表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士になりたい令嬢の行動は無自覚です   作者: 蒼凰
1章・シェーナ王国編
12/29

10,記憶を漁る

腕からフローラを解放し、笑い掛けておく。心配そうにナバル、ザークがフローラに駆け寄っているので、私はフローラを二人に任せて記憶を漁る。


フローラ・シェーンフルツ。

キャラメル色の髪に、ピンク色の目の、可愛らしい令嬢だ。確か、公爵家だった。

このゲームの面白いところは、ヒロインが根っからのヒロインでない事。性格が最悪で悪役令嬢として生きていけるのではないか、というくらいの策略家。しかし、ある日突然前世の記憶を取り戻し、自分がやっていた乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事を悟る。

前世はとても良い性格をしていたヒロインは今までの行動を悔い改め、真っ当な人物になって生きていく、その中で攻略者と出会い、愛を育んでハッピーエンド。

つまり、フローラは私と同じく転生者である可能性があるが、それはゲームの中での設定なので本当の転生者と言って良いのか、という事だ。そもそも悪役である私まで転生していてはゲームが成り立たないのではないか。

混乱してきたので次に行こう。


リュート・ニューウェースト。

オルナーの双子の兄だ。銀髪碧眼の麗しの貴公子。

冷静沈着なオルナーとは正反対で、活発だ。馬鹿力で物を壊しまくる貴公子。悪気がないため、誰も怒れない。

シスコンで、妹を妻にしようとした変質者。しかし、実は妹がリュートに呪いをかけて自分以外の女性を好きにならない様にしていたという鬼畜設定。つまり、私が重度のブラコンだ、という事だ。フローラはその呪いを見抜き、解いてあげ、リュートはフローラを好きになる、という流れだったか。友人は、リュートが二番目の推し(推しが何かは分からないが)だと鼻息を荒くして細かく教えてくれた。私はその話のほとんどを右から左に流していたので覚えていない。きちんと聞いていなかったことが悔やまれる。

しかし、現実私はそんな呪いをかけていないし、かける予定もないのでリュートに関しては放置しても良さそうだ。リュートのことは大好きだが、それはただの家族愛。ブラコンまではいかない。どういう経緯でフューネが殺されるのかは分からないが、友人が何度も妹が殺される、それも無残に、と言っていたのでシナリオ通りに進んでいたら間違いなく死ぬ。

ちなみに、幼い頃私が兄に贈ったイヤリングがある。兄の誕生日プレゼントに作ったのだが時間が足りず一組しか出来上がらなかった。それを言えばリュートもオルナーも嬉しそうに笑って、「片っぽずつ頂戴」と言ってくれたのだ。だから、リュートは右に、オルナーは左に金のシンプルなデザインのイヤリングを付けている。赤と青のリボンは、私が初めて魔法で作った物だ。今でも大切に使ってくれているのが、嬉しい。


もう一人の兄、オルナー・ニューウェースト。

リュートの双子なので、同じく銀髪碧眼の悲哀の貴公子。

体力があまりないのでニューウェーストの当主をリュートが担う事になった際、リュートの右腕として役に立とうと考えていた。しかし、信頼していたリュートが妹を溺愛し過ぎ、廃人になっていく様子を見ていられなくなってリュートの目を覚まそうと何度も説得を試みる。バッドエンドの場合、説得をしてももう無理だと分かったオルナーはリュートを監禁、妹を殺害する。ハッピーエンドであればオルナーはフローラと共にリュートの呪いを解き、妹を殺害だ。

繰り返そう。私はリュートに呪いをかけていないので殺される心配は皆無だ。


つまり、心配無用。このままこの世界を楽しんで良いのでは?

嬉々とした表情で一人頷けば、オルナーが私を怪訝な目で見ていることに気付く。何でしょう……?


「体が痛みますか? 怪我をしたなら保健室に案内しますが」


じっと動かずにいたから足首を捻ってしまったと勘違いされたのだろうか。


「大丈夫です、お気遣いありがとうございます」


そう言えば、皆頷いて歩き出した。小さくため息を溢してついていく。


しかし、フローラのあの顔。

あれは手合わせ前の親愛度アップイベントだ。フローラは、気に入った人物と腕を絡め、転んでしまいそうになる。そして、それをフローラの攻略相手は素早く受け止め耳元で囁くのだ。

『綺麗な貴女に、傷ひとつ付けはしませんよ』

そう言って手にキスを一つ落とす。その際、フローラの照れた顔と攻略相手の色気たっぷりな顔、二種類のスチルを獲得する。


ん?

そこで気付く。ここは、乙女ゲームの世界。そして、フローラはそのゲームのヒロイン。攻略相手も、一人を除いて揃っている。つまり、ゲームは始まっていて、フローラは誰かを攻略しようとしているのではないか。

考えてみれば、あの入学式。

一番最初のイベントだ。フローラは王太子と皇太子に声を掛けていた。ゲームでも同じだった。王太子、皇太子に声を掛け、顔見知りになって親愛度を高めていく。因みに、『私が一人、壁際で入学式を見ていた際、フューネ・ニューウェースト嬢が声を掛けてきた。「絶対に、お兄様に手は出さないで頂戴。手を出したら、わたくしは容赦なく貴女を殺しますわ」』という、私との接触場面もばっちりある。私がプレイしたナバルルートにはこれ以来フューネは登場しなかったが。

そして、今回。フローラを助けたのは残念ながら美麗な攻略対象ではなく、訳あって護衛騎士の姿になり見た目が男っぽい令嬢であったが、イベントと酷似している。

もしかしたら、ゲームの強制力とかというやつが働いていて、何らかの形で悪役である私は殺されるかも。


「おい、どうしたんだよ」


グルーネイに肩を掴まれ、ギクリと肩を震わす。最後尾で考え込んでいた私に気を使っているのだろう。良い奴だ。


「あ、ああ、すまない。今日の夕飯が何かを考えていて」


「そうか」


そう返すといきなり腕を掴まれ、耳元で囁かれる。


「お前、あの時の女だろう。どうして男の真似なんかしている」


「え?」


間違えて殺そうとした相手は、唯々不思議そうな顔で私を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ