第十四話 三年殺し
朝、それは繁忙のひと時。
日本人のほぼほぼ誰しも、朝のせわしなさを実感しているのではなかろうか。
するとこれも「現代あるある」じゃないか?……と、思ったけれど。
特に妖怪が出てくることもなかった。
どうやら、はるか昔からの伝統らしい。
しかしともかく、朝は忙しい。
家族が代わる代わる利用する洗面所は、特に混雑する。
入口からして渋滞していた。
ドア脇の足元には、シャツやタオルで一杯の洗濯籠。
早朝の予約タイマーで洗濯されて、後は干されるのを待つばかり。
しょうがないことは分かっているけど、とにかく邪魔で仕方無い。
そんな狭いところを、父さんと入れ違おうとしたところ。
いた。
ピンクのスーツに身を包んだ、ショートヘアの妖怪が。
「ガハハハハ!気をつけろよ、少年!」
目を向けようとしたところで、変な声が出た。
「ぐえー」って。なんJじゃあるまいし。
そのまま、息が詰まってしゃがみ込む。
「だから言うたろうが!急いでるからってドアをいい加減に開け閉めするもんじゃない!男なら元気一杯、ドーンと開けて堂々と通り抜けんかい!」
前もって注意するなら、そこまで言ってくれよ。頼むから。
ドアを開け、ギリギリをすり抜けようとしたところ、すり抜けきれず。
ドアノブに背中を抉られたのである。
俺は背が低い。まだまだ伸びる予定だが、高一の現段階では165cmで。
ドアノブの高さって、ちょうど脾臓の位置なんだよ!
「ワシの名前は脇ノブ子。ドアノブに脇を抉られる、あの『あるある』を司る妖怪だ!」
本家に比べると、だいぶ「かわいらしさ」に優っていた。
絵心の無い俺、表現できないのが恨めしくもあり。
妖怪ってすげえなあ……と、どうでも良いことを考えもしたものであった。
「最近の住宅は良いのう!昔のドアノブは丸かったが、今のドアノブはレバー式。しっかりと脾臓を抉ることができるわい!」
なんちゅう物騒な。
「後ろからの『三年殺し』だけでなく、前から袖を捕らえることもできるしのう!ガハハハハ!」




