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神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。(reboot ver.)  作者: 宇宙 翔(そらかける)


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9/15

紅い瞳の少女

朝の柔らかな陽射しがカーテンの隙間から漏れて、

友梨奈の顔を優しく照らしている。

外は爽やかな秋晴れの日みたいだが、朝から頭がずっしり重い。

きっと昨日能力を使ったせいだ。


神通力ってどういう仕組みか全然わからないが、絶対これって健康に良くない気がする。

昨日も帰ってすぐ、気を失うように爆睡だった。

業務災害で補償して欲しいぐらいだが、逆に自分の業務になんて絶対したくないし、

そもそもどこのどんな組織から依頼されているのかも分からない。

直接的には従姉妹のあかねに誘導されているけれども、それ以前に二人に腕のビジョンを

見せている存在がいる。


頭が重いぐらいで碧が学校を休ませてくれるはずはなく、諦めてノロノロとベッドから

起き上がり、学校へ行く準備を始める友梨奈。


二限目終了のベルがスピーカーから流れる。

小さくため息を吐く友梨奈。

今日一日まだ先が長い。


「今日なんか元気無さそうだよね。大丈夫?」


中瀬麻由が隣の席から声をかけて来た。

基本無表情な友梨奈から外見で何かを読み取るのは難しい。


「……どうして?」


問いかけの意味がわからないように首を傾げる中瀬麻由。


「……わたし、昔から無表情とか、感情が無いとか言われてて……」


俯き加減でぼそぼそと話す友梨奈。


「ずっと隣にいるんだもん、家に遊びにも行ったし。表情に出てなくても

それぐらいわかるよ」


(そんなことまで分かるものなんだ……)


そもそも他人と深く関わったことが無かった友梨奈には未知の世界だった。


「昨日従姉妹に振り回されて疲れちゃって……」


詳細は絶対語れないが、あかねのことはちょっと人に愚痴りたかった。


「あーー、昨日校門のところで小学生の女の子見たよ。もしかすると

あれが木花さんの従姉妹?」

「……多分それ。ツインテールにしてるちっさいの。あかねって名前」

「じゃあ、間違いない。少し遠目からだったけど凄い可愛い感じした。

碧さんもそうだけど、木花家のDNAって、瞳が綺麗でキレかわだよね。

今度会いたいかも〜」


(……今のには、私も入っているんだろうか)


なぜか胸の奥が少しだけ熱くなる。

一瞬気分が高揚したものの、冷静に考えるとあかね×中瀬麻由は嫌な予感しかしない。


六限終了のベルが鳴り、後は終礼を残すのみとなって、友梨奈の長くて辛い一日が

ようやく終わろうとしていた。

今日はあかねがいても無視して早く家に帰って爆睡しなくては、と心に誓う。


「さようなら」


井上先生の挨拶に生徒が答えるのと同時にダッシュしようと身構えた友梨奈。


「あ、ちょっと木花さん、一緒に職員室まで来てくれる?」

「え゛?」


あまりに想定外の展開に固まっている友梨奈。

中瀬麻由が井上先生のところに近づき小声で話しかける。


「何かあったんですか?」

「あ、ううん、備品倉庫でね、ちょっと物がいくつか無くなったらしくて。

使用の届け漏れで盗難とかじゃないとは思うんだけど、念のため出入りしてた

生徒全員に何か見たり聞いたりしてないか話を聞かなきゃなの」

「だったら、わたしも行ってたので一緒に」

「それが、起こったらしい時期が中瀬さんが転校してくる前なのよ。

関係無い人は巻き込めないから」

「そうですか……」


井上先生に連れられて行く友梨奈の背中を心配そうに見つめる麻由。


(彼女を待っていた方が良かっただろうか?)

(そこまですると押し付けがましいか……)


俯き加減で色々悩みながら校門に向かっている麻由。

ふと視線を上げると、ランドセルを背負ったツインテールの背が小さい小学生が

細かく足踏みしながら校門の外で立っているのが見えた。


(!! あれが従姉妹のあかねちゃん?)


噂をすれば、な展開に興奮してドキドキしている麻由。

近づいて来る麻由に対して、あかねは視線を向けてその顔をじっと見つめる。


「お姉さん、昨日わたしたちを見てた人だよね?」

「!!」


あの時は気付かれないように結構遠くから見てたつもりだったが、

この子にはお見通しだったらしい。

逆にそれぐらいでないと麻由にとっては見ていた意味がない。


「わたし中瀬麻由。木花友梨奈さんのクラスメイトなの。よろしくね、あかねちゃん」

「ふーん、わたしのことは梨奈ねーちゃんから聞いたんだね」

「木花さん、先生に呼ばれてたからまだしばらくかかると思うよ」

「そっか……。時間が無いんだけど……。今日のは上手くいけば梨奈ねーちゃん

いなくてもなんとかなるかな……」

「それってどういう……」


言いかけて、言葉を途中で飲み込んだ。

あかねの瞳が紅く染まり、その顔は少し上を見上げ、目の焦点が消失している。


(その瞳……)


麻由の頭の中で過去の記憶に残った紅い瞳の少女のイメージとオーバーラップした。


(やっぱり……木花家の人たちの中にわたしが探してる子が絶対いる!!)


しばらくして、あかねの瞳に焦点が戻り、麻由の視線を感じて口を開いた。


「なに?……紅いの……気になる?」

「あ、ううん。昔見たんだ」

「……あかねちゃんと同じ瞳をした人」


今は濃褐色に戻ったあかねの瞳をじっと見つめる麻由。


「ふーん」

「それで探してるの?」


麻由は思わず息を呑んだ。

この子は何でもお見通しみたいに話してくる。


「心の声が大きいと、他人に聴こえちゃうよ」


微かに口元に悪戯っぽい笑みを浮かべ、あかねは歩き出す。


「さっき視たらもうわたしの用は無くなってたから行くね。麻由さん、またね」


離れて行くあかねの後ろ姿をずっと見続ける麻由。

その頬は興奮で少し赤く染まっていた。



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