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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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90/103

第90話「神の取引」

第90話です。


戦いの後、王座の間で語られる過去。


これまで断片的だった出来事が、

ひとつの流れとして繋がり始めます。


そして見えてくる、“神”の存在。


静かな回ですが、物語の大きな転換点になります。


ぜひ最後までお読みください。

王座の間は静まり返っていた。


 先ほどまでの戦いが嘘のように、音が消えている。


 倒れていた騎士たちはすでに排除され、広い空間には悠真たちと王、そしてヴァルクだけが残っていた。


 玉座の前で、王は座らされている。


 意識は戻っているが、まだ完全ではない。


「……何が……起きている……」


 かすれた声が、静かな空間になった。


 ローディアスが一歩前に出る。


「陛下、ご無事で……」


 その声には抑えきれない感情が滲んでいた。


 王はゆっくりと周囲を見回す。


 状況を理解しようとしているが、すぐには追いつかない様子だった。


 その少し離れた場所で、ヴァルクが立たされている。


 喉元にはレオンの剣。


 わずかでも動けば命はない距離だった。


 ヴァルクの身体が、ほんのわずかに揺れる。


 逃げるか、抗うか。


 その迷いが見えた瞬間、レオンの剣がさらに深く押し込まれた。


「……やめておけ」


 低い声が響く。


「次は、止めない」


 静かな言葉だったが、その中に確かな死があった。


 ヴァルクの動きが止まる。


 理解したのだ。


 ここで逆らえば終わる。


 ゆっくりと力を抜く。


「……わかった」


 小さく言う。


「やめてくれ……全部、話す」


 視線を落としたまま、そう続けた。


 悠真が一歩前に出る。


「王はまだ話すのは無理そうだな」


 横目で確認する。


 王はまだ混乱している。


「……聞くのはお前からでいい」


 視線をヴァルクへ向ける。


「話してもらおうか」


 短く言った。


 ヴァルクはしばらく黙っていた。


 呼吸を整え、覚悟を決めるように目を閉じる。


 そしてゆっくりと口を開いた。


「……あれは、一年前だ」


 玉座へ一度視線を向ける。


「王が不在の時だった。この部屋に入った」


 誰もいないはずの場所だった。


 だが。


「……声が聞こえた」


 一瞬、間を置く。


「最初は何を言っているのかわからなかった。ただの雑音のように聞こえた」


 だが、近づくと違った。


「カエルの置物があった。今は私の屋敷に置いてある」


 悠真が眉をひそめる。


「カエル?」


「ああ。そして耳を近づけた」


 そして、はっきりと聞こえた。


「――おい、王よ。話を聞け」


 静寂が落ちる。


「私は答えた。私は王ではない、と」


 すると声が返ってきた。


「そうか」


 その直後だった。


「我は十二神の一柱――モーガント」


 空気が重くなる。


 名前だけで、場が沈むような感覚。


「六十年……奴は我を無視し続けている」


 淡々とした声だった。


「神々の国は食料難でな。とにかく食料を送れ」


 それだけの話だった。


 だが、その続きがあった。


「代わりに、望むものを与える」


 ヴァルクは目を伏せる。


「……私は言った。王の座が欲しい」


 短い沈黙。


「そうか。容易い」


 軽く返された。


「まずは食料を集めろ。指定した場所へ持って来るがいい」


 ヴァルクはゆっくりと続ける。


「言われた通り、私は向かった」


 一拍。


「指定された場所に」


 そして。


「そこが……王家の祭壇だった」


 悠真の中で、いくつかの点が繋がる。


 ヴァルクは続ける。


「だが問題があった。祭壇では、あれらを送り出せない」


「だから言われた。場所を用意しろと。誰にも見つからない場所を」


 わずかに視線が揺れる。


「……ロペに相談した」


 空気が変わる。


「ロペか」


「ああ」


 ヴァルクは頷く。


「奴はすぐに言った。うちの館を使えばいい、と」


 リズが小さく息を吐く。


「……あいつらしいわね」


「金さえ出せばな、という条件付きだ」


 ヴァルクは続ける。


「食料も奴が集めた。商人と通じていてな。大量に動かすには都合がよかった」


 だが。


「……そこからだ」


 空気が変わる。


「おかしくなったのは」


 言葉が重くなる。


「祭壇と繋がった影響で、館は侵食された」


 悠真が静かに言う。


「異空間か」


 ヴァルクは頷く。


「私の指示じゃない。勝手に現れた」


 そして。


「そこに現れたのが……天使と呼ばれるものだ」


 ローディアスが低く言う。


「あれは人ではなかった」


「そうだな。だが、完全な個体ではない」


 ヴァルクの声が少し変わる。


「神に試されている存在だった」


 空気が張り詰める。


「三つの段階がある」


「一つ目は……堕天使になりかけている弱い個体」


「二つ目は違う。確実に食料を回収するための強い個体だ」


 悠真が小さく息を吐く。


「……だから誰も勝てなかったのか」


 ヴァルクは頷く。


「挑んだ者は、全てそこで止まる。先には進めない」


 一拍。


「私は王座についた時の守りを固めるため、自分の騎士団を作る考えだった」


 だが。


「……結局、何も得られなかった」


 沈黙。


「代わりに与えられたのが、神にとって不要になった堕天使たちだ」


「人の姿に変えられたものたち」


 ローディアスの表情が変わる。


「……あの騎士たちか」


 ヴァルクは頷く。


「私は勘違いしていた。“与えられた”のだと」


 一拍。


「支配下カードと共に」


 視線が落ちる。


「だが違った」


「押し付けられただけだ」


 静寂が場を包む。


 悠真がゆっくりと歩み寄る。


「……で?」


 一歩。


「その結果がこれか」


 ヴァルクは答えない。


 ただ目を伏せるだけだった。


 悠真は小さく息を吐く。


「……神、か」


 その一言が、静かに落ちた。

第90話を読んでいただきありがとうございます。


今回はヴァルクの口から、

神との契約とその裏側を描きました。


ロペの館で起きていたこと、

天使たちの正体、そして支配の仕組み。


すべてが少しずつ繋がってきた形になります。


まだ全てが明かされたわけではありませんが、

ここから一気に核心へと近づいていきます。


次回もよろしくお願いします。

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