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神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。(reboot ver.)  作者: 宇宙 翔(そらかける)


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6/15

チーズケーキと隠しごと

そもそも自慢じゃ無いが、友梨奈は知り合いを家に呼んだことなんて

過去一度も無い……。

そういえば昔勝手に家にやって来た亡霊の男子はいたから、

生身の人間では初ってことで。

こんなネタ持ってるから、ゲゲゲの友梨奈とか、トイレの友梨奈さんとか

言われてしまうのだろう。


他人と一緒に歩くという行為自体も記憶に無いぐらいレアだったため、

どう対処して良いのか友梨奈にはまるでわからなかった。

時々右足と右手が同時に出たり、変に意識して歩き方までぎこちなくなってしまう。


とりあえず、

祖母の家に住んでいること、

両親が亡くなってからそこに引き取られたこと、

一人っ子であることなど、

自分のことをいくつか話してみたが、

麻由の顔を見れず、俯いてボソボソと小声だったので、

会話というより独り言になってしまった。

すぐに話すネタも無くなって沈黙が訪れた。


こっそり隣の麻由のほうを盗み見ると、笑顔で軽やかに歩いていて、

初対面の人間の家に初めて行くような緊張感は全然無い。


(これが人気者の陽キャパワーってことか……。

この程度のシチュエーション余裕で全然動じないってことね)


二人の向かう先に年季が入った超和風の古い一軒家が通りの角に見える。

ってことは友梨奈の家、

正確には友梨奈の祖母、木花碧(みどり)の家に着いたということだ。


(中瀬麻由が本当に家に来ちゃってるんだけど、どうすればいいのこれ。

あーー、もう、変な汗かいてきた)


中瀬麻由は友梨奈の家をじっと見つめて顔にうっすら笑みを浮かべている。


「ただいまー」


形式上普通に玄関から入るタイミングで友梨奈は言ったが、

間違いなく家に着く前に碧には動きを探知されてるはずで、

実質到着をアピる必要が無いことはわかっていた。


「梨奈おかえりー。部屋にお茶置いといたから。お菓子は中瀬さんが持ってきてくれたんでしょ」


家の奥から碧の声。

友梨奈が家に他人を連れてくるのは今回が初めてで、そのことは事前に碧に連絡はしていない。

まして、麻由がクッキーとケーキを準備してたなんて話は。


友梨奈を先頭に玄関左脇の急な階段から二階に上がり、

昇ってすぐ右にある友梨奈の部屋に入ると、

さっき聞いたとおり、小さい丸テーブルの上に紅茶を入れたグラスが二つ、

大きな丸皿と取り分け用の小皿と小さいフォークが置かれていた。


それはまぁいいとして(普通に考えれば良くないのだが)、

自分の部屋に他人がいることが初めて&違和感ありすぎて全く落ち着かない……。

こういう時って、家主の方がホスト、女性だとホステス?だから

会話を切り出さないといけないものだろうか……。


(あー、いかん、また変な汗かいてきた)


「なんかいきなり押しかけたのに気を遣ってもらっちゃって……」


申し訳無さそうにぺこりと頭を下げる中瀬麻由。

勝手にこの事態を察知して気を遣ったのは碧なのだが、

麻由からすれば友梨奈が事前に家に連絡して頼んだと思ったのだろう。

そんな普通の想像が通じるなら、

友梨奈も他者の来訪にここまでは動揺しなかったに違いない。


「こちらこそ、あんまし人を家に呼んだことないから慣れてなくて。

とりあえずここ座って。あ、お茶冷めないうちにどうぞ」


無難に普通の応対が出来た気がする友梨奈だったが、動きはかなりぎこちなく、

ギーガチャン、ギーガチャン、

って感じの擬音がピッタリな壊れかけのロボットみたいになっていた。

また今は9月上旬でまだ残暑が厳しく、碧は氷が浮いた冷たい紅茶、

アイスティーを出していたので最初から冷たいのだが。

それらを見た中瀬麻由が肩を揺らして笑いを堪えている。

テンパって自分の言動の変さに気付いていない友梨奈は、麻由の反応が理解出来ず、

ただただ立ち尽くす。


「あ、ごめんなさい。結構美味しく出来たと思うんだ。食べよ食べよ」


テーブルを挟んで腰を下ろす麻由。

トートバッグからチーズケーキとクッキーを出して皿の上に並べる。

釣られて向かいに座る友梨奈。

お店で買って来たみたいに本当に美味しそうだ。


よく見るとテーブルの上に小皿とフォークが1セット余っている。

嫌な予感がしたその瞬間、部屋のドアをノックする音が響いた。

ガチャ

友梨奈が返事をする前にドアが開けられ、祖母の碧が入って来た。


「邪魔してごめんなさいね。梨奈が友達連れて来るなんて初めてで興奮しちゃって」


テーブルの一角に座る碧。


「いぇー、お邪魔してるのはわたしなので。初めまして、中瀬麻由と言います。

こっちには昨日転校して来て、友梨奈さんの隣の席なんです」

「あら、良い子が隣に来て良かったわね、梨奈」


今のところ良かったのか悪かったのか正直判断出来ない。

クラスメイトが家に遊びに来るという『普通』なイベントは初体験出来たのだが。


「お祖母さん、凄く若見えしますね。親子でも全然いけそう」

「あらあら。良く言われるのよ。わたしのことは碧さん、って呼んで」

「じゃあ、わたしのことは『麻由』でお願いします、碧さん」

「麻由ちゃんね、わかった」


まだ箱の中に残ったチーズケーキをチラ見している碧


「わたし、チーズケーキ大好きなの。それ一切れもらって良いかな」

「もちろん、お口に合えば良いですけど」


麻由が余った皿にケーキを一切れ載せて碧の前に差し出す。


(最初から自分の皿とフォーク用意してたくせに。

つか、どこで中瀬麻由がケーキ持って来てるって察知したの?!)


碧を横目で睨んでいる友梨奈。

ニコニコ顔でチーズケーキをフォークで切って口に運ぶ碧。


「わぁ、これ超美味しい。麻由ちゃん、天才!」

「うわー、嬉しい、ありがとうございます。まだ箱の中にあるので、

後で食べてください」

「もう、麻由ちゃんには毎日でも来て欲しいぐらい」


(毎日何か持って来させる気? 木花家の評判がさらに悪くなるからやめてよ)


「それは冗談だけど、麻由ちゃんは何か用事があって来たんじゃなくて?」

「え?」


口ごもった中瀬麻由の顔から笑顔が消え動揺してるのが伝わって来た。

転校初日ですらあれだけ堂々としてたのに。


「べ、別に用ってわけじゃなくて、本当に友梨奈さんと仲良くなりたくて」

「そぉ? まぁ、これからはお土産とか気にせずに自由に遊びに来てね」

「ありがとうございます、また来ます」


(おいおい、何二人だけで勝手に合意してるのよ)


転校二日目に学年一不人気キャラの友梨奈のところに遊びに来るなんて

おかしいとは思っていたが、碧が突っ込んだように中瀬麻由には何か目的があるらしい。

結局その日は碧もそれ以上ツッコむことはなく、

友梨奈は精神的に一杯一杯で、それを追及する余裕なんて無かった。



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