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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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81/101

第81話「壊れた夜」

第81話です。


今回は戦闘ではなく、

“日常に見える非日常”を描いた回になります。


ララとリズは、ガイオの屋敷に身を置き、

流れのままに飲み屋で働くことに。


一見すると、少し穏やかな時間。

ですが――


その裏で、確実に“何か”が進んでいます。


今回のポイントは

「違和感」と「崩れた人間の言葉」です。


王宮で何が起きているのか。

そして、その先に繋がる“名前”。


何気ない会話の中に、

重要なヒントを仕込んでいます。


ぜひ、その空気を感じながら読んでいただければと思います。

レオンたちと別れて、数日。


 ララとリズは、ガイオの屋敷の一室を借りていた。


 広い部屋だった。


 必要以上に。


 柔らかなベッドに、整えられた家具。


 窓の外には、夜の街の灯りが広がっている。


 何一つ不自由はない。


 ――だからこそ。


「……落ち着かない」


 ララは小さく呟いた。


 整いすぎている。


 与えられすぎている。


 それが、逆に不安を呼ぶ。


「えー?めっちゃいいじゃん」


 リズはベッドに寝転びながら笑う。


「こんなとこタダで使えるとか最高だよ?」


「……そういう問題じゃないでしょ」


 ララはため息をつく。


 ガイオという男。


 助けられているのは事実だ。


 だが――本音が見えない。


「ま、いいじゃん」


 リズは軽い。


「どうせ今やることないし」


 その通りだった。


 待つしかない。


 それが一番、落ち着かない。


 その時だった。


「ちょうどいいところにいるな」


 ノックもなく扉が開く。


 ガイオだった。


「……ちょっとぉ、ノックしてくださいよ」


「必要か?」


「必要ですって」


 即答だった。


 ガイオは肩をすくめる。


「まあいい」


 一拍。


「君たち、暇だろ?」


「……否定はしません」


 ララが答える。


 リズが起き上がる。


「なに?仕事くれるの?」


 ガイオは軽く笑った。


「最近、新しく店を始めたんだが」


「飲み屋だ」


「いいじゃん!」


 リズが食いつく。


「人手が足りない」


「手伝ってくれないか?」


 軽い誘い。


 だが、断る理由もない。


「……条件は?」


 ララが聞く。


「部屋はそのまま使っていいし、報酬も出す」


「悪い話じゃない」


 確かに。


 悪くない。


 むしろ都合が良すぎる。


「怪しいですね」


 ララが言う。


 ガイオは笑った。


「怪しいと思うならやめればいい」


「強制はしない」


 一拍。


 そして。


「ただ――」


 視線を向ける。


「君たち、かわいいから目立つ」


「看板娘としては優秀だ」


 リズが笑う。


「褒められてる!」


「どうせなら活かした方がいい」


 ララは少し考える。


 ここにいても変わらない。


 なら――


「……期間限定なら、構いません」


「やるやる!」


 リズは即答だった。


「楽しそうじゃん!」


 ガイオは頷く。


「決まりだな」


 一拍。


「期待してるよ」


 その言葉は軽い。


 だが――妙に残った。



 その夜。


 店は、熱に満ちていた。


 扉を開けた瞬間、別の世界になる。


 酒の匂い。


 料理の香り。


 笑い声。


「いらっしゃいませーー!!」


 リズの声が響く。


 それだけで空気が明るくなる。


「はいはい!今日飲む人ー!?」


「飲むに決まってんだろ!」


「よし来た!じゃあまず乾杯だぁ!」


 半ば強引にグラスを持たせる。


「せーの!」


「かんぱーい!」


 笑いが弾ける。


 酒が回る。


 場が動く。


「いいねいいね!そのままもう一杯いこうよ!」


「早いって!」


「遅い方が悪いの!」


 リズは笑いながら酒を注ぐ。


 止まらない。


 明るすぎる。


 ――少しだけ、無理をしている。


「リズ……」


 ララが小さく声をかける。


「ちょっとやりすぎじゃ……」


 リズが振り向く。


 満面の笑み。


「いいじゃん!」


 一拍。


「楽しいんだもん!」


 その言葉に、ララは何も言えなかった。


 止めるべきか。


 だが――止めたらいけないような、そんな空気だった。


 その時。


 カラン、と音が鳴る。


 扉が開く。


「……一杯、もらえるか」


 低い声。


 男が入ってくる。


 足取りは重い。


 だが酔ってはいない様子。


 もっと深い、別の何か。


「いらっしゃいませ!」


 リズが駆け寄る。


 男は無言で座る。


「とりあえず酒を」


「強いやつ」


 酒が運ばれる。


 男はそれを掴み――


 一気に飲み干した。


「……もう一杯」


 間を置かない。


「いいね!そういう人好き!」


 リズが笑う。


 だが男は笑わない。


 ただ飲む。


 また飲む。


 ララは見ていた。


 その手が、わずかに震えている。


 酒じゃない。


 内側から壊れているような。


「……おかわりだ」


 ララが近づく。


「はい」


 静かに酒を注ぐ。


 男がぽつりと呟く。


「……あそこは、もうダメだ」


 ララが顔を上げる。


「……あそこ?」


 男はすぐには答えない。


 グラスを見つめる。


 一口飲む。


 そして。


「……王宮だ。ついこの前までそこで仕えていた」


 低く言った。


 空気が変わる。


「前は普通だったんだ」


「ちゃんと話も通った」


「意見も聞かれた」


 一拍。


「でもな」


 指に力が入る。


「いつからか何を言っても無視される」


「報告しても見ない」


「なのに、ミスだけは拾われる」


 リズの笑顔が消える。


「理由もなく殴られたこともある」


「“気に入らない”ってだけでな」


 空気が冷える。


「命令もおかしい」


 男は笑う。


 崩れた笑い。


「昨日と真逆のことを言う」


「指摘したら処罰だ」


 一拍。


「周りのやつらもな」


「誰もおかしいって言わない」


「……いや、言えないんだ」


 グラスを握る。


 少し震えている。


「目が死んでる」


「感情がない」


 低く吐き出す。


「まるで……人間やめてるみたいだった」


 沈黙。


 店の喧騒が遠くなる。


「王も同じだ」


 男は言う。


「全く話が通じない」


「目を見ても、何も見てないようだった」


 ララの背筋が冷える。


「だから逃げ出した」


 一拍。


「正気でいられる場所じゃない」


 グラスを置く。


 音が響く。


 そして。


「……ロペ」


 その名前が落ちた瞬間。


 ララの手が、わずかに止まる。


 ほんの一瞬。


 だが――


 男は見逃さなかった。


「……今の反応」


 低く呟く。


 ララの呼吸が乱れる。


 男はゆっくり笑った。


「知ってるな」


 一拍。


「そういう顔だ」


 視線が絡む。


 逃げ場がない。


 男は息を吐く。


「……やっぱりな」


 そして、言った。


「もう終わってる、この国」


 その言葉だけが、静かに残った。


 笑い声の中で。


 消えずに。

第81話を読んでいただきありがとうございます。


今回は大きく三つの要素があります。


まず一つ目。

リズの明るさ。


ただ楽しいだけではなく、

少し無理をしている“強さ”として描いています。


ララとの対比も含めて、

今後の感情の動きに繋がる部分です。


二つ目。

王宮の異変。


今回はあえて抽象ではなく、

「無視される」「理不尽な暴力」「矛盾した命令」など、

具体的な違和感として描きました。


これによって、

単なる腐敗ではない“異常さ”が見えてきます。


そして三つ目。

「ロペ」という名前。


ここが今回の一番のフックです。


偶然ではなく、

確実に“繋がっている”ものとして描いています。


この先、

点だったものが線になっていく流れに入っていきます。


静かな回ですが、

物語としてはかなり重要な位置にあります。


引き続きよろしくお願いします。

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