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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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第82話「空の向こう側」

第82話です。


今回は大きく二つの流れがあります。


ひとつは、ララとリズ。

前話で聞いた“王宮の異変”をどう受け止めるのか。


すぐに答えは出ません。

ただ、無視できない違和感だけが残る――

そんな静かな余韻のパートです。


もうひとつは、悠真たち。


こちらは一転して、

レベルアップカードを使った“成長と検証”の回になります。


なぜ悠真だけが戦えるのか。

このカードはどこまで通用するのか。


その中で、ひとつの“答え”と、

新たな“可能性”が見えてきます。


静と動。

対照的な流れを意識して読んでいただけると嬉しいです。

昨夜のことが、頭から離れなかった。


 ガイオの屋敷の一室。


 朝の光が差し込んでいる。


 だが、空気はどこか重かった。


「……ねえ」


 リズがベッドの上で寝転びながら呟く。


「昨日の話さ」


 一拍。


「どう思う?」


 ララは窓の外を見たまま答えない。


 しばらくして。


「……全部を信じるつもりはないわ」


 静かな声だった。


「でも」


 一度言葉を切る。


「嘘をついているようには見えなかった」


 リズも同じ感想だった。


「だよね」


 軽く言う。


 だが、その表情は軽くない。


「かなり酔っ払ってたけど、話ぶりからして本当っぽいよね」


 ララは小さく頷く。


「そうね」


 一拍。


「少なくとも――」


 ゆっくり言葉を選ぶ。


「王宮が混乱しているのは、間違いなさそうね」


 それ以上は踏み込まない。


 踏み込めば、戻れなくなる気がした。


 リズもそれを感じ取っていた。


「……なんかさ」


 天井を見ながら呟く。


「すごく嫌な予感するよね」


 ララは答えなかった。


 ただ、窓の外を見続ける。


 平和な街。


 何も変わっていないように見える。


 だが――


 確実に、何かがおかしい。


 その確信だけが、残っていた。



 場面は変わる。


 風が吹き荒れる大地。


 果ての見えない裂け目の底。


 その中に広がる、奇妙な世界。


 悠真たちは崖の縁に立っていた。


 下を覗き込めば、黒い影が蠢いている。


 魔物だ。


 空を飛ぶ、鳥型の魔物。


「……あれか」


 悠真が呟く。


 距離はある。


 だが、届かないほどではない。


「やるしかないな」


 レオンが言う。


 短く。


 だが、迷いはない。


 ダービラが腕を組む。


「この状況で機能しているのは、そのカードだけだ」


 視線が悠真に向く。


「つまり、お前頼みだ」


「プレッシャーかけてくるなよ……」


 苦笑する。


 だが、事実だった。


 レオンもローディアスも、スキルカードは発動しない。


 この空間では無効化されている。


 だが――


 悠真のレベルアップカードだけは違う。


「……やるか」


 息を吐く。


 意識を集中する。


 目標は、空を飛ぶ魔物。


 速い。


 かなり。


「……っ」


 タイミングを計る。


 だが――


 当たらない。


 斬撃を放つ。


 空を裂く。


 だが、かすりもしない。


「速すぎだろ……!」


 舌打ちする。


 もう一度。


 放つ。


 外れる。


 さらに外れる。


「落ち着け」


 ダービラの声。


「動きをよく見ろ」


「見てるって……!」


 だが、焦る。


 当たらない。


 それだけで、また焦る。


 深呼吸。


 一度、目を閉じる。


 そして開く。


 よく見る。


 魔物の動き。


 軌道。


 癖。


「……そこだ!」


 斬撃を放つ。


 今度は違う。


 読みが合う。


 直撃。


 魔物が弾ける。


「……よし!」


 息を吐く。


 その瞬間。


 体の奥に何かが流れ込む感覚。


「……来た」


 レベルが上がる。


 3から――4へ。


「どうだ」


 レオンが聞く。


「ちょっと……体が軽くなった」


 すごく動きやすい。


 反応が速い。


「いけるな」


 ローディアスが言う。


 悠真は頷いた。


 再び狙う。


 今度は違う。


 見える。


 動きが。


 斬撃を放つ。


 当たる。


 落ちる。


 また一匹。


 さらに一匹。


 連続して撃破する。


「……慣れてきたな」


 自分でも分かる。


 精度が上がっている。


 体がついてくる。


 やがて――


 再び感覚が来る。


 レベル5。


「スキルは?」


 ダービラが聞く。


「……ないな」


 悠真は首を振る。


「能力は上がってるけど」


「そうか」


 ダービラはそれ以上言わない。


「条件があるのかもしれんな」


「まあ、やるしかないよな」


 悠真は苦笑する。


 もう止まれない。


 ここで止まってられない。


 再び崖下をみる。


 魔物はまだウヨウヨいる。


「行っくぞ」


 相手の動きをよく見て 剣を振り下ろす。


 ひたすら斬撃派。


 撃ち落とす。


 繰り返す。


 ただひたすら。


 数を重ねる。


 動きが研ぎ澄まされていく。


 無駄が消えていく。


 やがて。


 その瞬間が来る。


 体の奥で何かが弾ける。


「……来た」


 レベル6。


 同時に。


 新たな感覚。


「これは……」


 意識する。


 発動。


 次の瞬間。


「うおっ!?」


 体が宙に浮く。


 一気に。


 加速する。


「ちょ、待て待て待て!!」


 止まらない。


 上へ。


 一直線に。


「なんだこれ!?」


 風を切る。


 視界が流れる。


 地面が遠ざかる。


「飛んでる……!?」


 だが制御できてない。


 ただ上へ。


 どこまでも。


 そして。


 雲に突っ込む。


 白い世界。


 一瞬、何も見えなくなる。


 その先。


 突き抜けた。


「――っ」


 視界が開ける。


 空の上。


 そして。


 そこにあった。


 巨大な影。


 浮かぶように構造物。


 光。


 何か。


 理解できない。


 だが――


 確実に“異質”だった。


「……なんだ、あれ」


 言葉が出る。


 だが次の瞬間。


 急速に落ちる。


「うわあああああ!!」


 制御不能。


 そのまま地面へ。


 叩きつけられる寸前でなんとか減速する。


 着地。


 膝をつく。


「はあ……はあ……」


 息が荒い。


「どうした」


 レオンが駆け寄る。


「……上になんかあったんだけど」


 一拍。


「普通じゃない」


 ダービラが目を細める。


「何が見えた」


「わかんない……けど」


 言葉を探す。


 そして。


「すごく大きな構造物?」


 それしか言えない。


 レオンが空を見る。


 見えない。


 だが――


「……そうか」


 小さく呟く。


「何かあるってことか」


 ダービラが静かに言った。


「可能性は一つだな」


 一拍。


「……神々の国かもしれん」


 風が吹く。


 空は、変わらずそこにあった。


 だが。


 その向こうに。


 確実に“何か”がある。


 そう確信させるには、十分だった。

第82話を読んでいただきありがとうございます。


今回のポイントは三つあります。


まず一つ目。

ララたちの“距離感”。


情報は得たものの、

まだ確信には至らない。


「王宮はおかしいかもしれない」


そのレベルに留めています。


ここで断定してしまうと物語が一気に進みすぎるため、

あえて“止めている”状態です。


二つ目。

悠真の成長。


レベル3からスタートし、

試行錯誤しながらレベルを上げていく流れを丁寧に描きました。


特に、

「最初は当たらない → 慣れる → 安定する」

という段階を踏ませることで、

成長の実感が出るようにしています。


そして三つ目。


新スキル「飛行」。


一見すると微妙な能力ですが、

結果として“状況を打開する鍵”になりました。


この作品では、

単純な強さだけでなく、

「使い方によって意味が変わる力」を意識しています。


最後に見えたもの。


あれが何なのかはまだ明言していませんが、

物語の核心に関わる存在になります。


ここから一気に“世界の上層”へと話が広がっていきます。


引き続きよろしくお願いします。

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