20
町に着いた俺達は、まずクエストの成功を報告しに冒険者ギルドに向かう。
「あっさり終わってよかったっすね」
「そうねぇ」
「うむ」
そしてギルドに付いた俺達は、ギルドの扉を開けておっちゃんに話しかけた。
「クエスト終わったっすー、証拠いるっすか?」
「不要です。クエストは成功しました」
「わかるんすねー」
「はい」
「良かったわね」
「うっす」
「報酬の2000Gががあります。口座に入れておきますか?」
「うっす!俺とメイで1000Gずつわけて入れてくれっす!」
「かしこまりました」
そうして俺達のクエストは終わったのだった。
次いで、ダイスケさんが横から声を掛けてきた。
「おい、俺のクエストは錬金術師に納品するまでがクエストらしい」
付いてくるか、と言われ、俺は行くっすと答えた。
メイも異存が無いらしく、俺達は錬金術師の所に行くことになった。
そして南西ブロックに付いた俺達は、ダイスケさんの案内で無事錬金術師さんの所についた。
『エミリア錬金工房』と看板があるので間違いない。
「ごめんくださーい」
俺はドアをノックして中に呼びかけた。
「はーい」
しばらくすると黒髪を三つ編みにした眼鏡の女性が現れる。
この人がエミリアさんだろうか。
「あの、錬金術について聞きにきたんっす」
「俺はクエストの納品に来た」
「はい、トロールの脂肪とトレントの実ですね?」
「うむ」
「そっちの二人は見学ですねー。あ、私がエミリアです」
「そっす」
「お願い出来るかしら」
「構いませんよー」
そして俺達は中に入る。
中には巨大な魔法陣が床にかかれた空間が広がっていた。
所々に実験器具とおぼしき物がある。
「錬金術と言ってもー、だいたいは魔法陣で合成するだけなんですよねー」
「そんな簡単なんすか?」
「簡単といえば簡単、難しくすれば難しいですよー」
「じゃあ回復ポーションとか作れるっすか?」
「そういうのは無理ですねー、回復する薬草なんかはあるんですけどー」
「ああ、それなら持ってるっす。残念すね」
「回復遅いですからねー」
「ところで具体的には何が出来るの?」
「スピリットの力を籠めたりー、モンスターの力を込めたり出来ますー」
「じゃあこんなのの力を込めたり出来るんすか?」
俺はヌエになり、小さな電撃を料trの内で走らせた
「それなら雷撃発射とか雷撃耐性とかを物品につけれますねー。あとソウルなんかを入れることも出来ますよー」
ソウル、と聞いて俺は思い出した。
ヒト・ソウルとか入れられないだろうか。なんかレアそうだし。
「エミリアさん、ヒト・ソウルとか使えますか?」
「おーレアものですねー、ヒト・ソウルはヒトに変身する効果がありますよー」
なんだ、レアな割に使いにくい効果だな。
「でもそのくらいにしか使い道ないんですよねー」
「スピリットの合成にはつかえないんですか?」
エミリアさんはしばしあぼにてを当てて熟考したのち、顔をあげた。
「私の知るかぎりー。聞いたことありませんねー」
「じゃああるいみレアって事だし、作ってみるっす」
「土台の首飾りは7Gよー」
といって出されたのは粗末な銀の首飾りだった。
これでいいのだろうか?
「大丈夫なんすか?」
「大丈夫ですよー、この魔法陣の真ん中に来てください」
「はい。あ、7Gっす」
「ありがとうございますー。ではスピリットの合成と同じ感じでソウルをだしてくさいー。」
「ういっす」
精神を集中し、スピリットを作る時を思い出す。
すると魔法陣が光り、胸から光球が出てくる。
そして光球は首飾りに吸い込まれ、それっきり魔法陣は光を発しなくなった。
「出来たっすね!」
「試しにかけてみてくださいー。変身できないはずですー」
「うっす」
俺は首飾りをかけ、変身を試みる。
……変わらない。
しかしこれなんに使うんだろう。
PvPかな?
「上手にできましたねー」
「うっす」
「私もやってみたいわ」
メイが進み出て希望を述べる。
「どうぞー」
「ねぇ、複数のソウルって入れられるの?」
「相性が良ければ可能ですねー」
「じゃあ、ビオプラントとフォレストビーは?」
「多分いけますねー」
「よっし!」
「どんな物に入れますかー?」
「腕輪でお願い」
「はーい、5Gでーす」
「はい5G。それじゃ始めるわ」
そしてメイから光球が2つ出て、混じり合い腕輪に入る。
その腕輪を着けたメイはどうかしら、と言った。
「似合ってるっすよ。でも効果はなんっすかね」
「多分私の考えが正しければ……やっぱり!」
すると、腕輪から鞭のような植物が出る。
先端は針が付いており、、きっと麻痺効果があるのだろう。
「おおー,これで戦闘の幅が広がるっすね」
「そうですねー。ところで、私が簡単に教えられる錬金術はこのくらいなんですよー」
「そうなんすか?」
「後はモンスターの部品の精製とかー、複雑な作業があるんでー、パッとは教えられないんですー」
「あー、解ったっす」
「そういえばモンスターの部品、あったわよね」
「あ、ゴーレムの核っすか」
「それなら10Gで買い取るわよー」
「うっす、名残惜しいけど売るっす」
「まいどー」
そしてお金を受け取った俺達はエミリアさんの所から辞去するのだった。
あのあと、少し露店を見たりしてぶらぶらしていた俺達は、噴水の広場に来ていた。
「今日はもう終わりにするっすかねー」
「そうね、もういい時間だろうし」
「うむ。俺はここで別れる」
そういってダイスケさんが噴水の広場を出て行くと、俺達はゲームからログアウトしたのだった。
「しっかし今日は濃い一日だったなぁ……」
俺はVRギアを外して呟く。
GMコールで自分の特異性が明らかになったり、ドラゴンに乗ったりしたのだ。
滅多に出来る経験ではないだろう。
そして外を見るともう夜だった。
心地よい疲労感に包まれていた俺は、そのまま眠る事にした。
夢を見た。
夢の中の俺は、自分がドラゴニュートに変身していた。
そして目の前には、もう一体のドラゴニュートがいる。
そいつが右手をこちらに差し出すと……
ビキッと不吉な音が響いた。
――こいつは倒さなくては行けない。
俺は本能的にそれを感じ取り、剣を抜いて構えた――
夢はそこで終わった。
次の日の朝。
俺は剣道部の朝練に出ていた。
「先輩、俺昨日大きなドラゴンに乗せてもらったんすよ」
「マジかよ。いいなぁ、俺も乗りたかった」
「ドラゴンはこっちを味方と認識してるようだしいつか乗れるっすよ」
「おう、さて、ここからは剣道の時間だ」
「うっす!」
そして互いに一礼し、蹲踞して竹刀を構える。
「イヤァァッ!」
まず先手、俺の袈裟切りが先輩を襲う。
しかし相手ても然る者、あっさり竹刀で受け止められてしまう。
が、俺はそこから竹刀の縁をくるりと巻いて、、相手の面をねらって突き切りを敢行する。
「チェイッ!」
相手の竹刀を鍔で受け止めながらの一撃は先輩が体を開くことによって回避された。
そして先輩はやおらバックステップすると、次いでものすごい早さで突きを入れてきた。
「ヤッ!!」
だが見える!
俺は先輩の剣を払うと、腰を低くして剣を薙いだ。
「チェェェッ!!」
しかし先輩の動きは流石だった。
とっさに先端を重心に手元の横にずらし、刃根本で俺の剣を弾く。
「ツキィィィィ!!」
そしてそのまま俺は顔に一撃を入れられ、試合は俺の負けになった。
「「あざっした!」」
次いで俺達は試合場端に戻った。
「大分腕を上げたな」
「そうっすかね、先輩に比べればまだまだっすよ」
「ハハハ、だが、俺のモン期にはしていられんな」
そして俺の朝練は過ぎていったのだった。
時間通りにログインすると、噴水前広場でメイと合流する。
「今日は何するの?」
「とりあえずホームに行ってみるっす」
そういって俺達は移動をはじめた。
するとホームの前にミミさんが立っていた。
「おっ、帰ってきたね」
「ミミさん、どうしたんすか?」
「この前私の鉄の秘密教えるっていったじゃん」
「ああ、そのことっすか?」
「今から時間空いてる?すぐに行こうと思うんだけど」
「空いてるっす。メイも空いてるっすよね?」
「ええ」
「良かったわ。これでキミの家の炉を使わせて貰えるわね!
「ああ、そんなことっすか。おやすいご用っす」
でもどこに行くんすか?と聞いたら、草原の向こうの沼地よ、と答えてくれた。
「あんな所に鉄があるんか?」
「ふふふーあるのよねー湖沼鉄ってのが」
「ふーん」
メイも興味深げだ。
俺にとっても興味深い。あそこはゾンビになれるだけじゃなったのか。
そして俺達は沼に行くことになったのだった。
草原を通るがソコラビットはもう敵ではない。
メイが一蹴りするだけで絶命し、俺の抜き打ちで真っ二つになる。
ミミさんは虎に変身して噛み殺していた。
すいすいと草原を抜けると、5日前に入った事のある臭い沼地に着いた。
ほんと臭いな……
「くっさいわねー」
「そこは我慢するしかないわよ。湖沼鉄があるのは奥の方だから、ちゃっちゃと行って取って帰りましょ」
「うっす。あ、そうだ」
「何?」
「メイもゾンビスピリットを手に入れてみないっすか?ゾンビなら臭くないっすよ」
「あー……見た目的には嫌だけど、良い考えね」
「ただし痛いわよ。あとすごく臭い」
「たしか、死んでから沼に沈められるんだっけ?」
「そうっす。俺も先輩にやられたっす」
「ちょっと迷うところがあるけど……やってもらおうかしら」
その決断をするくらい、ここは臭い。
そしてヒトに戻ったメイは、持ち物を全部置き、身を開いて俺の攻撃を待った。
「い、痛くしないでね」
「瞬殺してあげるっす」
そういって俺は剣を抜き、メイに正眼に構える。
「やだこれ怖い……建機ってこんな感覚かしら」
「鍛えればそれがはっきりわかるようになるっすよ。やるっすか」
「とりあえず遠慮しておくわ。武術バカにはなりたくないし」
そしてメイはハーッと息を吐く。
俺はその隙をついて心臓に突きをえぐりこんだ!
「え、ちょま……」
そしてメイはどぼんと沼に落ちた。
「くっさぁーーーー!」
ゾンビになったメイが沼から上がってくる。
うんうん、あの臭さはちょっと耐え難い。
「って臭くないわね……」
「ゾンビは嗅覚ないっすからねー」
「便利ね、痛覚も無いんでしょ?」
メイは口の端死からごぽりと粘液を吐きながら言う。
「そっす、だから自分は緊急回避に使ってるっす」
「あー、それ便利そうねー」
「それはともかく、湖沼鉄を探しに行くわよ。あ、モンスターだけど、ここにはゾンビが出るからね」
「はーい」
「うっす」
その言葉を聞いて俺は剣をゾンビで装備した。
そして俺達は沼の探索に出かけるのだった。




