第17話 もう一人の自分
第17話です。
今回は、ついに“コピー”という新しい力に踏み込む回になります。
これまでの積み重ねが、
一つの形になるタイミングです。
洞窟を出る。
外の空気が少し軽い。
「……なんか、終わったって感じだな」
悠真が言う。
「終わったね」
リズも頷く。
手の中には、黒い結晶。
ソウルコア。
「これ、なんか変だな」
悠真がそれを見つめる。
形が一定じゃない。
少しずつ揺れている。
「それが普通」
リズが言う。
「ソウルコアは固定された形がない」
「へえ」
「影と同じ性質だから、変形する」
確かに、見ていると形が変わる。
不思議な感覚だ。
「で、これ何個くらい取れるの?」
「個体によるけど」
リズが少し考える。
「三つか四つ」
「今回のは?」
リズが確認する。
「……四つ」
「当たりだね」
悠真は少しだけ笑う。
「ラッキーだな」
街へ戻る。
まずはスキルショップ。
店内に入ると、すぐに目的を伝える。
「コピーのカード、ありますか」
店員が少しだけ目を細める。
「……ございます」
奥からカードを持ってくる。
「こちらになります」
見ると、確かにあった。
コピー。
そのままの名前。
「いくらですか」
「一枚千マニーです」
「……安くない?」
思わず言ってしまう。
「素材が高価ですので」
なるほど。
ソウルコア前提だからか。
悠真は頷く。
「四枚ください」
「かしこまりました」
続けて。
「共有のカードも」
「こちらになります」
同じく一枚千マニー。
合計で八千マニー。
「……思ったより安いな」
「確かに」
リズが言う。
悠真は残金を頭の中で計算する。
「……結構減ったな」
でも。
必要な投資だ。
部屋へ戻る。
リビングに座る。
テーブルの上にカードとソウルコアを並べる。
「……やるか」
少しだけ緊張する。
「まずは練習」
いきなり自分は怖い。
「これで」
収納鞄を取り出す。
コピーカードを手に持つ。
「対象指定……」
カードが淡く光る。
ソウルコアが反応する。
形が揺れる。
次の瞬間。
光が広がる。
そして。
「……できた」
テーブルの上に、もう一つの鞄。
見た目は同じ。
悠真が触る。
「……ちょっと軽いな」
「完全じゃないから」
リズが言う。
「確か八割くらい」
「でも十分だな」
成功。
問題なく使える。
悠真は少しだけ息を吐く。
「……いけるな」
視線をカードに戻す。
次は。
本番。
「……やるか」
リズが少しだけ真剣な顔になる。
「大丈夫?」
「たぶん」
悠真は苦笑する。
正直、分からない。
でも。
「やるしかない」
コピーカードを持つ。
ソウルコアを手に取る。
自分に向ける。
「対象……俺」
一瞬、ためらう。
でも。
「……いく」
カードが光る。
ソウルコアが強く反応する。
形が激しく揺れる。
視界が少し歪む。
「……っ」
頭が軽くくらむ。
でも、倒れるほどじゃない。
光が収まる。
そして。
目の前に、もう一人。
「……マジか」
悠真が呟く。
同じ顔。
同じ服。
同じ表情。
「……俺?」
コピーが口を開く。
声も同じ。
悠真は一歩下がる。
「……すげえな」
リズも少し驚いている。
「成功だね」
コピーは周りを見ている。
状況を理解しているようだ。
「……これ、どういう状態だ?」
コピーが聞く。
「……俺だよな?」
「……多分な」
悠真が答える。
不思議な感覚だ。
自分が、目の前にいる。
「……名前、どうする?」
悠真が言う。
コピーが少し考える。
「……区別いるよな」
「いるな」
少し悩んで。
「……ユウイチでいいか?」
悠真が言う。
「一号ってことで」
コピーは少し笑う。
「安直だな」
「まあいいだろ」
リズも少し笑う。
「分かりやすい」
「じゃあそれで」
コピー――ユウイチが頷く。
その動きも自然だ。
悠真は少しだけ考える。
「……これで」
・異世界
・地球
両方動ける。
「……いけるな」
ユウイチも頷く。
「いけるな」
同時に同じことを言う。
一瞬、変な感覚になる。
「……なんか変だな」
悠真が言う。
「まあな」
ユウイチも同じことを思っている。
それが分かる。
「共有、使う?」
リズが聞く。
「あとでいい」
悠真が答える。
まずは慣れる。
「……でも」
悠真は少し笑う。
「これ、すごいな」
本当に。
もう一人の自分。
それが、目の前にいる。
現実じゃありえない。
でも、この世界なら。
「……やること増えたな」
悠真が言う。
ユウイチも頷く。
「だな」
二人同時に動き出す。
同じなのに、別。
その違和感を抱えたまま。
新しい日常が、始まろうとしていた。
第17話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、
・ソウルコアの性質
・コピーと共有スキルの入手
・初めての複製成功
・もう一人の悠真「ユウイチ」の誕生
を描いています。
ここから物語は大きく動きます。
“自分がもう一人いる”という状況は便利な反面、
違和感やリスクも含んでいます。
そしてこのコピーという力が、
商売・戦闘・日常すべてに影響していくことになります。
次回からは、
二人での行動や役割分担など、
新しい展開に入っていきます。
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