染まっていく
「気づいたら、社会人歴よりパパ活歴の方が長くなっていた」
25歳になって、ふと思った。
社会人歴より、パパ活していた期間の方が長い。
その事実に気づいたとき、自分でも少し笑った。
いや、笑うしかなかった。
小さい頃に思い描いていた25歳は、こんなんじゃなかった。
ちゃんと働いて、ちゃんと恋愛して、休みの日は友達とカフェに行って、少し高い化粧品を買って「大人になったな」って思ってるはずだった。
少なくとも、「今月あと何回会えば家賃になるか」を計算するような人生ではなかった。
でも不思議なことに、最初からこうなりたかったわけじゃない。
「パパ活女子になろう」
そんな大層な決意なんて一度もしていない。
気づいたらここにいた。
多分それが一番正しい。
私の人生って、昔からそうだった。
自分の意思で選んだつもりでも、あとから振り返ると「そうなるしかなかった」って思うことばかりだった。
──最初は、本当に軽かった。
たしか「暇つぶし」だったと思う。
好奇心。
半分は人間観察。
半分は「どんな人いるんだろ」くらい。
あと、少しだけ。
本当に少しだけ、お金。
でも当時の私は「お金のため」って認めたくなかった。
なんか負けた気がして。
だから「面白そうだから」って言ってた。
「人間観察」
「ネタ」
「別にガチじゃない」
そういう言葉でずっと包んでた。
今思うと、自分に言い訳してたんだと思う。
だって怖かったから。
「普通」から外れるのが。
女の子同士の会話では「やばくない?」「無理」「私なら絶対できない」って言われる側になるのが。
でも、そのくせ私は昔から少しだけ変だった。
普通の恋愛も、普通の人生も、普通の会話も、なぜか途中で飽きてしまう。
優しいだけの人は物足りなくて、少し狂ってたり、少し危なかったり、どこか歪んでる人の方が気になった。
たぶん私は、人を見るのが好きだった。
人間の「表」じゃなくて、「崩れる瞬間」が好きだった。
だから最初は観察だった。
本当に。
でも観察していたつもりだったのに、気づいたら観察される側になってた。
値段をつけられる側。
年齢とか、見た目とか、愛想とか、返信速度とか。
そういうので自分の価値が決まる世界だった。
最初は平気だった。
むしろ楽しかった。
こんな世界あるんだ、って。
でも少しずつ、おかしくなった。
人に褒められても嬉しくなくなった。
「可愛いね」
「癒される」
「若いね」
言われるたびに、心のどこかで金額に変換してる自分がいた。
この人は何円出す人だろう。
この人は食事だけかな。
この人は嘘ついてそう。
普通の恋愛みたいな顔して近づいてくる人ほど、逆に怖かった。
気づいたら、人を信じるより先に分析する癖がついていた。
昔の私は、こんなんだったっけ。
…いや。
元からそうだったのかもしれない。
ただ、ここではその能力が生きただけで。
人の顔色を見るのも。
空気読むのも。
相手が何考えてるか先回りするのも。
全部、生きるための技術になっただけだった。
でも、たまに思う。
どこからだったんだろう。
どのタイミングで戻れなくなったんだろうって。
最初の一回?
お金を受け取った日?
それとも、「これ楽かも」って思った瞬間?
わからない。
でも一つだけ分かる。
人生って、壊れる時は音しない。
静かにズレる。
本当に少しずつ。
気づかないくらい少しずつ。
そしてある日突然、
「あれ?」
って思う。
社会人歴より、パパ活歴の方が長い。
…そこで初めて、自分の人生を振り返る。
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