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騎士になりたい令嬢の行動は無自覚です   作者: 蒼凰
1章・シェーナ王国編
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オルテーガ帝国ロジェの手記『第2章・最愛の失踪及び権力に溺れし皇帝』

帝国に帰れば沢山の女達が俺を出迎えた。母が用意した女だと言う。俺は母の部屋に大股でかけていき、ドアを乱暴に開けて怒鳴った。


「母上に見繕っていただかなくても、自分の伴侶は自分で見つけている。俺には心に決めた人がいるんだ。勝手なことをしないでくれ」


豪奢なドレスに身を包んだ、年齢不詳な母は笑った。


「何を言うかえ? そなたに女は捕まえられぬ。それに、仮に囲えたとして側室を持っておくことは必要じゃ。分かっておろう? 皇帝の役目は第一に子孫を残すこと。それをゆめゆめ忘れるでないぞ」


「一人で十分だ! 俺は妻を彼女以外にとるつもりはない!」


激昂すれば、母は冷たい目を向けて薄く口を開き、微笑みを浮かべた。


「彼女、とはニューウェーストのかの女、フェルリーナの事かえ?」


す、と純白の扇子で口を隠してつい、と口の端を持ち上げた。


「かの女であるというのであれば、婚姻は認められぬ。母が許さない以前にニューウェーストも認めぬであろうな。それに、あの様に美しいにも関わらず野蛮な真似をするなど、妾にはどうも理解出来ぬ」


「母上の事はどうでも良いが、ニューウェーストが認めないとはどういう事だ……!」


「アホか。そなたはニューウェーストの青年がフェルリーナを外にやるのを嫌がっていたのを見たであろう? 危険な真似を許したのはフェルリーナに剣の才があったというものと、妹を他所にやるくらいなら剣を学ばせ、近くで守ろうという考えがあったからぞ」


剣を振り回す女を好んで嫁に迎える酔狂者はそうそうおらんからな、と笑って付け加えた。


「父の様に、女と体を重ねて多くの子を授かれ。沢山女がいれば飽きぬであろう。日によって変えれば良い。どの者も豊満な体をしておるーー」


「ふざけるな」


「ふざけておるのはそなたの方。務めを果たせ、と言っておる妾がふざけているなぞーー」


「良いか? 俺は母上が見繕った女とは何もしない。彼女との間以外で子を成すつもりはない」


失礼、と邪険に言って部屋を出た。

次に宰相の元に向かい、書簡を送る様に命じた。


『バルトス・ニューウェースト殿

先日は助かった。お陰で野垂れ死ぬ事なく祖国に帰ることができた。これはバルトス殿とフェルリーナ嬢のお助けあっての事だ。

さて、ご存知だろうが先日父がこの世を去り、俺がオルテーガの新皇帝となった。突然ではあるが、是非ニューウェーストの令嬢フェルリーナ嬢と婚約をしたい。

考えて頂けると助かる。

ロジェ・オルテーガ』


宰相はちょっと渋った顔でその文を見ていたが「まあ、このままの方が人となりが伝わるか」と言ってそのまま出した。


その書簡を出して一月が経ってから返事が返ってきた。


『オルテーガ帝国ロジェ陛下

御即位をお祝いすると共に前陛下の御冥福をお祈り致します。また、来月行われる即位の儀には出席できない旨をお知らせ致します。また、わが妹フェルリーナは表舞台より消えた人物となっておりますのでオルテーガ帝国という、歴史ある国と婚約する事は出来ません。きっと、陛下の立場が悪くなってしまいます。

どうか、フェルリーナの事は諦めて下さい。

ニューウェースト自治区バルトス』


要約するとこんな感じの文であった。


「表舞台から消えた人とは?」


宰相から受け取ったその場で読み、唸っていると宰相が教えてくれた。


「自治区といえど、自治区を取りまとめる家には彼の国より称号を与えられている事はご存知ですよね?」


オルテーガ帝国をも凌駕する権力を持つ大国。

俺は頷いた。宰相は俺が頷くのを見て、話を進める。


「一定の年齢になった、彼の国に忠誠を尽くすと表明している小国及び自治区の令嬢令息は彼の国の主催する社交パーティーに出席しなければなりません。それに出席して小国、自治区のトップをつとめることを認められるのです。令嬢の場合、身分を保証され地位ある令息の元に嫁ぎやすくなります」


「今まで社交パーティーに出席しなかった者は?」


「数名、病気を理由に欠席していますが、その数日後回復した後に彼の国の長に謁見を申し入れています」


「フェルリーナ嬢以外は彼の国の長に謁見しているという事か」



〈血に濡れたり破れたりしており、解読不可能〉



母の用意した女達を側妃に据え、フェルリーナと婚姻するための方法及びフェルリーナの行方を探した。フェルリーナはあの連絡以降ニューウェーストの領地から去り、行方を晦ましていた。宰相が言うには俺若しくは彼の国からの婚約申し込みを機敏に感じ取った為、姿を消したのではないかと。

この一年間、執務の合間に彼女を探したが全く痕跡を残さずにいる様で尻尾すら掴めていない。

ニューウェーストに乗り込んで問うてみるもシラを切られるのみ。何度もこんなやりとりを繰り返すうちニューウェーストへ怒りを感じてきた。

オルテーガの頂点に君臨する俺の願いを聞けないのかという感情。

きっと、俺はここで間違えた。大きすぎる権力を持つに値しない人物だったのだ。


〈オルテーガ帝国ロジェ・オルテーガ12歳、ニューウェースト自治区フェルリーナ・ニューウェースト13歳 (失踪)〉

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