第24話 売れるもの、売れないもの
第24話です。
今回は戦いではなく、
「稼ぐ」というテーマにしっかり向き合う回になります。
この世界でどう生きていくのか。
何が売れて、何が売れないのか。
悠真が少しずつ理解し始める、大事な一歩です。
翌朝。
窓から差し込む光で、悠真はゆっくり目を覚ました。
ぼんやりと天井を見つめる。
昨日のことが、頭に残っている。
戦い。
何もできなかった。
「……はぁ」
息を吐く。
悔しい。
でも。
「……まあ、落ち込んでても仕方ないか」
体を起こした。
この街は戦いだけじゃない。
まずは金だ。
だったら、まずは稼ぐ。
⸻
部屋を出ると、リズとレオンが起きていた。
「おはよ」
「おはよう」
「今日はどうする?」
悠真は少し考えてから言う。
「ギルドに行く」
「露店の許可取って、商売する」
レオンが軽く頷く。
「いいね」
リズも楽しそうだ。
「何売るの?」
「持ってきたもの、全部試そうかと」
「売れるか見たい」
「なるほどね」
三人はそのまま外へ出た。
⸻
商業ギルドで手続きを済ませる。
驚くほどあっさり終わった。
この街では、商売は歓迎されているらしい。
⸻
場所は交差点の近く。
人通りが途切れない場所。
「ここでいくか」
レオンとリズも頷く。
⸻
収納鞄から商品を並べる。
ライター。
袋。
小道具。
見慣れたものばかり。
でも、この世界では違う。
(……頼む)
小さく息を吐いた。
⸻
最初は誰も寄ってこなかった。
遠くから見るだけ。
「なんだあれ」
「怪しいな」
そんな声。
まあ当然だ。
⸻
悠真はライターを手に取る。
「ちょっと見てもらっていいですか」
カチッ。
火がつく。
「……っ!?」
空気が変わる。
一瞬で。
そこからは早かった。
袋。
ピーラー。
絆創膏。
一つずつ見せるたびに、人が増える。
⸻
「いくらだ!?」
「それ300マニーです」
「買う!」
一気に流れができる。
売れる。
止まらない。
リズとレオンも手伝う。
気づけば、人だかり。
⸻
だけど。
全部が売れたわけじゃなかった。
⸻
「……これ全然出ないな」
悠真が手に取ったのは小さなミラー。
リズが言う。
「鏡は普通にあるよ」
「しかも魔道具でいいやつもあるし」
「あー……そっか」
悠真は苦笑する。
⸻
シャボン玉。
少しだけ子供が興味を持ったが、それだけ。
「面白いけど、金払うほどじゃないって感じだな」
レオンが言う。
「娯楽は弱いか……」
⸻
フック。
「これも反応薄いな」
「使い道が伝わってないね」
「説明いるやつは弱いか」
悠真は小さく頷く。
⸻
売れるもの。
売れないもの。
頭の中で整理していく。
⸻
夕方。
商品はほぼ売り切れ。
いくつかは残ったまま。
⸻
人が引いたあと。
静けさ。
悠真はその場に座り込む。
「……疲れた」
リズが袋を覗く。
「すごいよ、これ」
悠真も見る。
数える。
途中で笑う。
「……30万マニー超えてる」
「え!?そんなに!?」
「うん」
レオンが軽く笑う。
「悪くないな」
⸻
悠真は少し黙る。
売れた理由。
売れなかった理由。
なんとなく分かってきた。
「……便利なものは強いな」
「だね」
「あと、代わりがあるものはダメだね」
レオンが頷く。
「いい読みだ」
⸻
少し間。
悠真が口を開く。
「……次さ」
リズが顔を上げる。
「うん?」
悠真は少し迷ってから言う。
「ちゃんとやりたい」
「ちゃんと?」
「うん」
言葉を探す。
少し不器用に。
「この街でさ」
「美味いもん売れたら、絶対強いと思うんだよ」
リズが少し驚く。
「料理?」
「いや……その」
少しだけ頭をかく。
「正直、俺そんな自信あるわけじゃないけど」
レオンがニヤッとする。
「けど?」
「でもさ」
悠真は続ける。
「一回食ったら、また来たくなるやつってあるじゃん」
「……ああ」
「そういうの作れたら」
「ずっと稼げると思うんだよ」
リズが頷く。
「リピーターってやつだね」
「そう、それ」
悠真は少し安心したように笑う。
「それがやりたい」
⸻
少し沈黙。
そして。
「……手伝ってほしい」
悠真が言う。
少しだけ照れくさそうに。
「俺一人じゃ無理だから」
リズはすぐに答える。
「いいよ」
レオンも肩をすくめる。
「まあ面白そうだしな」
⸻
悠真は少しほっとした顔になる。
「ありがとう」
⸻
そして、続ける。
「あとさ」
二人を見る。
「強くもなりたい」
リズが少し真剣な顔になる。
「……うん」
「金あれば装備もスキルも揃うし」
「でもそれだけじゃダメだよな」
レオンが笑う。
「やっと分かってきたな」
悠真は少し苦笑する。
「レオンさ」
「時間ある時でいいから」
「稽古、つけてくれない?」
少しだけ間。
レオンが答える。
「いいぜ」
軽く。
でもしっかりと。
⸻
悠真は小さく頷く。
「……よし」
やることは決まった。
まずは。
稼ぐ。
ちゃんと。
この街で。
第24話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、露店での商売を通して
・売れるもの
・売れないもの
・この世界の価値観
を整理する回になっています。
単に「売れた!」だけではなく、
なぜ売れたのか、なぜ売れなかったのか。
ここを描くことで、今後の展開に繋げています。
そして、悠真の次の目標。
それは「食堂をやること」。
ただ料理がしたいわけではなく、
“美味しいものを売ることで継続的に稼ぐ”という考え方です。
さらに、戦闘面でも
・スキルカード
・装備強化
・レオンとの稽古
など、成長の方向性も見えてきました。
今回の話は、いわば“基盤作り”。
ここから、
「稼ぐ」と「強くなる」が同時に進んでいきます。
よろしければブックマークや評価をいただけると嬉しいです。
引き続きよろしくお願いします。




