発生地域が離れていて時期もまちまちで、当時は情報の共有ができていなかったようだね。今は消えた子供達の特徴を問い合わせているが、もしかしたらその中に君の情報もあるのかもしれないんだ」




