表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士になりたい令嬢の行動は無自覚です   作者: 蒼凰
1章・シェーナ王国編
11/29

9,前世の記憶

大変お待たせ致しました。明日投稿予定でしたが、本日書き上げられたので投稿いたしました。

今回は記憶編です。

格闘場へ向かう間、私の腕をフローラは離さずにいた。一度、オルナーと目が合って助けを求めたが、華麗にスルーされた。あの目は、楽しんでいる様にしか思えない。


「ラレンス様ってとっても綺麗ですね。氷で出来ているみたい。触ったら溶けてしまいそうな儚さで」


だったら触らないでくれ、と心の中でツッコミを入れておく。しかし、表面では好青年を装う。騎士、と自分の身を紹介してしまった以上、引き返せない。ここは、もう男で通すしかない。


「いえ、シェーンフルツ様の方がお美しい。この腕にずっと囲っていたいくらいだ。何処にも、逃したくない」


ギョ、とした顔のオルナー。対してザークはちらちらと私を窺っている。

眼鏡の奥に光る瞳が希望で輝いているのはどうしてだ。


「ラレンス様ってば。そうやってたくさんの令嬢を惑わしているのでしょう?……攻略にも隠しにもいなかったのに。おかしい」


後ろの方は口の中で言っていた様なものでほぼ聞こえなかった。事実、私以外には聞こえていなかったはずだ。耳が良かったから聞こえたものの、常人では聞こえないくらいの小さな声。

攻略?

隠し?

なんだろう、聞きなれないけど、聞いたことのある感じは。


「いえ、意外と一途なんですよ?」


疑問は胸に留めて、私は笑った。


「あら、それは御相手に嫉妬してしまいますわ……っ」


フローラがそう返した時、段差に躓いてフローラの身体が前に傾く。反射的にフローラを抱えて地面に転がる。婚姻前の令嬢の体に傷はつけてはいけない。その一心で動いた。


「ありがとう……ございます……」


私の腕の中で、恥じらう様に伏せた睫毛。ほんのりと赤く染まる頬。

私は、この顔を知っている。

あれはーー!

その瞬間、ガツンと頭に衝撃を感じた。そして、膨大な情報。立っていられないほどの苦痛が私を襲う。それに耐えた後は、とても気持ち良かった。


しかし、信じられないこともあるものだ、と感じる。


まさか。

まさかハマっていた乙女ゲームの世界の、悪役令嬢に生まれ変わり、全く悪役をしていなかったことに。

超大国の何処かとの婚約がされていた筈のフューネが、婚約していないことに。

そして、目の前にいる令嬢、フローラ・シェーンフルツこそ、この世界のヒロインで、フューネを断罪する人物である事に。


渇いた笑いが口から漏れた。


そうか、私は大学受験が無事終わり、これから大学生だというタイミングで、一週間飲まず食わずでゲームをしまくり、久々に外に出て、立ちくらみを起こし、たまたま通りかかったトラックにひかれたのか。残念過ぎた前世だ。

剣道のみに人生を注いできた私に親友が貸してきたゲーム。名前はなんと言っただろうか。確か、『白鳥の射手〜愛と憎しみと哀しみのカルパッチョ〜』とかだった筈だ。クリームソースを添えて、とつきそうな題名だね、なんて言えば首を絞められた。カタカナをちゃんと読め、と怒られた。

まだ途中までしかやっていなかったので、大雑把な事しかわからない。それに、私が攻略し終わったキャラはナバルのみだ。

取り敢えず、纏めておこう。

私は、リュート・ニューウェースト、オルナー・ニューウェースト、そして、今はいない私の婚約者ルートにおける、悪役令嬢だった。そして、その三つのルートで、必ずフューネは殺されている。リュートルートの場合はオルナーに、オルナールートの場合はリュートに、婚約者ルートの場合はフローラに。一応、私は自殺願望等はないので寿命を全うしたい。つまり、死を回避するには兄達のみを気にすれば良い。いない婚約者に対策は立てられないし。

唯一攻略済のキャラ、ナバル・シェーナ。

神の色である金と悪魔の色である赤を併せ持つ、金髪赤目の王太子。

公にはされていないが、確か現国王と幼馴染みで恋仲だった平民の女性との間に出来た子供だった筈だ。ナバルを産んだ後、衰弱死した。同時期王妃も子を孕んでいたが出産後すぐにその子は息絶えた。現国王は死んだ王妃との子、恋仲だった女性との子を入れ替え、王妃にはその事を言わずに育てていた。ナバルは自分が王妃の子でないと、魔法学校に入学して知り、明るかった性格が徐々に歪んでしまう。汚れた平民の血が混じった王太子など、認められない。そんな言葉をかけられる。そんな中、地位や体裁を気にしないフローラに会ってーーという話だ。言わずもがな、この後ナバルとフローラは恋に落ちる。お約束だ。まあ、このルートに私は関係しないが王宮付きの騎士になるにはナバルに気に入られなければならない。程々に接触すべきだ。人のお悩みを解決出来るほど万能でないし、無闇に首を突っ込んで良い話ではない。


次。ナバルの護衛騎士、グルーネイ。

現国王は獣人を嫌っており、大量虐殺を繰り返していた。何故、現国王が獣人を嫌っているのか。

これは完全に個人的な恨みだ。現国王と恋仲だった女性との間に一時期亀裂が入った。その際、その女性は獣人の、美麗な男と恋に落ちた。しかし、直ぐに女性は現国王の熱烈な言葉で獣人の男から現国王へ戻る。獣人の男は女性を快く現国王の元へ返したそうだが、現国王は一時期とは言え、愛する人が違う男を好きになっていた事実が認められなかった。それも、獣と人の混合種が相手だ。元々シェーナ王国は獣人に差別的だった事もあり、現国王の一言で騎士は手当たり次第獣人を殺していったのだ。

グルーネイの両親も、それに巻き込まれた獣人。普段は寂れた集落でひっそりと暮らしているが、その日は王都にしかないものを求めて集落から出ていた。人の多い市場へ行き、物を買った時、長いローブで隠していた尻尾を運悪く周回していた騎士に見つかった。グルーネイも一緒にいたが、両親が必死に大暴れし、抵抗し、グルーネイだけでも、と言って最後の力を振り絞って逃した。勿論グルーネイは渋ったが、母の『行きなさい!』という必死な声で両親を見捨てた。

逃げ回り、ボロボロになって動けなくなったグルーネイを、お忍びで偵察していたナバルが保護し、護衛騎士にした。

どういう経緯でフローラと出会うのかまでは分からないが、ここまでの情報は私にこのゲームを貸してきた友人によりもたらされている。因みに、グルーネイは両親を殺した現国王を暗殺するためにナバルの護衛騎士を引き受けたのだとか。そして、ナバルの出生の秘密を知ったグルーネイは、ナバルを殺せば現国王を苦しめられるのでは、と考えたらしい。

一言言わせて欲しい。

設定が重い。


フローラを庇い、記憶を思い出し、二人の攻略者の情報までを思い出すまでの時間僅か三秒。

フローラを抱き抱えたまま、立って笑い掛けた。


「お怪我がなくて、安心致しました」


さて、このヒロインをどう扱っていけば良いのかな。

私はそう思いながら、頬を赤らめるフローラを覚めた目で見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ