第十二話 女子の悩みは世界共通? 男子の好みは地域特有?
梅雨入り前のひと時。
クラスの女子が騒いでいた。
「薄着に……お肉が……ダイエット……」
そんなに太ってないだろうと思うんだけど。
「香里はいいよね~。二の腕キュッとしてて」
「弓道のおかげってことで」
「つうか、引き締まりすぎじゃね?」
「ゴリ言うなし。かおりだから」
「言ってねーし。あだ名、ゴリなんだ? とりあえず弓道部員グッジョブ」
ゴリこと佐藤香里、弓道部所属。中学からの経験者ゆえ、期待の新人らしい。
割と背も高いし、何より腕力が半端ない。4月の体力テスト、握力で周りをどん引きさせていた。
そのゴリの二の腕をつかんでいた小柄な女子が、やおら振り返る。
「ひどくね?ダイエットの話してるそばで早弁とか」
「朝練あったんだからしょうがないだろ?食わなきゃ筋肉つかないんだよ」
答えていたのは柔道部の男子、あだ名はジュリー。
柔道は階級制だけど、「体を絞って下の階級で出るとか、ウチはそういうレベルじゃないから。身体ができあがるまではしっかり食べて、無理のない階級を選びなさい」という方針だと聞いた。
「なんか腹立つなあ。男子も少しはスタイルとか気にしてよ。不公平じゃん」
そして女子の話題は、先生たちの「下っ腹」へと移っていった。
いろいろと容赦ないやり取りがくりひろげられている。
中年になると、みんな腹が出てくるのだろうか。
俺も……いや、さすがに腹が出てるってことはないけど、ガリガリなんだよね。
家に帰れば帰ったで、30cm級の妖怪たちもなにやら運動にいそしんでいた。
「体重が8グラム増えた~」とか、ワケわからんことを言いながら。
4、5人がかりでロデオマシーンに取り付いているが……乗れていない。
前後左右に振り回される、遊園地の絶叫マシーンといった趣。
なんだか楽しそうだ。
どんくさく見えたはずみ、案外粘る。ゆさゆさしてる。眼福である。
リモ子の脚……上気して桜色になってるなあ……。
生唾を飲み込んだところで、清楚なヤンキーに見咎められた。
「オヤジくせえ」
どう非難されようが構わぬ!さあ君も!
「何だ?期待してんのか?やらねーよ? ウチは毎日ウォーキングしてるから。日頃が大事なんだよ!」
ち○毛を配り歩くウォーキングかあ……
腕を組んで首をひねれば、はね飛ばされた小梅が飛んで来る。これぞ孔明の罠。
「小梅ちゃん、コツがあるんだよ」
聞き覚えあるその声に、大急ぎで振り向いた。
反り返った背、天を向く胸。
目は切なげにつむられ、開いたと思えば焦点が合っていない。
くいくいと動く腰が、時にびくんと跳ね上がる。
半開きの唇からは「んっう」「はん」と声が漏れ。
期待以上にもほどがある。
ソラさん、ちょっとその……いえ、もうワンセット、人間サイズでおねしゃす!
「ユウタ、アウトー」
判定尼さん、お仕事ご苦労様です。
……良いけどさ、なんでみんなして一斉に?
「オーウ!女子が夏の訪れを前にダイエットに励む、『あるある』デース!それは私の仕業ネ!」
ま~た胡散臭いヤツが……と、足元に目を落とせば。
アメリカ西部のカウガールスタイルに身を包んだ、バインバインのお姉さん。
向こうのプレイボ○イとか、日本のバイク雑誌で見かけるようなタイプ。
軽やかに跳躍するや、人間サイズに変貌してロデオマシーンを乗りこなす。
「わかるけど……現代妖怪?昔からじゃないの?」
「スリムがウケていーるのは、ツィッギー以降、たかがここ50年のこーと!だけど女子は流行に、ソーリー、訂正ネ、世界の潮流に敏感なのデース…………オウ!会話できるような運動強度じゃ全然ダーメ!美しいスタイルは適切な栄養と十分な運動から生まれマース!だからもっと強くするデース!」
リモ子が遠隔操作で強度を上げてやれば。
「オー!オーゥイエス! ンー、イッツカミン!」
飛び散る汗、水着からこぼれんばかり……いや、はちきれんばかりに揺れる胸。
見ようによってはかなり扇情的?って言えば良いのか?だけど全然興奮しない。
洋モノは好みが分かれるって聞いてたけど、分かるわー。
「全くです!男性の前で、色香も無ければ慎みも無い!これだから白……」
真野さん、それまでに!
「ユウタ、女子は自分のためにダイエットするんだからな?男……お前なんかのためじゃないんだから、勘違いすんなよ!」
うむ。
古典的だけど、このノリがいいや俺は。




