第66話「繋がる光」
第66話です。
消えた悠真。
残された三人はすぐに動き出します。
絶望の中で掴んだ、わずかな手がかり。
そして王都で明かされる、新たな繋がり。
王都グランセルの冒険者ギルド。
喧騒は変わらない。
だが、その中でレオンたち三人の空気だけが明らかに浮いていた。
受付に立つと、昨日の職員がすぐに気づく。
「……早かったですね」
「報告だ」
レオンが静かに言う。
声は低く、迷いがない。
「指定された地点で、異常を確認した」
職員の姿勢がわずかに変わる。
「詳しくお願いします」
ララが一歩前に出た。
「まず、見た目には何もありませんでした」
「でも……確実に結界があります」
言葉を選びながら続ける。
「触れました。けど、普通じゃない」
「安定していないというか……歪んでいる感じです」
リズが補足する。
「あと、音がしてました」
「低くて……響くような」
「言葉みたいにも聞こえて……」
職員の眉がわずかに動く。
「言葉……?」
レオンが最後に言った。
「そして――引き込まれた」
一拍、間を置く。
「目の前で、仲間の一人消えた」
空気が止まる。
周囲の音が遠くなる。
「……消えた?」
「戻らない」
短く答える。
職員はすぐに奥へ向かった。
しばらくして現れたのは、昨日の年配の男だった。
「詳しく聞かせてください」
同じ説明を、今度はより正確に繰り返す。
結界の感触。
音の特徴。
そして消失の瞬間。
すべてを聞き終えた男は、ゆっくりと目を閉じた。
「……やはり、そうですか」
「何か知ってるのか」
レオンが問う。
男は小さく頷いた。
「古い記録です」
「王都外縁には、かつて儀式用の祭壇が存在したとされています」
ララが反応する。
「祭壇……」
「ですが長く使われていない」
「結界によって封じられていたはずです」
リズが不安そうに言う。
「じゃあ、なんで……」
男は静かに答えた。
「何者かが、強引に開いた可能性があります」
「正規の手順ではない」
「その場合、制御はできません」
レオンが低く言う。
「だから消えた」
「恐らくは」
短い沈黙。
ララが拳を握る。
「……助けられますか」
男はすぐには答えなかった。
考え、そして言う。
「現時点では……難しいでしょう」
その言葉を、レオンは否定しない。
「方法を探し出す」
それだけ言った。
三人はギルドを後にする。
外に出ても、空気は変わらない。
だが、確実に世界は変わっていた。
「……どうする」
リズが聞く。
「まずは確認する」
ララが即答する。
「悠真が無事かどうか」
レオンも頷いた。
「ああ」
そのまま歩き出す。
しばらくして、立ち止まる。
目の前には巨大な建物。
豪華で、整えられていて、無駄がない。
「……ここ?」
リズが驚く。
レオンは当然のように言った。
「俺の兄貴の会社だ」
「兄貴!?」
門番がレオンの顔を見て
「レオン様 おかえりなさいませ」
中へ入る。
案内されるまま、奥へ。
さらに奥へ。
やがて、一つの扉の前で止まる。
明らかに他と違う。
重厚な扉。
静かな空気。
「こちらです」
扉が開く。
中は広かった。
豪華だが、整然としている。
机の向こうに、一人の男がいた。
「……レオンか」
低い声。
鋭い目。
周囲には数人の部下。
明らかに“上”の人間だった。
「少し外せ」
短く命じる。
部下が一礼し、出ていく。
扉が閉まる。
静寂。
一拍。
そして。
「おおおおおおい!!レオン!!」
一気に崩れた。
椅子を蹴るように立ち上がる。
そのまま距離を詰める。
抱きつく。
「久しぶりすぎるだろお前!!」
「……離せ」
「冷たいな!!」
明るい。
うるさい。
さっきまでの空気が嘘のようだった。
「どこ行ってた!?連絡くらい寄越せよ!!」
「仕事してた」
「ざっくりしすぎだろ!!」
リズが小声で言う。
「……全然違くない?」
ララも少し驚いたように見ている。
レオンが短く言う。
「ガイオだ」
「よろしくな!!」
ガイオは笑顔で手を振る。
「で!?なんだ!?その顔やばいな!!」
「お前がそんな顔で来る時は絶対ロクでもない!!」
「当たってるだろ!?ほら言え!!」
レオンは一言で返す。
「地下の空いてる部屋を貸してくれ」
一瞬、間が空く。
「……はい来た結論だけ!!」
「説明しろよ一応!!」
「時間がない」
「だろうな!!顔見りゃ分かる!!」
ガイオは大きく息を吐いた。
「いいぞ使え!!」
「ただし壊すなよ!?高いからなここ!!」
そして少しだけ声が落ちる。
「……あとでちゃんと話聞かせろ」
レオンは小さく頷いた。
地下へ案内される。
広い空間。
何もない。
「ここでいい」
ララが魔法陣を描き始める。
集中。
光が線をなぞる。
魔力が流れる。
空間が震える。
やがて完成する。
「……できた」
転移カードを出す
「行くぞ」
光が広がる。
次の瞬間。
三人の姿は消えた。
グラード・マーケット。
すぐに店へ向かう。
「ユウジ!!」
中に入る。
ユウジが振り返る。
「どうした――」
「悠真が消えた」
ララの声が震える。
「早く確認したい」
「共有カードで」
ユウジの表情が変わる。
「……分かった」
カードを取り出す。
集中。
空気が張り詰める。
「……繋がった」
小さく呟く。
ララが息を飲む。
「どう?」
ユウジの目が動く。
「……真っ暗だ」
「何も見えない」
「でも……いる」
はっきりと言う。
「繋がってるということは」
その言葉に、空気が変わる。
「生きてる……」
リズが呟く。
「呼びかけてみる」
「悠真!!聞こえるか!!」
声が響く。
だが返事はない。
「……反応はない」
「気絶してる可能性があるな」
時間が尽きる。
「……切れる」
光が消える。
繋がりが途切れる。
静寂。
だが。
確かなものが残る。
「……生きてる」
ララが小さく言う。
拳を握る。
「とにかく助ける」
強く。
レオンが頷く。
「ああ」
リズも頷く。
三人の目に、迷いはなかった。
第66話を読んでいただきありがとうございます。
今回はレオンたち側の動きが中心となる回です。
・王都外縁の異変の正体に迫る手がかり
・悠真の“消失”が偶然ではない可能性
・そして生存確認
完全な絶望ではなく、
“生きているかもしれない”という希望を残しています。
また、今回初登場のガイオ。
王都でも有数の商社を率いる人物でありながら、
レオンの兄としての一面はかなり砕けた性格にしています。
トップとしての顔と、家族としての顔。
このギャップも今後活きてきます。
転移陣の設置により、
グランセルとグラード・マーケットが繋がりました。
これにより、物語の動きはさらに加速していきます。
次回は悠真側の視点へ。
落ちた先で、何が待っているのか。
引き続きよろしくお願いします。




