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メンバーの一人、夢子(ゆめこ)がグループのみんなを集めたのは、ライブが終わったあとの更衣室だった。

誰も口を開かない。

汗で乱れた髪を整えながら、夢子は少しだけ笑って言った。


「私、今日でアイドル辞めることにした」

その一言で、部屋の空気が静まり返る。


「……そんな」


最初に声を漏らしたのは私だった。

聞き間違いだと思いたかった。


「急すぎるよ……」


「ごめん。でも、決めたの」

夢子は申し訳なさそうに笑う。


「もう限界なの。親にも反対されてるし、このまま続けても……本当にごめん」


誰も責められなかった。

夢子だけじゃない。

みんな心のどこかで、一度は同じことを考えたことがある。


活動を始めて半年。

客席は相変わらず二人。

ライブをするたびに赤字。

学校とレッスンの毎日。

それでも夢だけを信じて走り続けてきた。


「みんな、今までありがとう」

夢子は深く頭を下げた。


私は涙をこらえる。


「……うん。夢子、今までいっぱい…ありがとう。本当に…」


夢子と笑顔で別れた。

その帰り道、一人になると涙が止まらなかった。

このグループは、本当に終わってしまうのかもしれない。





__数日後。


私は学校帰りに駅前を歩いていた。

信号待ちをしていると、一人の男性が目に入る。

思わず息をのんだ。


肩まで伸びた金髪。

すらりとしたモデルのような体。

整いすぎている顔立ち。

スーツを着てただ歩いているだけなのに、周囲の景色まで絵になる。


……かっこいい。

一瞬で心を奪われた。

こんなの、一目惚れじゃん。

気づけば私は、その男性のあとを歩いていた。


もちろん、話しかける勇気なんてない。

少し離れた距離を保ちながら、ただ背中を見つめるだけ。

我ながら最低だと思う。

でも、足が止まらなかった。


男性は繁華街へ入っていく。

ネオンが輝く店の前で立ち止まると、慣れた様子で店内に入っていった。

私は店の看板を見上げる。

そこに書かれていた文字を見て、思わず固まった。


『CLUB ARES』


「ここって……ホストクラブ?」


私は何度も看板を見返した。

あの人……ホストだったんだ。





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