第8話 資金と現実と、その先
第8話です。
今回は、異世界での素材集めと、
それを現代で換金する流れを描いています。
「価値の違い」を利用した稼ぎ方が、
いよいよ本格的に動き出します。
異世界に戻った悠真は、すぐにリズと外へ出た。
「で、どこ探すの?」
リズが聞く。
悠真は少し考えてから言った。
「金だな」
「金?」
「こっちで価値低いなら、あっちで高く売れる」
リズは少しだけ考えて、頷いた。
「それなら、川」
「川?」
「砂金なら取れる場所ある」
「……マジか」
悠真は思わず笑った。
「行こう」
二人で街を出る。
しばらく歩くと、小さな川に出た。
水は透き通っていて、底が見える。
「ここ」
リズが言う。
「たまに取れる」
悠真はしゃがみ込む。
水の中を覗く。
正直、よく分からない。
「……これで分かるのか?」
「慣れればね」
リズは手慣れた様子で砂をすくい、水で流す。
残った中に、わずかに光るものがあった。
「……あれか」
「そう」
悠真も真似してみる。
最初は全然分からない。
だが、何度かやるうちに、少しずつ感覚が掴めてくる。
「……あった」
小さな粒。
それでも確かに光っている。
「これ、金か」
「うん」
悠真はそれを見つめる。
こんな小さなものが、金になる。
そう考えると少し不思議だった。
「……地味だな」
「こういうのは地道」
リズが言う。
「でも、数集めれば大きい」
その通りだった。
二人はひたすら砂をすくい続ける。
時間の感覚がだんだん曖昧になる。
朝から夕方まで。
また次の日も。
繰り返す。
単純な作業だが、確実に増えていく。
「……どれくらいだ」
袋の中を確認する。
リズがざっと見る。
「結構あるね」
最終的に、十日。
集まった量は――
「……百五十グラムくらいか」
思わず声が漏れる。
悠真はスマホを取り出しかけて、止まる。
ここでは使えない。
だが、知識としてはある。
「……確か、地球だと一日〇・一グラムとかだったよな」
リズが首をかしげる。
「そんなに少ないの?」
「たぶんな」
それを考えると、この量は明らかにおかしい。
「……ここ、やばいな」
小さく呟く。
リズが笑う。
「いい場所でしょ」
悠真は袋をしっかり閉じる。
「……よし、戻るか」
十分だ。
これ以上は時間の方がもったいない。
二人は廃墟へ向かう。
穴の下に立つ。
飛行カードを使う。
体が浮く。
今はもう慣れてきていた。
そのまま穴へ。
暗転。
次の瞬間、天井裏。
「……戻ったな」
時間を確認する。
まだ夜。
「ちょうどいいな」
リズが周りを見る。
「どうする?」
悠真は少し考えてから言った。
「店行く」
二人で田中誠の店へ向かう。
暖簾はまだ出ている。
営業中だ。
中に入る。
「いらっしゃ……お前か」
誠が気づく。
「戻ったのか」
「うん」
悠真は袋を取り出す。
「これ見てくれ」
カウンターに置く。
誠が袋を開ける。
中を見る。
一瞬、動きが止まった。
「……これ、まさか」
「砂金」
リズが言う。
誠は黙ってそれを指でつまみ、光にかざす。
「……本物だな」
低く呟く。
悠真が言う。
「向こうで十日くらいでこれ」
誠の視線が変わる。
「量は?」
「百五十グラムくらい」
その瞬間、誠の眉がピクリと動いた。
「……今の相場なら」
少し考える。
「一グラム、一万弱」
悠真が息をのむ。
「……ってことは」
「百五十万だな」
さらっと言った。
一瞬、現実感が消える。
「……マジか」
思わず声が漏れる。
リズが横で笑う。
「すごいね」
悠真は頭を押さえる。
「……いや、やばいだろこれ」
一気に世界が変わるレベルだった。
だが。
誠がすぐに言う。
「ただな」
悠真が顔を上げる。
「高校生がこれ持って売りに行くのは無理だ」
「……だよな」
冷静に考えればそうだ。
怪しまれる。
最悪、トラブルになる。
誠はため息をつく。
「明日、俺がついていく」
「いいのか?」
「こういうのは大人がやった方が早い」
その言葉は、妙に説得力があった。
「……頼む」
素直に頭を下げる。
「任せろ」
短く答える。
その日はそのままリズを店に泊めることになった。
「ここ、落ち着く」
リズが言う。
誠は少しだけ苦笑した。
悠真は一度家に戻る。
ドアを開ける。
「ただいま」
母がキッチンから顔を出す。
「おかえり、遅かったね」
「ちょっとな」
テーブルに座る。
夕飯が用意されている。
「いただきます」
いつもの光景。
でも、少しだけ違って見える。
食べながら、悠真は言った。
「しばらく、おじさんのとこ行くわ」
母が顔を上げる。
「急にどうしたの?」
「料理、ちょっとちゃんとやりたくて」
半分本当だ。
「夏休みだし、時間あるし」
母は少し考えてから言った。
「……まあ、誠さんのとこなら安心か」
「遅くなることもあると思うけど」
「連絡くれればいいよ」
あっさり許可が出た。
「ありがとう」
食事を終え、家を出る。
再び店へ戻る。
営業は終わっていた。
中に入る。
誠とリズが待っている。
「どうだった」
「OKもらった」
「そうか」
誠は短く頷く。
「じゃあ、明日動くぞ」
悠真は袋を見る。
この中に、百五十万。
「……これで一気にいけるな」
誠が言う。
「中途半端に使うなよ」
「分かってる」
「やるなら一気にやる」
その言葉に、悠真は頷いた。
次の日。
換金は思ったよりスムーズだった。
誠が全部仕切ってくれたおかげだ。
手元に残ったのは、まとまった現金。
「……重いな」
紙幣の束を見て、思わず呟く。
誠が言う。
「これが資金だ」
「だな」
悠真は頷く。
そのまま買い出しへ向かう。
食材。
調味料。
調理器具。
質のいいものを選ぶ。
誠の目は厳しかった。
「それじゃダメだ」
「こっちにしろ」
次々と選び直される。
結果、かなりの量になった。
「……全部使ったな」
悠真が言う。
「中途半端に残す方が無駄だ」
誠が答える。
その通りだった。
店に戻る。
荷物をまとめる。
そして。
誠が悠真を見る。
「……で」
短く言う。
「行くんだろ」
悠真は頷く。
「うん」
リズが横で笑う。
「いよいよだね」
誠は静かに息を吐いた。
「異世界、か」
その目は、もう迷っていなかった。
「案内しろ」
悠真は笑った。
「任せろ」
三人は店を出る。
向かう先は――あの廃墟。
そしてその先の世界。
物語は、次の段階へ進もうとしていた。
第8話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、
・砂金採取による大きな資金確保
・現代での換金
・おじさんの本格参戦
を描いています。
一気に資金が増えたことで、
これからの展開の自由度も大きく広がります。
そして次回は、
ついにおじさんが異世界へ。
ここからは「料理」と「異世界」が本格的に交わっていきます。
よろしければブックマークや評価をいただけると励みになります。
引き続きよろしくお願いします。




