表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
88/101

第88話「選ばれしもの」

第88話です。


王との対面の先で、

思いもよらないものが現れます。


これまで積み重ねてきた違和感が、

少しずつ形になり始める回でもあります。


そして、新たな存在との邂逅。


ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

王の剣が振り下ろされる、その直前だった。


 レオンが踏み込む。


 床を蹴る音が遅れて響くほどの速さで間合いを詰め、そのまま王の懐へと滑り込んだ。


 振るったのは刃ではない。


 柄の方だ。


 顎を正確に打ち上げる。


 鈍い音が響き、王の身体が大きく揺れた。


 そのまま崩れ落ちる。


 静寂。


「……終わったか?」


 悠真が息を吐く。


 だが、レオンは首を横に振った。


「いや」


 視線は王に向けたまま。


「意識は落ちている。だが――」


 その時。


 王の指先が、ぴくりと動いた。


 ほんのわずか。


 だが、それで十分だった。


「……おい」


 悠真が眉をひそめる。


「気絶してるんだよな?」


「している」


 レオンは短く答える。


「だが、普通じゃないな」


 ローディアスがゆっくりと膝をつく。


「……陛下」


 呼びかける。


 返事はない。


 呼吸だけが、かろうじてある。


 ローディアスは静かに立ち上がった。


 何も言わない。


 だが、その沈黙が重かった。


 悠真は視線を外す。


 その時だった。


「……ん?」


 玉座の側面に違和感があった。


 小さな突起がある。


 装飾にしては妙に浮いている。


 近づいてみる。


「なんだこれ」


 押してみる。


 カチ、と小さな音。


 次の瞬間。


 玉座が音もなく横へと動き始めた。


「え?」


 リズが声を上げる。


「ちょっと、何したのよ」


「いや、押しただけなんだけど……」


 ずれていく玉座。


 その下から現れたのは、暗い穴。


 地下へと続く階段だった。


 冷たい空気が流れ出る。


 悠真が覗き込む。


 何も見えないな。


「……真っ暗だ」


 一拍。


「灯りが欲しいな」


「それなら任せて」


 ララが前に出る。


 手をかざす。


「――ルクス」


 淡い光が生まれた。


 ふわりと浮かび、周囲を照らす。


 階段の輪郭が浮かび上がる。


「……助かる」


 悠真はそのまま足を踏み入れた。



 階段を降りる。


 一段ごとに、空気が重くなる。


 冷たい。


 音が吸い込まれていくような静けさ。


 やがて、通路が開けた。


 広い空間。


 壁際には財宝が並んでいる。


 だが、どれも目を引かない。


 ただそこにあるだけの“物”。


「……なんなんだここ」


 リズが呟く。


「宝物庫、っぽいけど……なんか違うわね」


「そうかな」


 悠真は短く答える。


 視線は、その奥に向いていた。


 三つ綺麗に並んでる。


 鎧。


 盾。


 剣。


 それだけが、そこにある。


 だが、不思議な空気をまとっている。


 近づくだけで張り詰める。


 ローディアスが手を伸ばす。


 触れてみる。


 弾かれる。


「……っ!」


 一歩引く。


「なんだ、今の……」


 もう一度。


 だが同じ。


 触れられない。


 レオンも試す。


 同じ結果。


 沈黙。


 悠真が息を吐く。


「……触れないのか」


 一歩前へ。


「どんな感じ」


「無駄だ」


 ローディアスが言う。


 だが悠真は肩をすくめる。


「ダメ元で」


 手を伸ばす。


 触れる。


 何も起きない。


「……あれ?」


 弾かれない。


 そのまま掴めた。


「なんで……」


 リズの声が変わる。


 悠真は剣を軽く持ち上げる。


「普通に持てるぞ?」


 少し考える。


「じゃあ……これも着れるのか?」


 半分冗談。


 鎧を当てる。


 自然に馴染む。


 盾を持つ。


 腕に収まる。


 剣を握る。


 違和感がない。


 むしろ――しっくりくる。


「……なんだこれ」


 思わず笑う。


「これ、俺専用なんじゃないの?」


 その瞬間だった。


「――おかしいな」


 低い声。


 一瞬遅れて、全員が振り向く。


 そこに、知らない男が立っていた。


 気配はなかった。


 まったく感じなかった。


 ただ、そこにいる。


 リズが息を呑む。


「……いつの間に」


 男の視線は、悠真に向いていた。


 その装備に。


「……それは“三種の神器”だ」


 静かに言う。


「王家の血を継ぐ者しか、触れることすらできないはずだが」


 一歩、踏み出す。


 視線が突き刺さる。


「……お前は何者だ」


 一拍。


 悠真は肩をすくめた。


「……お前の方こそ、誰だ」


 空気が揺れる。


 男の口元がわずかに歪む。


「名乗るほどでもないが」


 一拍。


「ヴァルク・レイドル。これから王になる男だ」


 その名前が落ちる。


 空気が張り詰める。


 レオンが構えを低くする。


 リズの指に力が入る。


 ローディアスは睨みつける。


 ヴァルクの視線が、神器へ向く。


「どうせお前らは、ここで終わりだ」


 その一言。


 背後の騎士たちが、一斉に動いた。

第88話を読んでいただきありがとうございます。


今回は地下での出来事、

そして三種の神器とヴァルクの登場までを描きました。


ここから一気に物語の核心へと近づいていきます。


悠真に起きていることは何なのか。

王宮の異変とどう繋がるのか。


まだ明かされていない部分も多いですが、

少しずつ見えてくるはずです。


次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ