第33話 レオン・グラディウス vs ララ・フェルシア
第33話です。
いよいよチャンピオン大会本戦開幕。
初戦から実力者同士の激突となり、
レオン・グラディウスとララ・フェルシアがぶつかります。
そして、この戦いはただの勝負では終わりません。
闘技場全体が熱気に包まれていた。
観客席は満員。
立ち見客まで出ている。
中央の円形舞台に、四人の出場者が並んでいた。
ララ・フェルシア。
ガンレイ・ドウガン。
ロー・カイザー。
そして――レオン・グラディウス。
司会の男が声を張り上げる。
「第一試合!」
「ララ・フェルシア!」
歓声が上がる。
若き実力者。
その美しさも相まって、観客の人気は高いようだった。
「対するは!」
「五連勝を圧倒的内容で突破した男!」
「レオン・グラディウス!」
今度は地鳴りのような歓声だった。
悠真は観客席で腕を組む。
「いきなり本命同士か」
リズも真剣な顔で頷く。
「ララって子……かなり強そう」
中央へ向かう二人。
レオンはいつも通り自然体だった。
ララは静かな表情のまま、まっすぐレオンを見ている。
近くで見ると、やはり若い。
十八歳ほど。
淡い金色の髪が揺れ、透き通るような瞳には強い意思が宿っていた。
「あなたがレオン・グラディウス」
ララが先に口を開く。
澄んだ声だった。
「そうだが?」
レオンが肩を回しながら答える。
ララはほんの少し口元を緩める。
「楽しみにしていたわ」
「私の魔法が、どこまで通じるか」
レオンも笑う。
「そりゃちょうどいい」
「俺も強い奴は歓迎だ」
二人が距離を取る。
開始の鐘が鳴った。
その瞬間。
ララの足元に光の紋様が広がった。
次の瞬間、地面から鋭い氷の槍が何本も突き出し、一直線にレオンへ襲いかかる。
「うおっ!?」
悠真が思わず身を乗り出す。
「……なんだこれ」
「これって、本物の魔法か……!」
火。
風。
氷。
見たこともない現象が、目の前で当たり前のように起きていた。
リズも目を細める。
「すごい……」
「たぶん、普通の使い手じゃないよ」
悠真も頷く。
「だろうな……」
だが。
レオンはすでに動いていた。
加速。
身体強化。
一歩で氷槍の軌道から外れ、そのまま前へ出る。
「近づかせない!」
ララが右手を振る。
風の刃が連続で飛ぶ。
レオンは大剣で弾く。
激しい衝撃音が闘技場に響く。
ララは距離を取り続ける。
火球。
氷槍。
風刃。
次々と属性を変えながら、隙なく攻め続ける。
普通の相手なら、近づくことすらできない。
だが。
「悪くねえ」
レオンが笑う。
攻撃の隙間を縫うように前へ進む。
少しずつ。
確実に距離を詰めていく。
ララの表情が初めて変わった。
「……なんで」
「当たらないの」
レオンが答える。
「見えてるからだ」
次の瞬間。
レオンが一気に踏み込む。
ララは咄嗟にバリアカードを発動。
透明な壁が二人の間に展開される。
レオンの剣がぶつかり、衝撃が広がる。
「へえ」
レオンが笑う。
「カードも使えるのか」
ララはその隙に後方へ跳ぶ。
そして分身カード発動。
ララが三人に増えた。
観客席がどよめく。
「すご……!」
悠真が声を漏らす。
三人のララが同時に魔法を放つ。
火球、風刃、氷槍。
闘技場全体が光と轟音に包まれる。
しかし、その中をレオンが駆け抜けた。
迷いなく本体へ。
「なっ――」
ララの目が見開く。
レオンの大剣が止まる。
首元寸前で、ぴたりと。
静寂。
そして次の瞬間。
歓声が爆発した。
「勝者!」
「レオン・グラディウス!」
ララはしばらく動かなかった。
それから、ふっと息を吐いて笑う。
「……完敗ね」
レオンは剣を肩に担ぐ。
「いや」
「強かったぞ」
「経験の差だな」
ララは少し驚いた顔をした。
それから、ほんのわずかに頬を赤くする。
「……そういう言い方、ずるいわね」
レオンは意味が分からない顔をしていた。
「ん?」
「なんでもない!」
ララは慌てて視線を逸らす。
その様子を観客席から見ていたリズが、小さく笑う。
「あっ、ひょっとして」
悠真が首を傾げる。
「何が?」
「なんでもない」
リズはにやりとする。
ララは立ち上がり、レオンへ手を差し出した。
「次は負けないわ」
声は強気だった。
だが少し震えている。
レオンは気づかず、その手を握る。
「おう」
「楽しみにしてる」
その瞬間、ララの顔がさらに赤くなる。
「……っ」
すぐに手を離し、そっぽを向いた。
悠真がぽつりと言う。
「なんか暑いのか、あいつ」
リズが呆れた顔をする。
「……鈍いのが二人いる」
レオンが戻ってくる。
「どうだった?」
悠真が聞く。
レオンは短く答える。
「かなり強い」
「でも、まだ若いな」
その後ろからララが近づいてくる。
少しだけ落ち着きを取り戻していた。
「……少し、話したいことがあるの」
悠真が首を傾げる。
「話?」
ララは真剣な目で言う。
「石版のことよ」
悠真とリズの表情が変わる。
そして闘技場では、次の試合の名が呼ばれようとしていた。
ロー・カイザー。
その名とともに、空気が静まり返っていく。
第33話を読んでいただきありがとうございます。
今回はチャンピオン大会第一試合、
レオン・グラディウス vs ララ・フェルシアを描きました。
ララはこの世界でも珍しい、カードに頼らず本物の魔法を扱う実力者です。
火・風・氷を自在に使い分け、
さらに補助としてスキルカードも組み合わせる完成度の高い戦闘スタイルとなっています。
対するレオンは、派手さよりも経験と対応力。
相手の攻撃を見切り、距離を詰め、
最短で勝ち切る戦い方です。
今回の勝敗は、純粋な才能差ではなく“経験の差”にしました。
そしてもう一つ。
ララはこの戦いを通して、
レオンに強く惹かれることになります。
ただし本人は不器用で、
その気持ちを素直に伝えることができません。
周囲には分かりやすいのに、本人だけ必死に隠している。
そんな立ち位置になる予定です。
さらにラストでは、ララが石版について話を持ちかけました。
つまり彼女は、ただの大会参加者ではありません。
次回はロー・カイザーの試合。
異質な存在感を放つ黒鎧の実力が明らかになります。
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