第32話 嵐の前の一週間と、開幕の鐘
第32話です。
チャンピオン大会までの一週間、
準備と積み重ねの時間を経て、いよいよ本番へ。
それぞれの実力、そして新たな強者たちが登場します。
闘技場での五連勝から一日。
街はいつも通りの賑わいを見せていたが、悠真たちの中には確かな変化があった。
「来週か……」
店の中で、悠真がぽつりと呟く。
「チャンピオン大会」
リズが少し緊張した様子で言う。
「早いね」
レオンはカウンターに背を預けたまま軽く笑った。
「まあ、ちょうどいいだろ」
「間が空くよりマシだ」
悠真は頷く。
「一週間」
「短いけど、やれることはある」
⸻
店の方は問題なかった。
ユウジと師匠。
この二人がいれば、安定して回る。
厨房ではユウジがだいぶ手慣れた動きで仕込みを進めている。
師匠も火加減を見ながら、手際よく料理を仕上げていく。
「……ほんと任せられるな」
悠真が呟く。
ユウジは手を止めずに答える。
「もう悠真より場数踏んだからな」
師匠も短く言う。
「お前らよりは慣れてるからな」
リズが笑う。
「頼もしいね」
悠真は小さく頷く。
「だからこそ、こっちはやるべきことやる」
⸻
空いた時間。
それはすべて実戦練習に使われた。
闘技場の外れ。
人の少ない場所。
そこで、レオンと悠真は向かい合う。
「来い」
レオンが言う。
悠真は剣を構える。
踏み込む。
振る。
だが――
「遅い」
軽く弾かれる。
衝撃が腕に伝わる。
体勢が崩れる。
「くっ……!」
悠真が歯を食いしばる。
レオンは続ける。
「振る前に見る」
「力じゃなくて、間合いだ」
悠真は息を整える。
再び構える。
今度は、相手を見る。
踏み込むタイミングを探る。
そして動く。
さっきよりも、少しだけ鋭い。
「……いい」
レオンが言う。
「少しはマシになった」
⸻
その様子を見ていたリズが近づく。
「次、私?」
レオンが頷く。
「そうだ」
リズは軽く剣を抜く。
スキルは使わない。
純粋な剣での勝負。
構えは悠真より明らかに洗練されていた。
「いくよ」
踏み込む。
速い。
悠真とは明らかに違う。
剣が振られる。
レオンが受ける。
金属音が響く。
一撃、二撃、三撃。
連続で打ち込む。
「……速いな」
悠真が思わず言う。
リズの動きは鋭く、迷いがない。
だが。
「甘い」
レオンが一歩踏み込む。
距離を潰す。
剣が弾かれる。
体勢が崩れる。
「……っ!」
リズが踏みとどまる。
だが次の一撃を受けきれない。
剣を弾き飛ばされる。
「……参った」
リズが息を吐く。
レオンは剣を下ろす。
「いい筋してる」
「でも、まだまだだけどね」
リズは悔しそうに笑う。
「分かってるよ」
悠真が言う。
「でも、俺より全然強いな」
リズが肩をすくめる。
「それはそうでしょ」
三人は少し笑う。
だが、その裏で確実に積み上がっている。
⸻
そんな日々が続いた。
一日。
二日。
三日。
気づけば、一週間が過ぎていた。
⸻
そして当日。
闘技場は、以前とは比べものにならないほどの人で埋め尽くされていた。
「……やばいね」
リズが呟く。
「完全に別物だ」
悠真も言う。
歓声。
ざわめき。
熱気。
空気が重い。
「これがチャンピオン大会か」
悠真が言う。
レオンは前を見ていた。
「いいな」
小さく言う。
「こういうのは嫌いじゃねえ」
⸻
入場の合図。
重い音が響く。
扉が開く。
一人ずつ選手が入っていく。
最初に現れたのは、少女。
ララ・フェルシア。
静かな目。
だが確かな力を感じる。
「……あの子」
リズが言う。
「かなり強いな」
悠真が答える。
⸻
次に現れたのは、年配の男。
ガンレイ・ドウガン。
無駄のない動き。
ただ立つだけで分かる。
強者だ。
⸻
そして三人目。
黒い鎧。
ロー・カイザー。
その瞬間、観客の空気が変わる。
ざわめきが広がる。
「……なんだあいつ」
悠真が呟く。
リズも頷く。
「怖い……」
言葉にできない圧。
異質な存在。
⸻
そして最後。
レオン。
ゆっくりと歩いて入る。
その名が呼ばれる。
「レオン・グラディウス!」
歓声が爆発する。
⸻
四人が並ぶ。
中央に立つ。
静寂。
そして――
「ララ・フェルシア!」
「ガンレイ・ドウガン!」
「ロー・カイザー!」
「レオン・グラディウス!」
名前が響く。
⸻
リズが小さく言う。
「……始まるね」
悠真が頷く。
「ここからだ」
⸻
レオンは前を見ていた。
ただ静かに。
戦いを待つ。
⸻
舞台は整った。
戦いが、始まる。
第32話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、戦いの前の準備と、チャンピオン大会開幕までを描きました。
店の運営はユウジと師匠に任せることで安定し、
悠真たちは戦いに集中できる環境が整いました。
また、レオンによる稽古を通して、
悠真とリズの立ち位置もはっきりしています。
悠真はまだ成長途中。
リズは高い実力を持ちながらも、レオンには届かない。
そしてレオンは、そのさらに上にいる存在。
この差が、これからの成長に繋がっていきます。
そしてついに登場した四人の強者。
ララ・フェルシア
ガンレイ・ドウガン
ロー・カイザー
レオン・グラディウス
それぞれが異なる強さを持ち、
これからの戦いを大きく盛り上げていきます。
次回はいよいよチャンピオン大会本戦。
ここから本格的なバトルが始まります。
よろしければブックマークや評価をいただけると励みになります。
引き続きよろしくお願いします。




