↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
141/162

第141話 世界に一つの価値

エーデルで見つけた魔物除けの水晶と、海賊ダリオンが残した宝。


悠真たちは、それぞれを活かすため二手に分かれて行動することに。


果たして、海賊の宝は三十億マニーに届くのでしょうか。

翌朝。


 悠真たちはボッツとともに、ウィストンの町長を訪ねていた。


 目的は、昨日レオンが《コピー》で作った魔物除けの水晶を、ウィストンに設置する許可をもらうためだ。


「魔物を遠ざける水晶……ですか」


 一通り話を聞いた町長は、すぐには信じられない様子だった。


 無理もない。


 突然、そんなものを持ってきて町に置かせてほしいと言われても、簡単に信用できる話ではないだろう。


「正確には、エーデルにあった水晶を複製したものです」


 ララが説明を続ける。


「エーデルは、長い間この水晶によって魔物から守られていた可能性があります」


「しかし、エーデルは五十年前に滅びた町でしょう?」


「その水晶が海賊に持ち出されたんだ」


 横からボッツが口を挟んだ。


 昨日、悠真たちから話を聞いたボッツも、今回の説明に同行してくれている。


「俺も長いことエーデルについて調べてきた。あの町が魔物に襲われ始めた時期と、水晶が持ち出された時期が重なるなら、話の辻褄は合う」


「では、本当に……」


「可能性は高いと思う。ただ、俺も実際に水晶が魔物を遠ざけるところを見たわけじゃない」


 ボッツはそこまで言うと、ララへ視線を向けた。


 ララも頷く。


「それと、これから設置するのは本物ではありません。レオンの《コピー》で作ったものです」


「違いがあるのですか?」


「力は本物の八割程度です」


 ララはそこを曖昧にはしなかった。


「普通の魔物なら効果が期待できます。ただ、フロストオーガやスノーワイバーンのような強い魔物まで遠ざけられるかは分かりません」


「なるほど……」


「これを置けば絶対に安全になる、というものではありません。今まで通り警戒は続けてください」


 町長はしばらく考えていた。


 やがて、ゆっくり頷く。


「分かりました。それでも、魔物が近づく危険を少しでも減らせるのなら、断る理由はありません。ぜひお願いします」


 許可が下りると、一行は町長とともに中央広場へ向かった。


 町の中心なら、水晶の力を広い範囲へ届けられる可能性がある。


 広場の一角には、すでに水晶を置くための場所が用意される。


「じゃあ、出すわよ」


 ララが空間収納を開く。


 次の瞬間、大きな水晶が姿を現した。


 透明な結晶が朝の光を受け、淡く輝く。


「なんだ、あれ?」


「水晶?」


「昨日までなかったよな?」


 広場にいた人々が次々と足を止めた。


 何事かと人が集まってくる中、水晶が慎重に設置される。


 ララが表面へ手を触れた。


 目を閉じ、内部を流れる力を確かめる。


「……大丈夫。正常に力が流れてる」


「これで終わり?」


 リズが聞く。


「設置はね」


 悠真も水晶を見上げた。


 見た目には何も変わらない。


 町を覆う光が現れたわけでもなければ、何か特別な音がしたわけでもない。


「本当に効いてるのかな」


「すぐには分からないと思うわ」


 ララが答えた、その時だった。


「おーい!」


 広場の外から男が駆けてきた。


 町の外へ荷物を運んでいたらしく、厚い防寒着を着ている。


「町長、ちょうどよかった」


「どうしました?」


「いや、大したことじゃないんですが……」


 男は水晶をちらりと見てから、不思議そうな顔をした。


「さっきまで町の北側にスノーウルフが何頭かいたんです。でも、急にいなくなっちまって」


 悠真たちは顔を見合わせた。


「それって……」


 リズが水晶を見る。


「この水晶の力?」


「まだ分からないわ」


 ララは冷静だった。


「偶然移動しただけかもしれない。設置したばかりで判断するのは早いわ」


「でも、ちょっと期待してもいいんじゃない?」


「それくらいならね」


 ララもわずかに笑った。


 悠真は改めて水晶を見上げる。


 五十年前、エーデルを守っていたかもしれないもの。


 それが今度は、別の町を守ろうとしている。


「これで少しでも魔物が減ってくれたらいいな」


「そうだな」


 ボッツも水晶を見つめていた。


「エーデルから消えたものが、五十年経って別の町を守ることになるとはな」


 その言葉に、悠真も少し不思議な気持ちになった。


 海賊の宝を探しに行ったはずだった。


 それが思いもよらない形で、人々の役に立とうとしている。


 水晶の設置を見届けたところで、レオンが全員を見回した。


「ここからは二手に分かれよう」


「二手?」


 リズが振り返る。


「全員で同じ場所へ行く必要はない。効率が悪いからな」


 レオンはララを見る。


「ララ、二つ目の水晶をノルディアへ持っていってくれ。メリーとラパン、それからリズも一緒に連れてくといい」


「分かったわ」


「設置が終わったら、そのままアストリアへ行ってくれ。水晶を強化できないか調べるんだろ?」


「ええ。アークに相談してみるわ」


「俺と悠真、クラン、ドゴルドは兄貴のところへ行く。宝の価値を調べてもらう」


「なるほど。それなら早いね」


 リズも納得したようだ。


「じゃあ、宝は俺が持っていく」


 レオンが収納鞄を開く。


 ララが空間収納から、海賊船で手に入れた宝箱を取り出した。


 続いて、人魚エリスの首飾り。


 ダリオンの航海日誌。


 最後に、首飾りを身につけたエリスが描かれている一枚の絵。


 それらをレオンが順番に収納鞄へ収めていく。


「絵も持っていくんだ?」


 リズが尋ねる。


「首飾りが本当にエリスのものだった証拠になるからな」


 悠真が答えた。


「航海日誌にも首飾りのことが書かれてた。ガイオに見てもらうなら、全部あった方がいいだろ」


「なるほどね」


 リズは納得したあと、ニッと笑った。


「じゃあ高く売ってきてね」


「お前、もう売る気満々だな」


「だって三十億マニー必要なんでしょ?」


「簡単に言うなよ……」


 三十億。


 何度聞いても現実味のない数字だった。


「じゃあ、そっちは頼んだわよ」


 ララたちはスノーフローターの定期便へ向かう。


 ノルディアまでは転移カードで直接行くことができない。


 四人を見送ったあと、レオンも転移カードを取り出した。


「俺たちも行くか」


 光が悠真たち四人を包んだ。


 スノーフローターに揺られ、ララたちがノルディアへ到着したのは、それからしばらく後だった。


 ノルディアでは話が早かった。


 最近、町の周辺で魔物が増えていることもあり、町長は魔物除けの水晶の話に強い関心を示した。


 もちろんララは、コピーされた水晶が本物の八割程度の力しか持たないことや、強い魔物にまで通用する保証はないことも説明した。


 それでも町長の答えは変わらなかった。


「ぜひお願いします」


 二つ目の水晶も、町の中心付近へ設置することになった。


 ララが水晶の状態を確認する。


「問題ないわ」


「これで終わりだな!」


 ラパンが大きく伸びをする。


「まだよ」


「え?」


「次はアストリア」


「そうだった……」


 分かりやすく肩を落とすラパンを見て、リズが笑う。


「でもラパン、久しぶりに故郷に帰るんでしょ?」


「まあな。せっかく帰るなら、ちょっとくらいゆっくりしようかな」


「私も久しぶりなので楽しみです」


 メリーも嬉しそうだった。


「私、アストリアに行くの何回目だろ」


 リズが指を折り始める。


「三回? 四回?」


「覚えてないなら数えなくていいわよ」


 ララは淡々としている。


「相変わらずだなあ。せっかく帰るんだから、ララも少しくらい嬉しそうにしろよ」


「用事で行くのよ」


「はいはい」


 ラパンもそれ以上は言わなかった。


 アストリアはララの故郷でもある。


 だが、故郷へ戻ることと、家へ帰ることは同じではない。


「行きましょう」


 ララが転移カードを取り出す。


 カードが光を放つ。


 四人の姿が、その光の中へ消えていった。


 一方、その頃。


 悠真たちはガイオの会社へ到着していた。


 転移先は、以前ララが魔法陣を設置した地下の一室だ。


「着いたぞ」


 レオンが先に歩き出す。


 地下から階段を上がり、会社の中へ出る。


 そこから先は、クランとドゴルドにとって初めて見る光景だった。


 広い廊下。


 忙しそうに行き交う人々。


 次々と運ばれていく書類や荷物。


 外から見ても大きな建物だが、中へ入るとさらに規模の大きさが分かる。


「……ここ、全部ガイオさんの会社なんですか?」


 クランが辺りを見回す。


「そうだ」


 レオンは当然のように答えた。


「兄貴の会社だ」


「随分な規模だな」


 ドゴルドも感心したように周囲を眺めている。


「レオンさんのお兄さんって、何をしてる人なんですか?」


「いろいろ」


「……いろいろ」


 クランは困った顔で悠真を見る。


「俺に聞かれても、たぶん同じ答えになるよ」


「そうなんですね……」


 やがて四人は、ガイオの部屋へ案内された。


 重厚な扉が開く。


 大きな机の向こうにはガイオが座っていた。


 周囲には数人の部下。


 ガイオは書類から顔を上げる。


「おう、レオンか」


 低く落ち着いた声だった。


 さっきまで質問を続けていたクランが、思わず姿勢を正す。


 ドゴルドも黙ってガイオを見る。


 大きな会社を動かす人間。


 その肩書きを知らなくても、そう感じさせる雰囲気があった。


「少し外してくれ」


 ガイオが部下へ告げる。


 全員が一礼し、部屋から出ていく。


 扉が閉まった。


 一瞬の静寂。


 そして。


「おお! レオン! また急に来たな!」


 さっきまでの空気が跡形もなく消えた。


「元気だったか!? 今度は何用だ!」


「……相変わらずだな、兄貴」


「兄貴に会って最初の言葉がそれか!」


 クランが目を丸くしている。


 ガイオと扉を交互に見る。


「……同じ人ですよね?」


「同じ人だよ」


 悠真は苦笑した。


「俺も最初は驚いたから」


「悠真まで何言ってんだ!」


 ガイオがすぐに突っ込む。


 その様子を見ていたドゴルドが、小さく笑った。


「なるほど。レオンの兄というのは分かる気がするな」


「どこを見てそう思った?」


 レオンが真顔で聞き返す。


「さてな」


 ひとしきり騒いだところで、レオンが本題に入った。


「兄貴に見てもらいたい物がある」


「お前が持ってくる物は、毎回ろくでもない予感がするな」


「今回は宝だ」


「宝?」


 ガイオの表情が変わった。


「ほう、見せてもらおうか」


 レオンが収納鞄から宝箱を取り出した。


 机の前へ置き、蓋を開ける。


 海賊船から持ち帰った宝石や装飾品が、室内の光を受けて輝いた。


「おお……」


 ガイオが身を乗り出す。


 一つを手に取る。


 光へかざし、角度を変える。


 別の宝石。


 さらに装飾品。


 次々と確認していく。


「こいつはすげえな」


 ガイオの声を聞き、悠真の顔が明るくなった。


「かなり上物が混じってるぞ。これだけの物をよく集めたな」


「じゃあ、三十億いける?」


「それは無理だな」


「早っ!」


 期待した直後に切り捨てられた。


「まだ全部見てないじゃん!」


「全部見なくても三十億は無理だ」


「そんな……」


 ガイオは気にせず鑑定を続ける。


 人魚の首飾りも手に取り、宝石の一つ一つを確認した。


 しばらくして、すべてを見終える。


「そうだな……普通に売るなら、全部合わせて十億マニー前後ってところか」


「十億……」


 悠真はレオンを見る。


 レオンも難しい顔をしていた。


「全然足りないな」


「おい」


 ガイオが顔を上げた。


「今、十億を『全然足りない』って言ったか?」


「だって三十億必要なんですよ」


「十億だぞ!?」


 ガイオが机を軽く叩く。


「お前ら、しばらく見ない間に金銭感覚どうなったんだ!」


「俺たちだって十億が大金なのは分かってるよ。でも、必要なのは三十億だから」


「何に使う気だ?」


「聖剣マクベスを買うためだ」


 レオンが答えた。


 ガイオの動きが止まる。


「……なるほど。あれか」


「知ってるの?」


「名前くらいはな。それなら三十億必要って話も分からなくはない」


 ガイオは宝箱へ目を戻した。


「ただ、これはあくまでざっくりした目安だ。宝石や美術品は、誰にどう売るかで値段が変わる。相手次第じゃ十億より上にも下にもなる」


「じゃあ、頑張れば三十億に?」


「だから無理だって」


「駄目か……」


 悠真は肩を落とした。


 海賊の宝を見つければ、三十億に届くかもしれない。


 どこかでそう期待していた。


 だが、現実は甘くなかった。


 十億マニー。


 普通なら途方もない大金だ。


 それでも今の悠真たちには足りない。


「兄貴」


 そこでレオンが口を開いた。


「まだ話がある」


「何だ?」


 レオンは宝箱の中から、人魚の首飾りを取り出した。


「この首飾り。普通の宝石として見たんだよな?」


「当然だ。細工もいいし、使われてる宝石も一級品だぞ」


「それには由来がある」


「由来?」


 ガイオの目がわずかに変わった。


「海賊船長ダリオンを知ってるか?」


「名前くらいは聞いたことがある。アルファ地区で活動していた海賊だったか?」


「そう。そのダリオンが、愛した女のために作らせた首飾りだ」


「女?」


「女と言っても人魚だ」


 ガイオの眉が動いた。


 悠真が続ける。


「エリスっていう人魚。ダリオンは世界中から集めた宝石の中でも、特にいい物を選んでこの首飾りを作らせたらしい」


「……待て」


 ガイオの声から、さっきまでの軽さが消えた。


「それを証明できるのか?」


「できる」


 レオンが収納鞄へ手を入れた。


 最初に取り出したのは、ダリオンの航海日誌。


 ガイオへ渡す。


「ここに書いてある」


 ガイオがページをめくる。


 先ほど宝石を鑑定していた時よりも、明らかに真剣な顔になっていた。


「……なるほど」


 しばらく読んだあと、顔を上げる。


「人魚が実際にこの首飾りをつけていた証拠は?」


「それもある」


 今度は一枚の絵を取り出した。


 海を背にして微笑む美しい人魚。


 その胸元には、今ガイオの机に置かれているものと同じ首飾りが輝いている。


 ガイオが黙った。


 絵を見る。


 首飾りを見る。


 もう一度、日誌へ目を落とす。


「……同じ首飾りは?」


「見つかってない」


「日誌には?」


「エリスのために作らせたって書いてある」


 ガイオは再び日誌を確認する。


「つまり、ダリオンが世界中から集めた宝石の中から選び、愛した人魚のためだけに作らせた……」


「そういうこと」


「しかも、それを裏付ける日誌と絵まで残ってる」


 ガイオの指が首飾りへ触れた。


 先ほどまでは、宝石の透明度や大きさ、細工を見ていた。


 今は違う。


 その首飾りが持つ背景を見ている。


 しばらく誰も口を開かなかった。


 やがてガイオが椅子へ深く腰を下ろす。


「……世界に一つしかないんだな?」


「少なくとも、俺たちが見つけたのはそれだけだ」


 悠真が答える。


「だったら……」


 ガイオはそこで言葉を止めた。


 もう一度、首飾りを見る。


 その目には、先ほどまでとは違う光が宿っていた。


「普通に売るのはやめだ」


「え?」


「こういう物は、宝石の値段だけで売るもんじゃない」


 ガイオは絵を机の上へ置いた。


 その隣に、エリスの首飾りを並べる。


「誰が持っていたのか。誰のために作られたのか。そして、世界にいくつ存在するのか」


 指先で首飾りを軽く示す。


「全部ひっくるめて価値になる」


 悠真は思わず身を乗り出した。


「じゃあ、もっと高くなる?」


「売る相手次第だ」


 ガイオはすぐには答えなかった。


 航海日誌。


 エリスの絵。


 そして、世界に一つしかないかもしれない首飾り。


 その三つを順番に眺める。


 やがて、ゆっくりと口元が上がった。


「三十億だったな」


「うん」


 ガイオは椅子の背にもたれた。


 そして、楽しそうに笑った。


「面白くなってきたじゃねぇか」

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ウィストンとノルディアには、コピーした魔物除けの水晶を設置。


ララたちは、八割まで落ちた水晶の力を補う方法を探すため、アストリアへ向かいました。


一方、悠真たちがガイオに持ち込んだ海賊の宝は、普通に売れば十億マニー前後。


十分すぎる大金ですが、聖剣マクベスを買うにはまだ届きません。


しかし、人魚エリスの首飾りには、宝石そのものとは別の価値がありました。


世界に一つしかないかもしれない首飾り。


それを証明する航海日誌と一枚の絵。


「面白くなってきたじゃねぇか」


果たしてガイオは、この宝をいくらに変えるのでしょうか。


続きが気になった方は、ブックマークや★評価で応援していただけると嬉しいです!


皆さまの応援が執筆の励みになります。


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。