11,獣人の護衛騎士
更新が遅くなってしまい、申し訳ないです。
獣人は鼻が良く、本来の性格を嗅ぎ分けることができる。そう、幼き頃に読んだ書に書いてあった。
「男装している訳ではないんですが。いつも剣を振り回す時はこの格好をしているので」
「じゃあ、何故ザークに勘違いされた時、女だと訂正しなかった?」
ゆっくりと歩き、グルーネイは自分以外に話を聞かれない様に配慮してくれた。本当に、間違えて斬ってしまいそうになった事を怒ってないのか、こいつ。
「面倒ですし、間違えて対面した折に不敬を働いたので、殺されない様に、ですかね」
尊い身分であるザークに馴れ馴れしく触れるのは、緊急事態であったとしても、よろしくない事だ。最悪、身柄を捕えられ、身分剥奪。
そして、ザークは私を探している。
これを簡潔に何と言うか。
つんでいる、という。
「それに、婚約者なんているのか?」
更に追い討ちをかけてくる。金の獣じみた目がきらりと輝いた気がする。
「短剣が私の婚約者なので。私、お飾りの妻とか興味ないですし」
しらばっくれるよりも、現在ナバルの護衛騎士を任されるほど腕の立つグルーネイの力を借りられる様に素直に言っておいた方が得であると判断した。
「というか、貴方話し方が前と違いますね、入学式の日はなかなか乱暴な話し方でしたけれど」
でも、余計な事は聞かれたくない。あの日の令嬢が、煌びやかな社交界からひっそりと消えたニューウェーストの一人娘であるとバレてはいけないから。
話を逸らす。
「ああ、あの日は酒が入っていたから素が出てしまったんだ」
「遠吠えも素なんですか」
疑問形でなく、確認の様な抑揚で言えばカアッと赤く顔を染める。
「それは、絶対に言うなよ?」
「恥ずかしいんですね」
「そりゃそうだろ! いつも、王太子の護衛騎士をその歳で任される、凄いやつ、って言われているのに」
そうですか。
「まあ、良い。俺はグルーネイ・ザーベンシュ。いつか、名を名乗れるようになったら来て欲しい。あの剣の能力を埋れさせるわけにはいかないからな。何なら、ニューウェースト家に取り次いでやっても良い。あそこの令息二人も居るんだし、今日の手合わせで印象付けられたら声をかけて貰えるかもしれないぞ」
まさかの、ニューウェースト家の令嬢だなんて、言えない。
「そうですね、頑張ります」
そう笑っておくに留めた。
「遅かったじゃないか!」
格闘場のフィールドにて。
にこやかな顔をしてリュートが出迎える。その周りには、格闘クラブに所属しているであろう、騎士の格好を模した服に身を包んだ令息が倒れていた。
リュートを囲んで、円状に。
「一体何をしていたんですか……」
眉間を指でつまみ、オルナーがため息を溢す。
リュートの実力を目で見たことのないナバル、ザーク、フローラは目を瞬かせていた。グルーネイは若干引いていた。「ニューウェーストは敵に回しちゃいけない家ナンバーワンだ……」と呟き、尻尾が股の間に入っていた。
「ああ、これは準備運動だ」
ふう、と額に浮かんだ汗を手で拭う姿は貴公子。とても色気に溢れている。
めちゃくちゃだ。
「因みに、君達よりも先に来ていた新入生達はすーぐに去っていったよ。手合わせをしよう、って意気込んでいた令息も、帰っていっちゃったし」
「それは、残念だね」
オルナーは棒読みで返した。
「なら、ここにいる人達を相手にしてみてはどうだろう。グルーネイ護衛騎士、ザーク皇太子、ナバル王太子もいる。相手として不足はないと思う。それに、楽しみにしていたんだろう?」
「ええ、俺ですか、いやいや、いくら護衛騎士と言ったって、ニューウェーストと、戦の神と対面なんて」
「誰も一対一なんて言っていないよ。三人纏めてかかってきても良い」
私は数に入っていない。悲しい。
「先輩。それは僕達を舐めすぎではないでしょうか」
リュートが朗らかに笑えば、そう、険のある声が割り込んできた。
ザークが、黒い瞳を苛立たしげに光らせていた。
注:格闘場は屋外にあります




