第14話 もう一人の自分
第14話です。
今回は、商売が軌道に乗る中で、
新たな問題と次の一手が見えてくる回になります。
悠真らしい発想から、
少し変わった方向へ話が動き始めます。
露店の前。
人が絶えない。
「これ、もうないのか?」
「甘いやつ追加しろよ!」
次々と声が飛ぶ。
悠真は必死に手を動かしていた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
リズも横で対応している。
完全に流れができていた。
レオンが買ってから。
一気に広まった。
そして――
「……全部、売れた」
夕方。
商品は一つも残っていない。
「完売だね」
リズが言う。
「……すごいな」
売上を確認する。
「……二万マニー」
思わず声が出た。
日本円で約二十万円。
「こんなにいくんだな……」
実感が少し遅れてくる。
「このまま続ければ、かなりいけるね」
リズも頷く。
「うん……」
悠真は答えながらも、少し考えていた。
うまくいっている。
でも。
「……ずっとは無理だよな」
ぽつりと呟く。
「え?」
「地球行って、仕入れて、戻って売って」
「確かに」
「しかも、夏休み終わったら……」
その先は言わなくても分かる。
「来れなくなるね」
リズが言う。
悠真は頷く。
「……せっかく軌道乗ってきたのに」
もったいない。
正直、かなり。
「行き来も、ちょっと大変だし」
「うん」
しばらく沈黙。
そして。
「……あのさ」
悠真が言う。
「俺、もう一人いればいいのにな」
リズが少しだけ笑う。
「便利だね、それ」
「だよな……」
半分冗談。
でも、本音だった。
「そしたら、片方こっち、片方向こうで」
全部回る。
「……無理か」
悠真は苦笑する。
そのとき。
「……コピーなら」
リズが小さく言った。
「え?」
「スキルカードであるよ」
悠真が振り返る。
「コピー?」
「うん。物を増やすやつ」
「……そんなのあんの?」
「ある」
リズは頷く。
「高いものをもう一つ作るとかに使う」
便利すぎる。
「それ、人にも使える?」
悠真が聞く。
リズは少し考える。
「……普通は使わない」
「なんで?」
「意味ないから」
確かに。
普通はやらない。
でも。
「……できないってわけじゃない?」
悠真が慎重に聞く。
リズは少しだけ悩んでから答える。
「……理論的にはできると思う」
「マジか」
悠真の声が少し上がる。
「ただし」
リズが続ける。
「素材がいる」
「素材?」
「ソウルコア」
聞き慣れない言葉。
「それがないと使えない」
「……それ、買える?」
「素材屋で売ってる」
「じゃあ――」
「高いよ」
即答だった。
「今の資金じゃ厳しい」
悠真は少し黙る。
まあ、そうだろうなとは思った。
「……取りに行くしかないか」
リズが頷く。
「魔物のコアだから」
「やっぱそうか」
悠真は苦笑する。
「どんなやつ?」
リズは少し考える。
「……シャドウビースト」
「シャドウ……?」
「影みたいな魔物」
「強い?」
「強い」
即答だった。
「中級以上はある」
悠真は一瞬、言葉に詰まる。
今の自分では、普通に無理だ。
「……無理だな、これ」
正直に言う。
リズが少しだけ笑う。
「私がいる」
「……ですよね」
悠真は少しだけ頭を下げる。
「リズさん、お願いします」
完全に頼みモードだった。
リズはため息をつく。
「しょうがないなあ」
でも、その顔は少し楽しそうだった。
「ただし」
「はい」
「無茶はしない」
「はい」
「ちゃんと指示聞く」
「はい」
「危なかったら逃げる」
「……はい」
テンポよく返す。
「よし」
リズは頷いた。
「じゃあ、取りに行くか」
悠真も立ち上がる。
怖くないと言えば嘘になる。
でも。
「……これしかないよな」
夏休みが終わる前に。
やれることをやる。
「……もう一人の俺」
小さく呟く。
現実じゃありえない話。
でも、この世界なら。
少しだけ、現実になりそうだった。
第14話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、
・露店の成功(完売)
・夏休み終了という制約
・コピーという新しい可能性
を描いています。
「もう一人いれば」というシンプルな発想から、
この世界ならではの解決手段が見えてきました。
ただし、そのためには
強力な魔物「シャドウビースト」から
ソウルコアを手に入れる必要があります。
ここからは、戦闘要素も少し強くなっていきます。
次回は、ソウルコアを求めての探索へ。
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