21
沼の中を俺達はじゃぶじゃぶと進む。
「途中でヤチマナコがあるから気をつけてねー」
「ヤチマナコってなんすか?」
「んー天然の落とし穴って感じかな。あとゾンビも出るからね」
「うっす」
「わかったわ」
そしていくらか沼地を進んでいくと、急に水中から何かが複数ざばーっと現れた。
「ゾンビよ!」
「うっす!」
ゾンビは3体、丁度こちらと同じ数だ。
「一人一体で相手にしましょう!」
「おうっす!」
そして俺は抜刀し、ゾンビの一匹に向かう。
「チェァァァ!!」
そして俺が斬りかかると、鈍いゾンビの腕はあっさり切り飛ばされてしまう。
『うぅぅー』
「こいつ斬撃に弱いっす!」
「解った!」
剣を持っているミミさんの攻撃も有効だろう、対してメイは大丈夫か。
「っしゃいけぇぇ!!」
見やるとメイは腕輪からつるの鞭を出し、ゾンビに叩き付ける。
多少自在に動かせるのだろう、ばしばしと鞭に翻弄されるゾンビは動けないでいた。
「テリャァァッッ!」
そして斬撃が有無を言わせずゾンビを両断する。
東の草原の次のエリアだけあって、そんなに強くないのだろう。
「やぁっ!」
ミミさんも突きを入れてゾンビを動けなくた。
このぶんなら倒すのもすぐだろう。
「ゾンビも麻痺するって知ってるのよ!」
そしてメイは鞭の先端をゾンビに突き刺した。
『うぅあぁぁ』
ゾンビは肩が麻痺したようで、片腕が上がらなくなっていた。
「このまま一気に決める!」
そして果敢に飛び出したメイは……どぶん、と音とともに姿を消した。
「ヤチマナコに落ちたわ!」
「急ぐ必要はないっす!ゾンビは呼吸不要っすから!」
そして俺はヤチマナコを避けてもう一匹のゾンビに向かう。
「チェリャァァッ!」
肩の動かないゾンビはあっけないもので。すぐに首を切り落とす事が出来た。
今度はメイの救出だ。
……と、思ったらメイが浮かんできた。
ウンディーネになったのだ。
「だあああくっさい!!」
「お帰りっす」
「臭いのよ!ほんと臭い!」
「おちついて。ゾンビになるっすよ」
そしてメイはゾンビになった。
「あーくさかった…・・」
「もうくさいのはしょうがないからねー」
そんなことを言い合いながら、俺達は沼地を歩くのだった。
「ああこの辺よ」
そこは枯れ草が泥の様になっているような所だった。
「ここの底は泥炭になってて、湖沼鉄も溜まってるから、そのまま燃やせば鉄が出来るのよ」
「お手軽っすね」
「そう、初心者はここの鉄を使う方が簡単ね。いきなり鉄鉱石から始めるのはつらいわ」
その上品質も結構高いのよねー、とミミさんは言う。
そうなのか、こんな所に鉄があるなんて……
「さ、これ取って帰りましょう」
「うっす!」
そして俺達は湖沼鉄の元を採取し、臭さを我慢してヒトに戻り、疑似インベントリとしてしまい込んだ。
「あと帰るだけっすね」
「そうねー」
帰りにゾンビは出ることなく、俺達はあっさり町まで帰る事が出来たのだった。
「さぁ、早速作りましょう」
ホームに着いた俺達は、早速炉に火を入れ、その中に湖沼鉄の元を入れた。
湖沼鉄の元はあっさり燃え上がり、多分本来より速い速度で燃えていく。
「この分だと早そうっすねー」
「システムのサポートかしら」
「きっとそうだと思うわ」
そして10分ほどが経過すると、炉の中の火は燃え尽きていき、後には海綿状の鉄塊が残る。
「これ、を鍛えるの。でも今回はちょっとバラバラに崩してみましょ」
「何をするんすか?」
「せっかくマトモな鍛冶設備があるからね。ダマスカス鋼を作ってみたいの」
「あの縞々のやつっすか?おもしろそうっすね!」
そういうことで、ミミさんがやっとこで取り出した鉄を、俺が鏨で切っていく。
バキンバキンと鉄が割れて、こまかな鉄の破片が出来ていった。
「そっちの固まりは残しましょ、鍔を作るのに丁度良いから」
「うっす」
そういって、幾分大きな固まりが残された。
次いで俺達はダマスカスを作るための行程に入る。
「ダマスカスはるつぼで精錬するの。幸い、いろんな器具や材料がそろってるし、完璧な物がつくれそうね」
「備品はこだわっていれてもらったっすからね!」
そしてるつぼの中に鉄片を詰め込む。
「この後石灰を入れて、ガラスも入れるの」
「うっす。石灰ならあるっす。ガラスは……」
「ねえ、あのドラゴンの鱗を使ってみたらどう?丁度ガラス質じゃない」
ずっと黙ってみていたメイが口を開く。
「さすがにガラスみたいになるかどうかは……」
「良いじゃない。ガラスと一緒に混合してみましょ」
「それならいいっすね」
そしてるつぼに常備されていた石灰を入れ、ガラス片とドラゴンの鱗を入れ、ふたをし粘土で固定した。
次いで炉の中にたくさんの炭を入れ、加熱していく。
るつぼを炭の中に入れ、あとは溶けてダマスカス鋼になるのを待つだけだ。
「良い感じに火が燃えてるわねー。あ、炭入れて頂戴」
「うっす」
俺は炭を追加し、炎の具合を見る。
システムのサポートfが働いているなら、そう長い時間は掛からないだろう。
「もう良いんじゃない?」
「そっすね」
おそらく中では鋼が溶けてダマスカスになっているだろう。
やっとこでるつぼを取り出し、金槌でるつぼを叩いて割る。
すると円筒形の真っ赤に焼けた金属が出てきた。
先端にひっついたノロを叩き落とすと、完全な鋼になる。
「成功ね。鱗も全部溶けてるみたい」
「そうっすね。嬉しいなぁ」
「このまま鍛造するの?」
メイは疑問に口を差し挟む。
「そうすね、せっかくだし、鋼は火を入れる回数が少ない程いいんっすよね」
「そうねー、今すぐ鍛造しましょうか。じゃあケンとダイスケを呼んでもいいかしら」
「うっす!」
そしてフレンド通信で先輩達を呼び、来るまでにおれたちの鍛造を始める事にした。
フレンド通信の結果、彼らは町に居るらしい。すぐに来れそうだ。
「ねぇ、せっかくだから日本刀型にしたら?」
「良い考えっすね。ミミさん、出来るっすか?」
そういえば古刀の日本刀は素延べで作られた物も多かったはずだ。
「やったこと無いけどやりましょ!チャレンジは大事だわ!」
「うっす!」
俺は先手用の金槌を持ち、相槌を務めるミミさんに合わせて槌を振るう。
「ドッセイ!!ウリャァッ!!テリャァアアアッ!!」
ガン、ガンと鋼が打たれ、徐々にその姿を伸ばしていく。
「おーい、入るぞ」
そのとき、先輩とダイスケさんが来た。
「先輩!急いで先手に回ってくださいっす!」
「おう、なんだか急いでるみたいだな!」
「うむ!」
そして二人は先手用の金槌を持ち、鍛造に加わってくれた。
カン、ガンギンゴン!カン、ガンギンゴン!俺達四人のリズムは鉄をどんどん延ばしていく。
「この鋼は日本刀にするっす!力を込めて!」
「ウォオォオ!!」
「チェリャァアア!!」
そしてみるみるそのすがたを変えていく鋼にをふたタブ補脳にれて焼き、鏨をいれて折り返し鍛錬をする。
半分に折れ曲がるように切り込みを入れた鋼に、藁灰と硼砂をふりかけ、曲げて鍛錬を繰り返す。
「折り返しは2回で十分っす!」
「おう!」
「了解した!」
そして折り換えされ、強靱な鋼となったそれを、ミミさんの指示に合わせて打ちまくる。
的確な相槌の効果によりどんどん日本刀の形になっていく!
「行けるっす!」
そして鋼は最終的に日本刀の形になった!
「次は整形っすね!」
「そうだな」
そしてミミさんが回転砥石を使ってざっくり刀の形だったものを、きれいに刀の形に仕上げていった。
「後は焼き入れして、焼き鈍ませば終わりね」
「うっす!」
焼き入れは俺がする事になった。
まず刃紋を作るため、刃の上に焼き刃土、粘土を塗っていく。
全体に塗り、そして刃紋の形に粘土を薄くしたらこれで完成だ。
あとは炉であぶって乾かす。
幸い、粘土は剥がれる事なく、きれいに付いていた。
「いけるっす!」
「じゃあ私が鞴を動かすわね。これは気を遣うんだから」
「お願いするっす」
そして炉の炎がゆっくりと燃え上がり、俺はそこに刀身を差し込んだ!、
赤く熱されて行く刀身を眺めながら、最適な温度を見極める。
夕日のような赤に染まったとき、ミミさんが叫んだ。
「今よ!」
「うっす!」
ジュウウウウ!
刀身は湯につけられ、一瞬にして冷えた。
そしてまだ熱が残っている内に引き上げると、俺は刀身をしばらくさました。
「出来たか?」
「多分大丈夫っすよ。目に見えるひびや割れは無いっす!」
「よーし」
そしてしばらく待ち、炭が熾火になったところで、刀身をまた炉に入れた。
熾火の下に入れて、140℃から150℃を維持するのを忘れない。
このまま熾火を続け、しばらく立ったら引き上げる。
きっとこの作業にもシステムのサポートが働き、短くなっているはずだ。
「出来たー?」
「ばっちりっす!」
そして鍛冶研ぎ。これでやっとこの剣が成功作か解る。
「いくわよぉ……」
回転砥石を使いミミさんが刀身を磨くと、傷もない見事な刀身が浮かび上がった。
研ぎ師は居ないのでそのままミミさんがきれいに刃を付けていくと、見事な刃紋が浮かび上がる。
鋼には美しい流れ紋が浮かび、鋼は鱗のせいかどことなく赤っぽい。
「「「おおー」」」
「うむ」
一同感嘆の声を上げる。
後はろくろで目釘穴を開け、銘を切るだけだ。
「んじゃやるわよー」
そういってミミさんは中子に穴を開け、銘を切ろうとする」
「銘は何が良い?」
「んー。赤いドラゴンの鱗が入ってるから赤竜にするっす!」
「りょうかーい」
そしてミミさんがヤニ台に中子を固定し、銘を切る。これで刀身は完成だ!
「出来たわ!」
「後は鍔作って柄と鞘を作るだけっすね!」
そして俺は柄を作り、ミミさんは鍔を作って白木のシンプルな鞘を作った。
「柄に鮫川は望むべくもないっすねー。
だから俺は柄に皮を巻き、さらに革ひもで柄巻を作っていく。
「金具も無いんすよねー」
だから俺は柄巻を結ぶだけにした。これでも結構行けるだろう。
そうして日本刀は完成したのだった。
「出来たっす!」
「出来たわね。試し切りにでも行く?」
「そうっすねー……いっそ西のストーンゴーレムでも切ってみるっす!」
「……折れない?」
「大丈夫っす!……きっと」
そして俺達は西に向かったのだった。
西の荒野に着いた俺達は、首尾良くストーンゴーレムを見つけた。
『ゴッ!』
そして俺は刀を抜き、正眼に構える。
ピタッ、良い感触。
これなら切れる――強い確信が俺の中にあった。
そして緩慢に殴りかかってくるストーンゴーレムに対し、俺は渾身の力でそれを迎撃した。
「チェイヤァァッッ!!」
ズンッ!! ガコン!
「えっ!」
『ゴッ!?』
ストーンゴーレムの腕が一撃で落ちる。
思った以上の切れ味に、俺はさすがに驚いた。
だが止まっている場合ではない。
俺は逆袈裟に斬りかかり、ストーンゴーレムを両断した!
『ゴーッ!!』
そして地面に落ちたストーンゴーレムの頭部に突きを入れる。
刀はあっさり刺さり、ストーンゴーレムは動かなくなった。
「すごーい!」
メイが驚嘆の声を上げる。
他のみんなもそれなりに驚いていた。
「すばらしい切れ味だな」
「さっすが私の自信作!」
「うむ」
そして俺達は町に帰り、俺はログアウトした。




