第25話 はじまりの準備
第25話です。
いよいよ、悠真たちが本格的に「店を持つ」準備に入ります。
今回は派手な展開ではなく、
・場所選び
・仕込み
・仲間との連携
といった、土台を作る回になります。
ここを丁寧に描くことで、この先の展開がより面白くなっていきます。
朝。
まだ空気がひんやりとしている時間。
悠真はゆっくりと目を覚ました。
目を開けても、すぐには動かない。
天井を見つめたまま、しばらくぼんやりする。
昨日の光景が、頭の中に残っていた。
人だかり。
次々と売れていく商品。
そして、手元に残った大量のマニー。
「……30万か」(日本円で300万円くらい)
ぽつりと呟く。
あれだけの金額を、自分で稼いだ実感はまだ薄い。
でも。
確実に、何かが変わり始めている。
「……やるしかないよな」
ゆっくりと体を起こした。
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部屋を出ると、すでにリズとレオンは起きていた。
窓際で、朝の光を受けながら話している。
「おはよ」
リズが気づいて手を振る。
「おはよう」
悠真も軽く返す。
レオンは壁にもたれながら、ちらっとこちらを見る。
「今日は忙しくなるぞ」
「……だな」
悠真は頷いた。
昨日までは“試し”。
今日は違う。
「ちゃんと決める日だ」
店を出す。
その第一歩。
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悠真はポケットからカードを取り出す。
共有カード。
少しだけ意識を集中する。
――ユウイチ。
一瞬、感覚が重なる。
見慣れた天井。
自分の部屋。
(……ああ、いるな)
わずかに伝わる思考。
(今日は特に予定ないか)
ほんの短い時間。
感覚が揺れる。
「ユウイチ、聞こえるか?」
『ああ、短時間ならな』
声が返る。
少し安心する。
「おじさんに連絡取れる?」
『いける』
「今日、こっち来てもらえないか聞いてほしい」
『分かった』
それだけ。
すぐに感覚が切れる。
繋がりが消えた。
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「どうだった?」
リズが近づいてくる。
「今から連絡してくれる」
「来てくれるといいね」
「……来てほしい」
正直な気持ちだった。
自分だけじゃ判断できない。
だから頼る。
それでいいと思っている。
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しばらくして、再び感覚が繋がる。
短い。
『いけるって』
『今からなら空いてるらしい』
「マジか……」
思わず笑った。
(ほんと運いいな)
すぐに共有は切れた。
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「来れるって」
「よかったね」
リズが嬉しそうに言う。
レオンも軽く笑う。
「持ってるな、お前」
「たまたまだよ」
悠真は苦笑した。
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レオンの転移カードで三人は廃墟へ向かう。
あの穴のある場所。
初めて来たときは、不安しかなかった。
今は違う。
少し慣れている。
それでも。
どこか静かな緊張感は残っていた。
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「ここで待つか」
悠真が言う。
レオンが周囲を見渡す。
「問題ない」
リズも軽く頷く。
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しばらくの静寂。
風の音。
遠くの魔物の気配。
そして――
「……来るぞ」
レオンが低く言う。
次の瞬間。
――ドサッ!
上から何かが落ちてくる。
レオンが迷わず踏み出す。
そのまま受け止める。
「うおっ……!」
「大丈夫ですか!?」
悠真が駆け寄る。
「おう……なんとか」
おじさんが息を整える。
「これ、何回やっても慣れねえな……」
苦笑している。
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「ありがとうございます」
悠真はしっかり頭を下げた。
「いいってことよ」
おじさんは軽く言う。
「で、店出すんだろ?」
「はい」
少しだけ緊張する。
「正直、全然分からなくて……」
おじさんは一度頷いた。
「まあそうだろうな」
「最初は誰でも分からん」
「いいところがあるといいな」
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四人で街へ向かう。
グラード・マーケット。
朝からすでに活気がある。
人の声。
金のやり取り。
すべてが混ざり合っている。
おじさんが周囲を見る。
「……おお 随分にぎやかじゃねぇか」
「ここ、普通じゃないね」
レオンが笑う。
「金の街だからな」
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商業ギルドへ。
案内される。
「現在、空いている店舗は三つです」
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一つ目。
飲食店が並ぶ区画。
香りが混ざる。
肉。
スープ。
焼き物。
人も多い。
「……すごいな」
悠真が思わず言う。
リズも頷く。
「食べるために来てる人ばっかりだしね」
レオンが言う。
「ただ、その分競争も激しい」
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二つ目。
少し離れた場所。
街の入口近く。
広い。
静か。
内装も綺麗。
「ここ、いい感じだね」
リズが言う。
「旅人が入りやすそう」
悠真も思う。
「落ち着いてるな」
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三つ目。
……即却下だった。
人がいない。
流れがない。
「これはないな」
全員一致だった。
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「どう思います?」
悠真はおじさんに聞く。
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おじさんは一つ目の店へ戻る。
厨房に入る。
ゆっくり見て回る。
火の位置。
動線。
スペース。
しばらく無言。
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そして。
「……こっちだな」
はっきり言った。
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「え?」
悠真が驚く。
「こっちですか?」
「人多いけど……」
おじさんは言う。
「だからいい」
「食ばることが目的の人たちが集まってる」
そして。
軽く台を叩く。
「あとここ」
「使いやすい」
「これが一番大事だ」
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悠真は少し考える。
そして。
頷く。
「……分かりました」
「ここにします」
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契約。
店が決まる。
現実味が一気に増す。
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「よし、やるか」
おじさんが言う。
「はい!」
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仕込みが始まる。
収納鞄から道具を出す。
食材を並べる。
リズが驚く。
「……これ、全然傷んでない」
「ほんとだ」
悠真も触る。
「そのままだな」
レオンが笑う。
「便利すぎるだろ」
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おじさんが動く。
包丁の音。
火の音。
すべてが速い。
無駄がない。
「見て覚えろ」
「はい」
悠真も動く。
必死に。
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時間が流れる。
店の形が整っていく。
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「……いい感じだな」
レオンが言う。
リズも笑う。
「うん、ちゃんとお店だ」
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ふと。
おじさんが言う。
「……そろそろだな」
「え?」
「戻る時間だ」
悠真は少し寂しそうにする。
「ありがとうございました」
「最初はこんなもんだ」
「やりながら覚えろ」
「はい」
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「送ってくる」
レオンが言う。
「じゃあまたな、頑張れよ」
おじさんは帰って行った
しばらくしてレオンが戻り三人だけになる。
静かな店内。
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悠真は店を見渡す。
まだ未完成。
でも。
確実に始まっている。
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「名前、どうする?」
リズが聞く。
悠真は少し考える。
少し悩んで。
言う。
「……Lumiere Kitchen」
リズが笑う。
「いいね」
レオンも頷く。
「悪くない」
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悠真は小さく頷く。
「……よし」
明日。
ついに開店。
第25話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、食堂開店に向けた準備回でした。
悠真一人ではなく、
・リズ
・レオン
・そしておじさん
それぞれの力を借りながら進めていく流れになっています。
特に、おじさんの「厨房の使いやすさを見る視点」は
今後の料理パートにも繋がる大事な要素です。
また、
・共有カードの使い方
・転移の制限
など、設定面も整理しています。
そして店の名前――
「Lumiere Kitchen」
ここから、いよいよ営業開始です。
次回は、開店初日。
うまくいくのか、それとも――
ぜひ続きも読んでいただけると嬉しいです。
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引き続きよろしくお願いします。




