表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。(reboot ver.)  作者: 宇宙 翔(そらかける)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/18

この力で救えるなら

「あのね、おじいちゃん。魂持っていかれたんじゃなくて、『意生身』っていう霊体

で移動して助けに行ったんだよ。パーリ経典でお釈迦様が言ってた、思考で成り立つ

身体を生み出す神通力なんだから!」


真面目に説得を続けるあかね。


「おい、小娘! さっきからその『おじいちゃん』は止めろ!」


想定外のツッこみに唖然として口ごもる。


「だって……、どう見ても『おじいちゃん』じゃん……」


不満げな顔で小声で文句を言うあかね。

大人げなく険しい形相で睨んでくる僧侶風の男。


意識が戻ると激しく荒れ狂ったような速い流れの中にいて、どんな嵐の中の急流に来た

のかと恐怖を感じた。

周りを見回すとコンクリートで固められた岸が見えて、その先には普通の住宅の家並

が見える。

どうやら住宅街の中の川か用水路のようだ。

川幅は数メートル程度しかないが、水かさは溢れんばかりに増し、濁流が凄まじい勢い

で流れている。

今はその急な流れの中、流されていた女性の手を掴んでいる。

周りから見れば、流されていた女性が見えない何かに引っ張られ、突然その場に止ま

ったように見えているだろう。

この女性には友梨奈が見えていないから、なぜこんな激しい流れの中で急に止まった

のか理解できない状態のはずだ。


「なに? 助けてくれてるのはもしかすると神様? お願い! 私はいいから代わり

にあの子を助けて! 先に流されちゃってるの! お願い!」


今まで経験したことのない反応に戸惑う友梨奈。

大抵自分の命の危機に際して、自分が助かりたい一心で必死に手を掴んでくる人

ばかりだった。

それが生物として普通の反応だろう。

母親って、自分より子供を先に助けてほしいって思うものなのだろうか。

小さい時に両親を亡くしている友梨奈にはよく分からない。


「ねぇ、お願い、神様、お願いよ〜」


友梨奈の手を両手でぎゅっと握って、それを自分の額に擦り付けるように何度も頭を

下げている女性。

自分ではなく他人を助けてほしいという願いでも、この力は働くのだろうか。

それと同時に、JCに人の命の選択なんて難しい判断を迫らないで欲しいと思った。

トロッコ問題ほどじゃないがきっと正解なんてない。


(だって母親を亡くした子供も絶対ダメ! それじゃわたしと同じになっちゃうよ!)


いくら頼まれても友梨奈の能力では先に流された子供には何もできない。

きっともう意識が無く自分から助けを求めていないから、友梨奈には腕のビジョンが

見えないのだろう。

これが友梨奈の力の限界だ。


「梨奈ねーちゃん、『羂索けんさく』使ってみる?」


けんさく?

なんか聞いたことがあるような、ないような。


『羂索って、あらゆる命を漏らさず助けられる能力なんですよ。そんな貴重な能力を

使わないなんて……』


昔あかねの姉のりこに言われた言葉にそのワードがあった気がする。


「不空羂索観音から与えられた能力の一つで、投げ縄みたいな持物じもつで遠隔

から人を助けられるの」


あかねのざっくり説明。

言ってる意味はわかったが、なぜそんなおあつらえ向きの物が今ここに?

そういえば家の『瞑想の間』に、観音像と一緒にこんな道具があった気がする。

まさかあかね、あそこから勝手に持ってきたんじゃ?

あかねに嵌められている感が拭えないが、一刻を争う事態にツッコんでる猶予が

ない。


「何だかよくわかんないけど、投げ縄みたいなのが今あるのね? それをビューっと

投げて、子供をぐるぐるっと巻いて助けるってことでしょ?」

「ならそれを使ってやってみる。早くわたしにちょうだい」


いつもなら手を通じてその人の助かりたい気持ちが全面に伝わって来て、そのことが

友梨奈の気を焦らせるのだが、今回は全く違うエネルギーが伝わってきている。

子供を助けたい母親の強い気持ちが友梨奈に何でもできることをとにかくやって

みようという気にさせているのかもしれない。

自分から振ってきた割にはあかねは黙り込んで応答してこない。


「あかね、いいからわたしに早く羂索ちょうだい。二人でこの人の子供助けるよ」

「二人で?」

「初めて使うのに適当に投げても可能性低いけど、あなたのよく視える眼とよく

聴こえる耳ならきっと男の子の位置を見つけ出せるでしょ?」

「うん、お姉ちゃん。わたし絶対見つけるよ!」


あかねはリュックから投げ縄のようなものを取り出すと友梨奈の左手に握らせた。

次に友梨奈の後ろに立って額を友梨奈の後頭部にあて、両手は目の上に当てている。

姉のりこと編み出した合体技。

またすぐ使う日が来るとは思っていなかった。


友梨奈は左手に重さを感じ、そっちに視線を送ると聞いたとおり投げ縄の形状をした

物体、羂索が握られていた。

この物質は霊体と同じような移動ができるのか。

さすが観音菩薩の持物、超便利だ。

これのスマホ版もあればいいのに。

いざという時、霊体のまま救急車とか警察を呼べたら便利だから。

半端な神通力しか使えないJCには、人助けのプロのヘルプだって必要だ。


「梨奈ねーちゃん、集中してくれないと視界を同期できないよ」


頭の中であかねの不満そうな声。

いきなり集中とか同期とか言われても具体的に何をどうすればいいのかよく

分からない。

多分男の子を見つけようと思って前方に意識を集中しろっていうことだと思い、

とりあえずやってみる。


その瞬間、目の前の視界が川の流れに沿って飛ぶように先に進んで行く感覚が来た。

まるで自分が鳥になって川の上を飛んでるみたいだ。

今風に表現すると、ドローンで撮っている映像をVRでリアル体験してる感じ?


少し先の濁流に野球帽のようなものが流れている。

そこにズームインするが、その下には人間の身体はない。


流れに沿ってさらに飛翔するあかねのビジョン。

波間に黒い頭の一部と思われる物体と小さい手が視える。


「おねーちゃん、視えた!」

「あかね、やるじゃん!!」


友梨奈は能力を使うことに対して初めて心が高揚していた。

自分と同じ境遇を、この親子に味わわせたくない。

それだけじゃない。忌まわしいと思っていた自分の力に、なにか可能性を感じていた。


羂索を投げ縄のようにぐるぐる振り回し、右足を高く上げ、大きく振りかぶって、

思い切り腕を振り下ろす。

勢いよく先端が川沿いを飛んで、さっき見たイメージへ一直線に向かっていく。

羂索は最初の長さとは関係なく、どんどん先に伸びて行っている。


「行けー! 行けー!!」


あかねが興奮して叫ぶ声が頭に響く。

子供の体に羂索の先が届く一瞬前に、その子の体は流れに逆らってピタッと止まり、

水面から少し浮き上がる。

そこに友梨奈が投げた羂索の先が綺麗に体に巻き付いた。


「やったー!! おねーちゃん早く引っ張ってあげて」

「簡単に言うなー! 今投げたのでもうなんか急に身体に力入んなく……なって……

来てるんだから……」


意生身と呼ばれる霊体で移動した先でここまでの脱力感を感じるのは初めてだ。

羂索を使うのに相当霊力みたいなものを消費しているのかもしれない。

もう今すぐこの場で目を瞑って爆睡してしまいたいぐらいの状態だが、早く二人を

岸に引き上げないと

その場に繋ぎ止めておいてるだけでは、そのうち溺れてしまって全く意味がない。


「おりゃあーー!」


最後の気力と体力を振り絞り、掛け声の勢いで羂索と女性の腕を同時に引っ張り

ながら河岸を駆け上がろうとしたが、脚がもつれて前方によろよろとよろめき、

最後は身体が前にもんどりうってゴロゴロと転がる力も使って引っ張る形になった。


つか、正直に言えばコケた勢いで開脚前転したら、結果的に二人を引っ張れただけだ。

この間の火事に続いて見た目的には著しくカッコ悪いし、スカート姿でやっていい動き

でもない。

でも今は結果さえ出れば何だっていい。

どうせ意生身の自分なんて誰にも視えない。


多分二人とも岸に上げられたはずだが、あかねとの映像リンクが切れてしまって、

羂索の先がどうなったか確認できない。

手元で引き上げたはずの女性は、もう上半身を起き上げる力もなく、自分の目で

様子が見れない。

大の字に寝転がったまま、遠ざかる意識の中であかねが喜んで騒いでる声だけが

頭の中で微かに聴こえる。


(そのリアクションはちゃんと助けられたってことね。良かった……、わたしの

二の舞いが生まれなくて。嫌々でも能力使った甲斐はあったな。

でもこれって……もしかすると能力を全部使い果たしたかも……。

わたし……戻れるの?)


「梨奈ねーちゃん?  大丈夫?  梨奈ねーちゃん―――!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ