表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/256

第二十話 パーティメンバー


 そこは、落ち着いた音楽が流れる、広々とした店だった。


「ここの奥に個室があるよ!」

 サキコちゃんが店員に挨拶をして先導してくれる。


 個室は、ゆったりとしたソファーが置かれた小部屋のようになっていた。


「あーココ、打合せでも使ったことがある」


 和泉さんが、頷きながらソファーに腰掛ける。


「和泉さんてアイドルやってるんだよね」

 隣に腰掛け、サキコちゃんが言う。


「アイドルって言っても、全然売れてないんだ」

 そう言って彼女は恥ずかしそうに自虐的に笑う。


「えーかわいいのにー」と頬を膨らますサキコちゃん。


 俺は二人の向かいに座って話を合わす。

「そうだね。おっさんが言うのもキモイかもだけど、二人とも可愛いと思うよ」


 俺が言うと「私は全然だよー」とサキコちゃんが手を振り、「そんなことない! 絶対可愛いよ」と和泉さんが言う。


「何? この状況? なんで平然と美少女と冴えないおっさんがだべってるわけ?」

 いまだ納得いかなそうに呟くアンジュが俺の隣に座る。


 それぞれがオーダーをした後、和泉さんから話を切り出してきた。


「で、お話って何だったんですか?」


 ——来たか。


 俺は、ごくりと喉を鳴らし、頭をかいた。


 今日の俺の目的は二つ。一つは、このパーティの実態を探ること。そしてもう一つは、九頭竜や和泉さんといった、才能ある若者たちを、あのバラバラなパーティに引き留めることだ。


「俺って、こんな歳ですけど、パーティでは一番の新参者でして。これが本当に現実の出来事なのか、まだ不安もあって……。それで、色々とお話を聞いてみたかったんです」


「なぜ、私に?」


 和泉さんが、怪訝そうに眉をひそめる。


 ——ここ。一歩間違えば、ただの下心あるおっさんだと思われる、ターニングポイントだ。


 俺は、言葉を選びながら慎重に続けた。


「昨日、勇者さんから直接お話は伺ったんですが、正直、信じられないことばかりで……。和泉さんは、パーティの創設メンバーだとお聞きしたので、ぜひお話を伺いたいと。……実力も経験もあるあなたが、なぜあのパーティに留まっているのか、その理由が知りたいんです。ついさっきまで、九頭竜さんにも、同じような話を聞いていました」


 九頭竜の名前と、「あなたがパーティに必要なんだ」というメッセージを滲ませたのが良かったのか、和泉さんの険しい視線が、ふっと柔らかくなった気がした。


「確かに、初期メンバーは九頭竜さんと私ですね」


 納得したように頷く和泉さん。その横でサキコちゃんが「ヘェーそうなんだ」と相槌を打つ。


「そーいえば、ルーリちゃんも日本名が山川だったけど、何か関係あるんですか?」


 一瞬、隣のアンジュの唇の端がピクリと動いたのを視界の端でとらえた。


 ——こいつ絶対。『パパ』です。って言おうとしたぞ!


 俺はわざとらしく肩をすぼめる。


「まったくの偶然。俺も聞いたときは驚いた。彼女は、異世界出身で山川は本名じゃないみたいだけど、俺は正真正銘、日本人で本名が山川、山川新次郎です」


 新次郎と言ったところで、一瞬、和泉さんの目がスッと細くなった気がしたが……たぶん気のせいだろう。


「そうですか」と呟く和泉さん。


「山川さんは、どこか教会とか組合とかに所属しているのですか?」


 ある意味、シンなら女神教では? と脳裏をよぎったが、一応否定するように首を振った。


 すると、彼女の視線が今度はアンジュに向かった。


「あのーお姉さんは」


 そこまで言ったところでサキコちゃんが「安寿さんだって」とフォローする。


「安寿さんは、ソニアさんと知り合いなんですか?」


 鋭い質問が飛ぶ。さあ、どうするアンジュ! と、思ったが、彼女はそつなく返す。


「そうね、知り合いといえば知り合いだね。だって私は、彼女の護衛ですから」


 ──護衛!? 護衛がなぜここにいる!


「ソニアさんの護衛が何で山川さんと一緒にいるんですか?」


 ナイス突っ込み、和泉さん!


「安寿さんは山川さんの事務所のえーじぇんとさんだよ」

 サキコちゃんが解説する。


 ただ、今回はアンジュがぺこりと頭を下げた。


「ごめんね、あれは冗談。ほんとは、ソニア様のお話に感銘を受けて、一緒に付き従わせてもらってるの」


 ——ソニア様!? 本人がいたら、悶絶しそうだ。


「それでね、この人の力は、ソニア様が見つけたの。それで、結果的に私がエージェント役を引き受けたの」


「エージェント……」

 和泉さんは顎に手を当て考え込んだ。


 一方、サキコちゃんは「だからソニアさんと一緒の格好してるんですね! リスペクトですね!」と興奮して声を上げる。


 なんだか、こっちばかりが探られている気がして、俺は強引に話の矛先を変えた。


 ——ここからが本題だ。


「和泉さん。俺が本当に気になっているのは、ギャラのこと。そして、本当に魔王なんてものがいるのかどうか。もしよければ、和泉さんご自身が、どうしてこのパーティに入ったのかも、教えていただきたいんです」


「ギャラ?」

 彼女は再び眉をひそめる。


「それ! 私もびっくりした! あの日の後、口座にお金が入ってて」

 サキコちゃんが声を上げる。


「あーそれね、時給五千円はルーリちゃんから、それ以外の経費は、『過剰脅威対策室』からだと思う」


「だと思う?」


「うん。わたしの分は、両親の口座に入るから、詳しく知らないんだ」


 ご両親ねぇ……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ