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第十八話 と言って。女も買物上手とは言い切れなかったりする



 「ねえ!このトマトどう? 安かったの。6個298円! いつものスーパーだと、いつも通り4個298円だけど、今日は自転車で隣町に行って買ってきたのよ!」


 母さんはパワフルだ。

 仕事が忙しいのにチラシのチェックを欠かさない。

 安売りと見るやすっ飛んでいく。

 

 だから、こんなことを言っちゃいけないかもしれないけれど。

 いつものトマトより、おいしくない。水っぽい。古くなってる気もする。

 安くて高品質、ということが無いとは言わないけれど。

 値段が正直に物を言うこともあると思うんだよね。



 そして数日後。


 「あー!忘れてたー!傷んじゃってるし、もうだめだー!もったいないけど、しょうがない!」


 使い切れなかったトマトが2個、冷蔵庫から生ゴミの袋へとその位置を移した。



 その袋のそばに。

 赤毛のアンチ・断・捨離と、アヒルのキグルミsumlack(銭不足(サムラック))が。

 

 「6個買って2個無駄にしちゃったの?もう!だめね!それって4個を298円で買ったのと同じじゃない!」


 「だったら最初っから、ちょっとお高くてもおいしくて使いきれるのを買ったほうが良かったんじゃないかな」


 ……分かるけどさ、言いにくいんだよ。

 


 「自転車を漕ぐ労力、隣町まで行く時間。その経済的損失、千円の単位じゃない?」

 「電動自転車でしょ? バッテリーを充電する電気代もあるよね」


 ……言えないんだけどね?


 抵抗を繰り返したけれど。

 2人の追及は厳しかった。


 「もったいないと思わないの?食べ物だよ!?」

 ……日本人には効くんだよ、それ!


 「ママさん、必死で頑張ってるんだよ? 1円2円を気にしてるのに、トマト一個50円とか100円とか損して。それを教えてあげないなんて、あんまりじゃない?」 

 ……ああもう、母さんのことは言うなよ!



 妖怪たちに根負けして、母さんに伝えたら。

 

 「ユウタもしっかりしてきたわね。分かった、母さんもこれからは気をつける」


 分かってくれたようだ。

 俺も少しだけ、おとなになったのかもしれない。

 ほんの少し、誇らしかった。



 そして数日後。

 食卓に大量のトマトが溢れた。


 「傷んだらもったいないから、残さず食べなさい! ユウタも大きくなって、食べ盛りなんだから!」 


 分かってくれてない!

 話の内容も! 俺のプライドも!  


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